こちらの記事では、
- ロードサイドの土地を活用して店舗経営をするとどれくらいの利益が出るのか?
- ロードサイド店舗の利回りを上げる方法
などについて解説します。
ロードサイドの店舗経営とは
まず、ロードサイドの店舗経営にはどのようなスタイルがあるのか紹介します。
事業用定期借地
事業用定期借地とは、事業の用途であることを条件に、企業に対して土地のみを貸し出して地代を得る方法です。建物の建設費用を負担するのは借主である企業なので、原則として貸主側は金銭的な負担をする必要がありません。
また、事業用定期借地は契約期間が長いことも特徴で、「10年以上30年未満」か「30年以上50年未満」で契約を結びます。例えば、ロードサイドにある家電量販店やショッピングセンターなどの大型店舗は、事業用定期借地であることが多いです。
契約期間が終了したら更地の状態で貸主に返還されるので、借主側が事業破綻を起こさない限り、貸主側が解体費用を負担する可能性はありません。このように、事業用定期借地はローリスクで長期的な収益を得やすい数少ない活用方法と言えるでしょう。
リースバック
リースバックは、地主が建物を建てて、土地と建物を一括して企業に貸し出す方法になります。ただし、内装や営業用の設備に関しては、借り手であるテナント側が負担するのが一般的です。
リースバックを活用する際に多く見られるのが、「建設協力金」を用いて建物を建てる方法です。建設協力金とは、借り手である事業者が建築費に相当する資金を地主に対して、無利子で貸し付けるものになります。コンビニがテナントに入る場合によく用いられる傾向があります。
ロードサイド店舗の利回り
こちらでは、ロードサイドの店舗経営によってどの程度の利回りが出るのかを解説します。
ロードサイド店舗の利回り計算方法
店舗経営の利回り計算方法には、
- 表面利回り
- 実質利回り
- キャッシュフロー利回り
の3つの種類があります。それぞれ紹介します。
・表面利回り
表面利回りとは、投資した金額に対していくらの割合で年間の収益が出ているのかを表したものです。以下の計算式で求められます。
表面利回り = 年間の収益 ÷ 投資金額
投資金額は、建物の建設費用を地主とテナントのどちらが負担するかによって変わります。具体的には、
- 建物の建設費用をテナント側が負担する場合は「投資金額=土地の取得費用」
- 建物の建設費用を地主側が負担する場合は「投資金額=土地の取得費用+建物の建設費用」
です。
表面利回りは大まかな利回りを把握できる点では便利ですが、支出が考慮されていない点で、正確性に欠けるところがあります。
【表面利回りの具体例】
- ロードサイドの店舗
- 年間の収益:企業からの地代が年間500万円
- 土地は5000万円で取得したもの
- 建物の建設費用は1億円(テナント側が負担)
表面利回り = 年間の収益 ÷ 投資金額 であるため、
= 500万円 ÷ 5000万円
= 10% となります。
・実質利回り
実質利回りとは、年間で発生する支出を考慮した上で算出した利回りです。以下の計算式で求められます。
実質利回り= (年間の収益ー年間の支出) ÷ 投資金額
表面利回りよりも実態に近い利回りを計算できます。なお、実質利回りを計算する際に「支出」としてカウントする主な項目は以下の通りです。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 保険料(建物の火災保険など)
- 管理費用(管理会社への委託料など)
- 軽微の修繕費用
注意点として、借入金の返済額や減価償却費用、大規模な修繕費用などは支出に含みません。あくまでも実質利回りが、物件の収益力を数値化することを目的としているためです。
【実質利回りの具体例】
- ロードサイドの店舗
- 年間の収益:企業からの地代が年間500万円
- 土地は5000万円で取得したもの
- 建物の建設費用は1億円(テナント側が負担)
- 年間の支出:90万円
実質利回り= (年間の収益ー年間の支出) ÷ 投資金額 であるため、
= (500万円ー90万円) ÷ 5000万円
= 8.2% となります。
・キャッシュフロー利回り
