傾斜地でも有効に活用できる?斜面の土地を活用するには

傾斜地でも有効に活用できる?斜面の土地を活用するには

「傾斜地を所有しているけど、どのように活用したら良いか分からない」
「自分が所有している傾斜地でも土地活用はできるのか」
「所有している土地が傾斜地なのか知りたい」

傾斜地の土地を所有されている方や相続で傾斜地を譲り受けた方はこのような悩みがあるのではないでしょうか。
今回は傾斜地の土地を所有されていて土地活用を悩んでいる方に傾斜地の定義から傾斜地の問題点、傾斜地の活用方法までわかりやすく解説します。

目次

傾斜地とは?傾斜地の定義

傾斜地とはどのような土地を表すのでしょうか。

傾斜地を表す際には、「斜面」「崖」「法面(のりめん)」「法地(のりち)」「勾配(こうばい)」などの言葉が使用されます。

建物を建てるのが困難な土地の中には「傾斜地」「法地」「崖地」など様々な用語が使われますが、建築基準法では「がけ」という用語のみが使用されています。

それぞれの傾斜地を表す言葉の定義について解説します。

斜面

斜面(しゃめん)とは、水平面に対して傾斜している面のことで、不動産では斜面に沿って建てられている建物を斜面住宅といいます。

斜面の傾きを示す度合いとして勾配(こうばい)という言葉が使われ、斜面の傾斜が緩い場合には「勾配がゆるい」、斜面の傾斜が急な場合には「勾配がきつい」などといいます。

傾斜地

傾斜地とは土地が傾いて斜めに傾いている土地でそのままの状態で建物を建てることは困難な土地です。

傾斜地の厳密な定義はなく斜めに傾いている土地を一般的に傾斜地と呼びます。

建築基準法によるがけの定義

  • 高さが2〜3メートルを超える傾斜地、斜面
  • 傾斜が30度以上

傾斜や勾配が急で一般的には傾斜の角度が30度以上の土地を崖と定義します。建築基準法では「がけ」という用語が主に使用されますが、厳密な定義はありません。傾斜地よりも勾配が急な土地を一般的には崖、がけ地と定義します。

各都道府県によって「がけ条例」が規制されており、敷地ががけに面していて一定の高さを超えるがけの近くに建物を建てる場合に様々な制限が課されます。

「がけ条例」の厳密な内容については各都道府県や市町村によって異なりますので、建物を建てる際には行政への確認が必要になってきます。

参考:大阪府吹田市建築基準法施工細則

法地(のりち)/法面(のりめん)

法地(のりち)や法面(のりめん)は傾斜地で宅地(建物を建てられる面積)として使用できない部分です。土地の傾斜部分を切土(きりど)や盛土(もりど)によって人工的に作られた斜面を法地や法面といいます。

・切土(きりど)
傾斜のある土地を建物などが建てられるように地面を削り取り地盤面を低くすること。

・盛度(もりど)
傾斜のある土地を建物などが建てられるように土を盛って地盤面を高くすること。

傾斜地の問題点を紹介!利点はあるの?

では傾斜地を活用・売却をする際にはどのような問題点があるのでしょうか。

基本的に傾斜地では、そもそも建物の建築ができない場合や、建物を建てるのに地盤改良や擁壁などで高額な費用がかかる場合が多いです。そのため、多くの不動産会社や建築会社では買取や建築を断っていることもあります。

しかし傾斜地にも利点はあり、平坦な土地に比べ土地を安く購入できることが多い点や、日光や眺望を遮るモノが少ない土地が多いため、日当たりが良い、眺望が良いなどの利点もあります。

傾斜地の問題点と利点

問題点 利点
がけ条例や急傾斜地崩壊危険区域などの制限がある 土地の価格が安い
土地によって擁壁や造成工事に高額な費用がかかる 日照・眺望・採光の条件が良い
平坦な土地に比べ活用できる方法が限られている 傾斜地を上手く利用して倉庫や車庫を作れる

建物を建てるには危ない

全ての傾斜地が危ないわけではなく、「がけ条例」に指定されている地域や「急傾斜地崩壊危険区域」などに指定されている場合は、平坦な土地に比べて崖崩れや崩壊のリスクが高い場所もあります。

