「相続はめんどくさい」と言われるのはなぜなのか、理由を解説します。また、相続手続きの流れや、手続きをしない5つのデメリットも紹介するので、相続の予定がある方は参考にしてください。
相続がめんどくさい理由
相続がめんどくさいと言われる主な理由は以下の3つです。
- 相続財産を把握できていないから
- 不動産の扱いが難しいから
- 相続税を払うお金がないから
以上の3つについて順番に解説します。
相続財産を把握できていないから
相続の準備を何もしていなかった場合、相続財産を正確に把握するのはかなり難しいです。たとえば、銀行口座の残高を確認するだけでも一苦労することがあります。親の死亡後に親の銀行口座の残高を確認するには、親の生涯にわたるすべての戸籍謄本を金融機関に提出する必要があります。
もしも親がさまざまな場所を転々として暮らしていた場合、戸籍を調査するだけでもかなりの労力が必要でしょう。しかも、苦労して口座の残高を確認したのに、雀の涙ほどの金額だったなんてオチも珍しくありません。
このような事態を避けるには、遺言書の作成やエンディングノートの活用が効果的です。遺言書を作成しておけば、財産の一覧を明確にし、相続方法を事前に指定できます。また、エンディングノートを用いて、どのような財産がどこにあるのかを記録しておくことも有効です。
不動産の扱いが難しいから
相続財産には預貯金や株式、債券、美術品など、さまざまなものがありますが、中でもめんどくさいと言われるのが「不動産」です。不動産の相続がめんどくさいと言われる主な理由は、不動産が極めて分割しにくい財産だからです。複数人による相続をする場合、誰がどのように不動産を相続するかで、対立する可能性があります。
そのような状況を避けるためには、被相続人に遺産分割協議書を作成しておいてもらうのがオススメです。協議書には、誰がどの財産を受け取るか、という合意内容が明記されており、法的な効力を持っています。
相続税を払うお金がないから
ただでさえめんどくさいと思われがちな相続ですが、さらに面倒なのは「支払い能力がなかった場合」です。実際、相続税を納税する際に資金不足に直面することは珍しくありません。
ただし、一定の条件を満たしている場合、相続税の納税期限の延長が可能です。条件は以下の通りです。
- 納税額が10万円を超えていること
- 金銭的な理由で納税が困難であること
- 延納税額および利子税に相当する担保を提供できること(ただし、延納税額が100万円以下で、期間が3年以下の場合は担保提供の必要はない)
- 納付期限までに、延納申請書と担保提供関連書類を税務署長に提出すること
なお、相続税の納税資金を用意するためには、生命保険を利用する方法が有効です。死亡保険金は遺産分割の対象外であり、受取人が指定されているため、比較的迅速に資金を確保できます。さらに、保険金は法定相続人一人あたり500万円までが課税対象額から控除されるため、節税効果も期待できます。
また、収益不動産などの資産を生前に贈与し、その収益を納税資金に充てるという方法も有効です。
相続手続きの流れ
相続をスムーズにおこなうためには、手続きの流れを押さえておく必要があります。各手続きには期限があるので、以下を参考にしてください。
相続開始日から7日以内におこなう手続き
- 死亡診断書の受領(病院など)
- 死亡届と火葬許可申請書の提出(役所)
相続開始日から14日以内におこなう手続き
- 国民健康保険や介護保険の資格喪失手続き(役所)
- 世帯主変更届の提出(役所)
- 年金受給停止の手続き(年金事務所)
- 公共料金や各種サービスの名義変更・解約(各サービス提供会社)
- 金融機関における預貯金口座の手続き(各金融機関)
相続開始日から3ヶ月以内におこなう手続き
- 遺言書の有無の確認及び検認(自宅/法務局/公証役場)
- 相続人の特定と戸籍収集(役所)
- 相続財産の調査(自宅/金融機関など)
- 相続放棄または限定承認の申述(家庭裁判所)
- 生命保険金の請求(各保険会社)
相続開始日から4ヶ月以内におこなう手続き
被相続人の所得税の準確定申告(税務署)
相続開始日から10ヶ月以内におこなう手続き
- 遺産分割協議書の作成遺品の整理名義変更手続き(金融機関/法務局など)
- 相続税の申告(税務署)
相続開始日から1年以内におこなう手続き
- 遺族年金請求書の提出(年金事務所など)
- 未支給年金請求書の提出(年金事務所など)
- 高額医療費の請求申請(役所/健康保険組合など)
- 葬祭費、埋葬料の支給請求(役所/健康保険組合など)
以上が相続手続きの流れとなります。ただし、被相続人の財産の種類や総額によって必要な手続きは異なるため、あくまで一般的な目安として参考にしてください。