キャッシュフロー利回りとは、借入金の返済額や減価償却費用、大規模な修繕費用などを考慮した上で算出した利回りです。以下の計算式で求められます。
キャッシュフロー利回り = (年間の収益ー年間の支出ーその他の支出)÷ 投資金額
キャッシュフロー利回りの計算に厳密な決まりはありません。そのため、「その他の支出」には借入金の返済額や減価償却費用の他、大規模な修繕費用や税金など、さまざまな支出が該当します。「実質利回り」よりもさらに実態に近い利回りがわかる指標と言えるでしょう。
その他の支出としてカウントされやすい主な項目は以下の通りです。
- 借入金の返済額
- 建物の減価償却費用(地主側で負担した場合)
- 大規模な修繕費用
- 各種税金 の支払い
【キャッシュフロー利回りの具体例】
- ロードサイドの店舗
- 年間の収益:企業からの地代が年間500万円
- 土地は5000万円で取得したもの
- 建物の建設費用は1億円(テナント側が負担)
- 年間の支出:90万円
- その他の支出:100万円
キャッシュフロー利回り= (年間の収益ー年間の支出) ÷ 投資金額 であるため、
= (500万円ー90万円ー100万円 ) ÷ 5000万円
= 310万円 ÷ 5000万円
= 6.2% となります。
利回りは売却時の買取価格に大きく影響する
一般的に土地を売却する際に買取価格の基準となるのは、公示地価、実勢価格、路線価、固定資産税評価額などです。これらを基準にすると「都心部の土地が高く、地方の土地が安い」など、エリアごとに大まかな傾向があります。
しかし、ロードサイドの土地の場合は買取価格の基準が少々異なります。「その土地を活用すれば、どれくらいの利回りが出るのか?」が、買取価格を決める際の重要な基準となるのです。
具体的には、
- 交通量はどの程度か
- 視認性は高いか
- 道路から敷地内への導線はスムーズか
- 駐車場を確保するスペースはあるか
- 認知度の高いテナントが周囲にあるか
- 人口動態に問題はないか
- テナントから年間いくらの賃料または地代を得られるか
などです。
買主側はこれらの情報を調査し、実質利回りやキャッシュフロー利回りのシミュレーションをおこないます。そして「買取額に対して年間何%の利回りが出るのか?」から逆算して、買取価格を決めます。
最終的にロードサイドの土地の売却を検討している方は、覚えておくといいでしょう。
ロードサイド店舗の利回りを上げる方法
こちらでは、ロードサイドの店舗経営で利回りを上げる方法を解説します。
少しでも安く土地を取得する
先述のように、利回りは「収益」「支出」「投資金額」を用いて算出されます。
収益や支出は工夫次第で増減させられる可能性がありますが、投資金額は取得時から固定のままです。そのため、土地や建物を少しでも安く取得することが、利回りを上げるために最適なやり方と言えるでしょう。
では土地を取得する金額次第で、利回りにどれほどの影響がでるのか、表面利回りを用いて解説します。
【ロードサイドの店舗A】
- 年間の収益:企業からの地代が年間960万円
- 土地の取得費用は1億円
- 建物の建設費用は事業者が負担
表面利回り = 年間の収益 ÷ 投資金額 であるため、
= 960万円 ÷ 1億円
= 9.6%
【ロードサイドの店舗B】
- 年間の収益:企業からの地代が年間960万円
- 土地の取得費用は1億1500万円
- 建物の建設費用は事業者が負担
表面利回り = 年間の収益 ÷ 投資金額 であるため、
= 960万円 ÷ 1億1500万円
= 8.3%
このように、土地の取得費用が1億円か1億1500万円かの違いで、表面利回りが1.3%も変わります。また、「投資金額の回収期間=100 ÷ 利回り(%)」であるため、店舗Aの回収期間は約10年5ヶ月、店舗Bは約12年と、1年半以上の差が出ます。
融資の金利交渉をする
ロードサイド店舗経営で利回りを上げる2つ目の方法が「金利交渉」です。つまり、建物を建てる際に金融機関から受ける融資の金利をどれだけ下げられるかによって、キャッシュフローが大きく変わります。
例えば、1億円の建物を建てるために金利3%で融資を受け、20年間返済をするとしましょう。この場合、毎月の返済額は約55万円です(元利均等返済の場合)。
