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貸倉庫のトラブルにはどんなものがある?回避方法についても解説

貸倉庫は、土地活用の方法の中でも、比較的ローリスクで運営できる方法です。初期費用も抑えやすく、管理面でも賃貸アパート・マンションと比べて負担は少ないと言えるでしょう。

しかし、ビジネスである以上、トラブルが起きる可能性はゼロではありません。そこで、こちらの記事では、貸倉庫の運営を検討している方を対象に、貸倉庫で起きやすいトラブルとその回避方法について解説します。

目次

貸倉庫のトラブル1 〜近隣住民からのクレーム〜 

貸倉庫のトラブル1 〜近隣住民からのクレーム〜

1つ目は近隣住民からのクレームです。

利用者側はルールを守って正しく利用しているつもりでも、近隣住民とのトラブルが起こる可能性はあります。

騒音や異臭などのリスクを考えておく

トラブルにつながりやすいのは、騒音や異臭などです。近所に一般住宅がある場合は、とくに配慮する必要があります。

例えば、早朝に貨物を運んでくるトラックのエンジン音で、連日近隣住民の睡眠を阻害してしまうようなことがあれば、クレームが発生してしまうかもしれません。

あるいは、塗装業者が塗料の保管場所として倉庫を利用していた場合、倉庫周辺に漂うシンナー臭で近隣住民に健康被害を及ぼすなどの可能性があることを覚えておきましょう。近隣住民に事前に知らせておくと安心です。

契約書で責任の所在を明確にしておく

騒音や異臭などのトラブルを未然に防ぐには、まずは倉庫の利用規則や禁止事項を利用者に周知しておく必要があります。

違反が発覚した時のために、違反時の対処法などを契約書に記載しておくといいでしょう。また、わずかでも騒音や異臭が起こる可能性を感じたのなら、念のため、事前に近隣住民への丁寧な説明をしておきましょう。そして、最も重要なのは、トラブルが起きてしまった時の責任の所在を明確にしておくことです。

近隣住民からクレームを受けた時、また、住民に何かしらの被害を与えた際に、貸主と借主のどちらが責任を取るのか、役割分担をしておく必要があります。別途そういった内容をまとめた資料を、契約書に添付しておきましょう。

貸倉庫のトラブル2 〜倉庫の立ち退きを拒否される〜 

貸倉庫のトラブル2 〜倉庫の立ち退きを拒否される〜

貸倉庫の経営において、貸主はまれに借主に対し、契約解除を求めることがあります。

たとえば、建物が老朽化していて取り壊しが必要だったり、借主が契約違反をしていたりなど、正当事由があるときに限り、契約解除および立ち退きを請求できるのです。

なお、貸主側の都合で立ち退きを請求する場合は、契約期間が満了する1年前から6ヶ月前までに勧告をする必要があります。

しかし、仮に正当事由による要求だったとしても、借主側が必ずしも立ち退きに応じてくれるとは限りません。

以下、立ち退きを拒否された場合の交渉方法について解説します。

立ち退きを拒否された時の交渉方法

立ち退きを拒否される要因はいくつか考えられます。

1つ目は、借主が立ち退きの理由に納得していないことです。貸主側に正当事由があるならば、理解してもらえるまで根気強く説明し続ける必要があるでしょう。

2つ目は、現実的に引っ越し先を探す余裕がない、もしくはあてがないということです。

立ち退きの理由には納得していても、すぐには難しいというパターンになります。

この場合は、引っ越し先を探す手伝いをしたり、引っ越し費用の一部を負担したりなど、できる限りのフォローを検討しましょう。

3つ目は、暗に立ち退き料を要求しているという可能性です。立ち退きにおいて、立ち退き料は必須ではありませんが、基本的には貸主都合で立ち退きを要求するときは支払う慣習があります。

借主側が「立ち退き料」を請求している、あるいはすでに提示している立ち退き料の増額を希望している場合は、さらなる交渉が必要です。

強制執行をするには?