傾斜地で建物を建てる際には建築基準法や行政の条例などに従って、建物の設計・建築をおこなうので基本的には傾斜地でも建物を建てるのは問題がありません。しかし、平坦な土地に比べて災害時などの土砂崩れや地盤崩壊などのリスクは高くなります。

急傾斜地崩壊危険区域とは

[1]崩壊するおそれのある急傾斜地(傾斜度が30度以上の土地をいう。以下同じ。)で、その崩壊により相当数の居住者その他の者に被害のおそれのあるもの

[2][1]に隣接する土地のうち、急傾斜地の崩壊が助長・誘発されるおそれがないようにするため、一定の行為制限の必要がある土地の区域

引用元:「急傾斜地崩壊危険区域の解説」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/kyuukeisya.html

売却や土地貸しがむずかしい場合もある

傾斜地の中にはそもそも建物を建てられない場所や活用が難しい場所もあります。
そのため、傾斜地を購入しても建物を建てられない場合や造成費用が大幅にかかる場合は売却や土地貸しが難しいのが現状です。

傾斜地でも勾配によって造成費用などは大幅に変わってきますが、やはり「傾斜地=活用が難しい、危ない」というイメージが強いため売却や土地貸しが難しい場合が多くなります。

傾斜地の土地は安くしないと売れない場合もある
傾斜地で建物を建てるためには、場所によっては地盤改良や擁壁などの費用がかかるため、平坦な土地に比べて安くしないと売れない場合があります。

傾斜地の中でも勾配が緩やかで地盤が固ければ、地盤改良や造成工事に高額な費用はかかりません。しかし、勾配が急であったり地盤が緩い場合は地盤改良や造成工事に高額な費用がかかるため安くしないと売れない場合が多いでしょう。

敷地が広大で平坦な土地と傾斜地が含まれているような土地であっても、宅地として活用できない傾斜地の部分は土地の値段を下げて売却しなければいけない場合もあります。

傾斜地を土地活用する方法

売却や土地活用がむずかしいと言われている傾斜地ですが、どういった土地活用ができるのでしょうか。
一言に傾斜地といっても、勾配が緩やかな傾斜地や傾斜の角度が30度以上のがけ地など、様々な土地があります。
土地の状況によっても異なりますが、傾斜地では平坦な土地に比べて擁壁や造成工事などの費用が多くかかる点にも注意が必要です。

マンション経営

傾斜地でのマンション経営のメリット

・戸数を増やすことで収益性を高めやすい
・日照・眺望・景観を確保できる
・傾斜地の特性を活かしデザイン性の高いマンション建築が行える

傾斜地でのマンション経営のデメリット

・擁壁や造成工事などに多額の費用がかかる
・工事費用が高額になりすぎると採算が合わなくなる
・マンションを建てるためにはある程度の敷地の広さが必要になる

傾斜地の活用方法の1つとして考えられるのがマンション経営です。
傾斜地に建物を建てるメリットとして日照や眺望を確保しやすいということが挙げられるため、マンション経営が傾斜地での活用方法として考えられます。

また、マンションを建築する際には近隣住民とのトラブルなどが発生することがあります。しかし、傾斜地の場合は、近くの建物に対して日照や眺望を遮ることは少ないため平坦な土地に比べて近隣トラブルが発生する可能性は低いと言えます。

勾配がきついような傾斜地であってもマンションであれば延床面積が広くなるため、切土工事や盛度工事で勾配を緩やかにしたマンション建築が可能です。
しかしマンションは、戸建住宅に比べ強固な地盤や擁壁工事など多額の費用が発生するため、事業として採算が合うのかをしっかりと検討する必要があります。

傾斜地を生かした個性的な住宅建築

傾斜地は斜面部分を住宅スペースとして活用できませんが、中には他の方法で活用することができる場合もあります。

例えば、傾斜地の上に建物を建てる場合や敷地全体が傾斜地などの場合には、基礎部分で勾配を調整して建物を建てることが可能です。そういった場合には、基礎部分にある程度の高さが求められますので、基礎部分をビルトインガレージにするなどの活用方法があります。