一方で、金利が2%の場合の毎月の返済額は約50万円であるため、毎月の支払い額に約5万円の差が生まれます。金利が3%から2%に下がるだけで、年間約60万円もの削減につながります。
さらに、利息の総額を比較すると、
- 3%の時が3310万3280円
- 2%の時が2141万1920円
であるため、金利が1%下がるだけで合計1169万1360円の削減につながるのです。融資の際に金利を下げておくことが、その後のキャッシュフローにどれほどの影響を与えるのかがわかるでしょう。
そもそも金利は、金融機関によってかなり差があります。それは、金利が複数の指標に基づいて決められるものだからです。具体的には銀行の経営状態、預金金利、借入を希望する個人や企業の信用度などが指標となります。
だからこそ、融資の相談はメガバンクや地方銀行、信用金庫など、複数の金融機関に持ちかけるのが定石です。その上で金利の引き下げ交渉をおこないましょう。
交渉の際に鍵となるのが、「他の金融機関の金利情報」です。
「◯◯銀行から△%で融資してもいいと話をもらっているのですが、できれば昔からお世話になっている御社で融資を受けたいです。なので、できれば金利交渉をさせていただきたいです」といった交渉がしやすくなります。
融資の金利次第で、ロードサイド店舗経営の利回りは大きく変わります。根気強く交渉をし、0.1%でも金利を下げる努力をしたいところです。
テナントと賃料交渉をする
どのような業種・業態のテナントさんと契約できるかも、利回りを上げる上で重要なポイントです。なぜなら、店舗に入居するテナントさんが支払う賃料は、業種や業態によって賃料設定の相場が異なるからです。
例えば、コンビニは安定して高い収益を上げやすいビジネスモデルであるため、比較的賃料設定が高い傾向にあります。他にも、地域密着型のサービスを展開する企業は、立地が事業の要であるため賃料が高くなりがちです。
利回りを重視するのであれば、このように賃料設定が高い業種や業態に絞りましょう。その上で、賃料交渉をします。テナントからの賃料は地主の収益に直結しますから、妥協せずに1万円でも高い賃料を提案しましょう。
ロードサイド店舗を経営するまでの流れ
続いて、ロードサイド店舗を経営するまでの流れを解説します。
テナント募集
ロードサイドの土地は立地が良いため、さまざまなテナントと相性が合います。例えば、以下のようなテナントから声がかかる可能性があるでしょう。
- コンビニエンスストア
- ドラッグストア
- ホームセンター
- ファミリーレストラン
- ファーストフード店
- ドライブスルー
- 複合商業施設
- 家電量販店
利回りを重視するのであれば、これらの中から賃料設定を高くしやすい業種・業態を選びましょう。先述の通り、弊社が過去に契約してきたテナントさんの中では、コンビニが比較的高い賃料となる傾向があります。
出店申込書を承認する
土地を利用したい企業が、仲介業者を通して『出店申込書』を提出します。なお、出店申込書は賃貸借契約書ではないので、法的な拘束力はありません。
申込書の内容を確認し、業種や業態、条件面で問題がなければ承認をしましょう。複数の仲介業者に営業活動を依頼している場合、申込書の承認をもって一斉に活動を停止できます。
契約を結ぶ
申込書を承認したら、仲介業者の立ち会いのもと、テナント企業と契約を結びましょう。土地だけを貸す場合は「事業用定期借地契約」を、土地と建物を合わせて貸す場合は「事業用店舗建物賃貸借契約書」を結びます。
なお、契約書を作成する際は「地代の増減」について記載するのを忘れないようにしましょう。借地借家法では、地価の上下や税金の増減があったり、類似するほかの土地と比べて地代が不相応であったりする場合、地主は借主に対して地代の増減を請求できるとされています(※1)。
ただし、一方的な変更はできないため、借主側が承認しない場合は話し合いで地代を決める必要があります。話し合いでまとまらなければ、調停に発展するケースもあるので注意して下さい。
そのような事態にならないように、契約書には地代が増減する可能性を記載の上、テナントさんに事前に説明をしておきましょう。
テナントによる行政への申請作業