相続の手続きをしない5つのデメリット
「相続の手続きはめんどくさい」という理由で、手続きをせずに放置する人がいます。しかし、相続登記は2024年4月1日から義務化されるので、原則として手続きは必須です。手続きをしないとさまざまな機会損失やリスクがあるので、順番に紹介します。
⑴相続を放棄できなくなる
相続の手続きをしないことで、相続を放棄する機会を失う可能性があります。相続には、基本的に「単純承認」、「相続放棄」、「限定承認」の3つの選択肢が存在し、後者の2つは一定の期限内でなければ実現できなくなるのです。3つの選択肢について、以下で詳しく解説します。
単純承認
単純承認とは、被相続人の遺した財産すべてを、資産も負債も含めて受け継ぐことを意味します。相続人が特に行動を起こさずに3ヶ月が過ぎた場合、自動的にこの選択をしたとみなされます。
相続放棄
相続放棄は、遺産のすべて(資産も負債も)を受け継がない選択を意味します。借金などの負債が資産を上回る場合、この選択をする人が多いです。相続放棄は、相続人が家庭裁判所へ申立てることで可能となります。原則として、相続を知った日から3ヶ月以内に申し立てをしなければ、相続放棄はできません。
限定承認
限定承認とは、相続人が受け継ぐ資産の範囲内でのみ負債に対する責任を負うことです。資産と負債のバランスが不明確な場合に利用され、資産から負債を差し引いた残余があれば相続人に渡り、逆の場合は負債の返済義務は生じません。限定承認に関しても、相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。
⑵相続回復請求をできなくなる
相続回復請求とは、法定相続人が法定相続人以外の相続人によって、相続する権利を侵害された場合に、その権利の返還や回復をすることです。対象者である相続人に直接請求する方法と、裁判所に申し立てる方法の2つがあります。
請求が認められる可能性が高いのは後者ですので、裁判所に申し立てるのが一般的です。ただし、相続回復請求権には以下の期限があるので注意が必要です。
- 相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知ったときから5年以内
- もしくは相続の開始があったときから20年以内
上記の期限を過ぎた場合、相続回復請求はできなくなります。
⑶遺留分侵害額の請求ができなくなる
相続手続きを怠ると、遺留分侵害額を請求する権利を失います。遺留分とは、法定相続人が最低限受け取るべき遺産の割合のことで、遺言で遺留分が侵害された場合、権利者は侵害された遺留分の回復請求が可能です。
たとえば、遺言で特定の相続人に全財産が遺されていた場合でも、他の法定相続人は遺留分侵害額の請求を通じて、遺留分に相当する金額の支払いを求めることができます。なお、この請求には期限が設けられており、「遺留分侵害を知った時から1年以内」、もしくは「相続開始から10年以内」におこなわなければなりません。
⑷権利関係が複雑化する可能性がある
相続登記を怠ると、権利関係が複雑になり、将来的なトラブルの原因となる可能性があります。たとえば、相続人が複数いて、相続人間で売却の合意が得られない場合などです。誰が売却をするのか、どのように利益を分配するのかなど、権利行使に関して争いが生じる可能性があります。
また、数世代にわたって相続登記を怠っていた場合も注意が必要です。たとえば、祖父の代から相続登記がおこなわれておらず、子や孫の代まで相続が進んでいる場合、正確な所有者を特定するためには、過去のすべての相続関係を遡って確認する必要があるからです。
⑸罰せられるリスクがある
2024年4月1日より、相続に伴う不動産の登記手続きが義務化されます。3年以内に登記手続きをおこなわなければ、最大10万円の過料(罰金)が科される可能性があります。なお、この義務化は過去に遡って発生した相続についても適用されるため、すでに発生している相続においても、相続登記が未完了であれば、速やかに手続きを進める必要があります。
不動産は売却すれば相続しやすくなる
不動産の相続が「めんどくさい」と言われる一因として、その複雑さがあげられます。特に不動産は分割が難しく、権利をめぐって相続人間で意見が対立することも多いです。
さらに、不動産の価値が高額である場合、相続税の支払いが困難になることもあります。その点、事前に不動産を売却し現金化しておけば、相続時にこれらの問題を回避できる可能性があるでしょう。不動産が相続財産の大部分を占める、または不動産の価値が極めて高い場合には、先手を打って売却を検討することをオススメします。
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