立ち退き料の交渉をしても、借主側が応じてくれないときは、法廷で争うことになるでしょう。

基本的には、和解するか勝訴すれば解決しますが、それでもなお立ち退きを拒否し続ける場合は「強制執行」の実行が可能です。

強制執行とは、判決書や和解調書をもとに、裁判所が判決内容を強制的に実行するというものです。執行官と呼ばれる裁判所の職員によっておこなわれます。

具体的には、執行官が建物の中に入り、荷物を搬出し、鍵交換によって借主が建物に入れないようにするのです。なお、強制執行は、管轄の裁判所に対して強制執行申立書を申請することで発動されます。

貸倉庫のトラブル3 〜原状回復を巡る衝突〜  

貸倉庫のトラブル3 〜原状回復を巡る衝突〜

原状回復とは、「退去時に、借主は契約当時の状態で部屋や建物を返還する」という決まりです。

原状回復が不十分であれば、追加で清掃費や修繕費が発生するため、それらの費用をどちらが負担するかという議論に発展する可能性があります。

そういったトラブルを防ぐには、以下の2点を押さえておきましょう。

原状回復のポイントを把握しておく 

原状回復の際、争点になりやすいのが「損耗」です。

国土交通省が定めているガイドラインによると、損耗には次の3種類があります。

・経年劣化による損耗
時間の経過とともに、自然に劣化してできた傷や汚れ。

・通常損耗
借主がルールを守って正しく利用していても、避けられない類の傷・汚れ。

・故意、過失による損耗
借主がルールを守らずに利用して(あるいは不注意により)、与えてしまった傷や汚れ。

問題は、これら3つの区別が容易ではないということです。

たとえば、貸主側が「原状回復が不十分だ」と主張しても、借主側は「これは通常損耗であり、修繕の義務はない」と主張するケースも考えられます。

こうした意見の衝突やトラブルを防ぐため、国土交通省は2011年に『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』を策定しました(※1)。

ガイドラインの中では、床や壁、天井など、各部位ごとに、どういった傷・汚れであればどの損耗に該当するのかなど、かなり細かく定義されています。

ガイドラインを見れば、原状回復のポイントをひと通り理解できるはずですので、貸倉庫の運営を考えているのなら、ぜひ一度目を通してみてください。

(※1):『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf

契約書に原状回復に関する資料を添付する

原状回復に関するトラブルを防ぐためには、両者の合意のもと、原状回復に関する条件を定めた資料を作り、契約書に添付しておきましょう。資料作成用のサンプルも、先述のガイドラインの中で確認できます。

具体的には、

  • どのような修繕費用をどのように分担するのか
  • 各部位ごとに、回復工事でかかる単価目安はいくらか
  • 壁や床などの部位ごとに、どこまで経過年数を考慮するのかなど

費用の負担配分、各部位ごとの工事の適用基準、予算などを事前に決めておくのです。

さらに、契約時の倉庫内の様子を撮影しておくのも忘れないようにしましょう。原状を記録として残しておけば、退去時に変化の度合いを比較しやすくなります。

いずれにせよ、原状回復時の修繕の負担が大きくならないよう、倉庫の耐用年数をきちんと把握し、定期的なメンテナンスやチェックをすることが肝要です。

倉庫の耐用年数について詳しく知りたい方は、「工場・倉庫の気になる耐用年数は?メンテナンスについても紹介」をご参照ください。

貸倉庫のトラブル4 〜用途変更に関するトラブル〜

貸倉庫のトラブル4 〜用途変更に関するトラブル〜

建物が本来目的としている用途から別の用途に変更する際、一定条件を満たす場合に限り、変更の確認申請をする必要があります。

建築前に建物の建築計画を確認し、建築基準法や都市計画法に対する違反がないかを、各自治体の建築主事(建築確認系の担当者)がチェックするのです。

倉庫の場合も同様で、確認申請の必要があるのにそれを怠った場合、建築基準法第99条により、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科せられます。