契約を締結したら、テナントと共に開発指導要綱協議や建築確認事前協議をおこないます。
それらの協議で決まった内容を基に必要な書類を作成し、建物や工事に関わる申請作業をおこなってもらいましょう。
建物の建築には複数の法律や条例が関わってくるため、行政に申請をして承諾を得ないと建物を建てられないためです。
隣地所有者への事前説明・交渉
工事に入る前に、隣地所有者への事前説明や交渉が必要です。対象者が多い場合は、説明会を開催します。どのような目的でどのような建物を建てるのか、どのような工事をするのかを丁寧に説明しましょう。
なお、隣地所有者にスムーズに承諾してもらえるか否かで、全体のスケジュールに影響がでることもあります。
例えば、
- 新たに建てる建物の影響で隣地の建物への日当たりが悪くなる
- 隣地に立っている木の枝が伸びて自分の土地に侵入しているため、切ってもらう必要がある
- 隣地との境目にあるブロックフェンスを新たに作り直す必要がある
などです。必ずしもスムーズに承諾をもらえるとは限らないため、余裕を持ってスケジュールを組んでおきましょう。
事前調査・工事の開始
行政への申請や隣地所有者への説明が完了したとしても、すぐに建物の建築工事を始められるわけではありません。
まずは敷地の境界確認や測量、周辺道路の確認などをおこない、必要に応じて地盤調査をおこないます。これらの事前調査によって適切な工事の手法や排水計画などを決める必要があるためです。
特に傾斜地は地盤の強度が一定ではないことが多いため、事前の調査がかなり重要になります。調査が終われば、建物の設計作業に入ります。設計士がいる工務店や設計事務所に依頼して、設計計画を立ててもらいましょう。計画が固まったら、いよいよ工事が始まります。
なお、契約内容次第では着工のタイミングで地代を請求することもあります。弊社の場合は、工事中は正規の地代の半額、店舗のオープン以降は正規の地代を請求することが多いです。
引き渡し・店舗オープン
竣工検査が終わり、問題がなければ建物の引き渡しがおこなわれます。引き渡しから店舗オープンまでの期間はテナントによってバラバラです。弊社の場合は、最初に問い合わせをいただいた時期からオープンまでに1年弱の期間を要することが多いです。
一般的には、すべての工程が完了するまでに最短で6ヶ月程度はかかると思っておくといいでしょう。ただし、コンビニのような建物は構造が複雑ではないため、3ヶ月程度でオープンに至ることもあります。
参考までに、弊社がロードサイドで店舗を建てる際に用いている工程表を公開します。
ロードサイドの店舗経営をする上での注意点
ロードサイドの店舗経営は、比較的ローリスクでかつ高い利回りを実現しやすい活用方法です。しかし、高い利回りを実現するために不可欠である賃料は、借主であるテナントの事業が成功してこそ成立します。
店舗の経営が立ち行かなければ、中途解約や撤退をする可能性は当然あります。万が一そのような事態になった時にダメージを最小限に抑えるためには、契約時に「解約に関する取り決め」をしておくことが肝要です。
例えば、「解約時には建物の解体費用及び土地の原状回復費用を借主側が負担する」、「中途解約をする場合は違約金が発生する」などの取り決めです。
ロードサイドがどれだけ店舗経営に有利な土地であるとはいえ、長期的に事業がうまくいく保証はありません。契約内容を吟味するのはもちろん、テナント選びはくれぐれも慎重におこないましょう。
ロードサイド物件に関するご相談はトチカツプロへ
ロードサイドの土地は、店舗経営をしたい企業にとって非常に魅力的な土地です。集客力のあるテナントさんと契約できれば、長期的に安定した地代を得られる可能性があるでしょう。
一方で、魅力的な土地だからこそ、ロードサイドの土地は相場よりも高い価格帯で取引されやすいものです。適正価格はあってないようなものなので、売主側に正しい判断基準がなければ、安く買い叩かれてしまう可能性があります。
その点、弊社は全国で100軒以上のロードサイド物件を買取・活用をおこなってきた、いわばロードサイド買取のプロです。もしも所有しているロードサイドの土地の売却を検討されている場合は、ぜひ近畿住宅流通にご相談下さい。