そのような用途変更に伴うトラブルを回避するため、こちらでは確認申請が必要となる条件や確認申請の流れについて解説していきます。

用途変更の確認申請が必要となる条件

以下の条件を満たす場合、用途変更の確認申請が必要となります。

<用途変更の確認申請が必要な条件>

  • 建物の用途を「特殊建築物」に変える場合
  • 床面積が合計200㎡を超える場合

特殊建築物とは、以下のような建物を指します。

  • 学校および学校施設の体育館
  • スポーツ施設(ボーリング場、スケート場、水泳場など)
  • 美術館、博物館、図書館
  • 集会場、公会堂
  • 映画館、劇場、演芸場
  • ホテルや旅館などの宿泊施設
  • 病院、診療所
  • 児童福祉施設
  • 百貨店、マーケット、物販店舗
  • 飲食店
  • カフェ、バー、キャバレー、遊技場、クラブ
  • 公衆浴場
  • サービス付き高齢者向け住宅、共同住宅など

上記のような建物に倉庫の用途を変更する場合、確認申請が必要です。

なお、オフィスや住宅は特殊建築物に該当しないため、用途変更の確認申請は原則として必要ありません。

用途変更の確認申請の流れ

確認申請の大まかな流れとしては以下のようになります。

1:書類の準備
確認を求められる主な資料は以下です。

・確認済証
建物が建築される前に、建築計画が法令を遵守しているかを確認したことを証明するもの。

・検査済証
建築確認、中間検査、完了検査という3つの検査をし、建物が建築基準法に適していることが承認された際に発行される書類。

・消防適合証明書
消防法令に適合していることを示す書類。

・既存の建物の図面
竣工図や構造計算書などの書類。検査上の提出書類と、既存図面との間に齟齬がないかを確認するために必要。

これらの書類を準備して、申請を進めていきます。

2:関連する法令を確認
次に、関連する法令の確認をしましょう。まずは、既存の倉庫が現行の法令に適しているかどうかの確認です。建設当時の法令が変更されていないかをチェックしましょう。

また、用途変更する特殊建築物の種類も確認します。種類や規模によっては、都市計画法による規制で、用途変更自体が禁止されている場合があるからです。

建築基準法や都市計画法は、不定期で改正されることがあるため、最新の情報を確認するようにしましょう。

3:設計図面・確認申請書の作成
確認申請図面と確認申請書を作成し、申請機関に提出します。他にも許認可が必要であれば、申請書を作成して提出しましょう。

4:工事・完了検査
確認済証を取得すれば、工事を開始できます。工事が完了したら、完了届を申請機関に提出してください。用途変更の内容次第では、消防署や保健所などの検査も必要です。

以上が、用途変更に伴う確認申請の流れとなります。

こうした事務的な手続きは、一般的に業者に一任することが多く、馴染みが薄いかもしれません。しかし、だからこそオーナー自身が最低限の知識を身につけておくことで、想定外のトラブルを回避しやすくなるでしょう。

まとめ

貸倉庫に限らず、土地活用においてトラブルをゼロにすることは難しいかもしれません。

しかし、ここまで紹介してきたように、貸倉庫経営において想定できるトラブルはそう多くないと言えます。

契約の時点で、トラブルが起きた際の責任の所在や役割分担を明確にしておけば、事態の悪化を防げるでしょう。用途変更に関しても、あらかじめ関連する法令や手順を押さえておけば、誤って法律違反になるような事態も防げるはずです。

ちなみに、今回はオーナー自身が貸倉庫の経営をする場合を想定して、トラブルの事例を紹介しました。他にも貸倉庫の経営方法には、土地ごと企業に貸し出すサブリース形式や、集客や管理に有利なフランチャイズ形式などの方法もあります。

どういった方法で経営するかによって、トラブルやリスクは変わってきますので、ぜひ自分に合った経営方法を検討してみてください。

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