その他にも、傾斜地の場合周りの視線が気にならないような場所も多いので、ガラス面の多い個性的な住宅などが建築可能です。山の中の別荘地などは傾斜地も多いですが、斜面を上手く活用することにより傾斜地の問題点を上手く活用できる場合もあります。

太陽光発電

傾斜地で太陽光発電をするメリット

・斜面を平らにする工事の費用や期間が不要
・光を妨げる建物が少なく太陽光発電におすすめ

傾斜地で太陽光発電をするデメリット

・電気の買取価格が下がっている
・傾斜地でも標高の高いところなどは天候が左右されやすく、雨の期間が多い場合もある

傾斜地で建物を建てる際には、建物を安全に建てられるようにするため、土地を平らにする工事が必要です。造成工事には高額な費用が発生する場合もあります。しかし、太陽光発電であれば傾斜地のメリットである日照条件が良いので、傾斜地を現状のまま活用することができます。

太陽光発電で発電した電気は、経済産業省の「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT制度)」に基づき、一定の価格で電力会社が買い取ってくれます。
しかし、FIT制度が開始された2012年よりも電力の買取価格は下がっているため、これから太陽光発電の導入を検討している方は工事費と収入のバランスを考慮する必要があります。

参考:「再エネ特措法改正関連情報」(経済産業省)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/FIP_index.html

傾斜地を土地活用する際の注意点

傾斜地は一般的に活用が難しいと思われがちですが前述したように、傾斜地でも様々な方法で土地活用が行えます。
しかし傾斜地では平坦な土地にはない様々な注意点もあるため、傾斜地の土地活用には注意が必要です。
傾斜地では平坦な土地に比べ様々な費用がかかったり、行政などの規制によって建てられる建物に制限があります。

傾斜地によっては地盤改良が必要な場所がある

傾斜地で建物を建てる際には地盤改良などの様々な費用が発生する場合もあります。

傾斜地に建物を建てる際に発生する可能性がある費用

  • 地盤調査費用
  • 地盤改良
  • 造成工事
  • 地盤調査費用

傾斜地であっても平坦な土地であっても地盤調査費用は必須の項目です。
地盤調査とは建物を建てる土地の地盤の強弱を測ることで、地盤が弱いと次項で説明する地盤改良が必要になってきます。

地盤調査には一般的に行われることが多い「スウェーデン式サウンディング試験」と「ボーリング調査」があります。

一般的な戸建住宅の場合の地盤調査費用

スウェーデン式サウンディング試験ボーリング調査
ボーリング調査20〜30万円程度

地盤調査費用は建てる建物や敷地の広さによっても金額が異なるためある程度の予算を見ておく必要があります。

・地盤改良
地盤改良には表層改良工法、柱状改良工法、鋼管杭工法などの種類があり、それぞれ地盤の強弱によって必要な工法が異なります。
一般的な戸建て住宅を建てる場合には坪単価でおよそ数万円程度かかってくるため、広大な土地になると地盤改良だけで数千万円の費用がかかってきます。

・造成工事
建物を建てるために必要な工事である切土や盛土、擁壁工事など土地に建物を建てられる状況にする工事を造成工事といいます。
傾斜地の場合には、土地を平らにするための切土工事や盛土工事、擁壁工事などに費用が大きくかかる可能性があります。

擁壁(ようへき)がなければ高額出費となる

擁壁(ようへき)とは簡単に言えば、高低差のある斜面で土が崩れてくるのを留める役割をする、壁のような構造物のことです。

傾斜地の工事費用のなかでも高額出費になるのが、その擁壁の工事なのです。擁壁には主に3種類ありますが、それぞれ工期や費用が異なってきます。

擁壁の種類

  • 鉄筋コンクリート擁壁(RC擁壁)
  • コンクリートブロック積み擁壁
  • 石積み擁壁

傾斜地に建物を建てる際には土砂崩れなどを防ぐために、頑丈な鉄筋コンクリートで擁壁工事が行われる場合が多いです。
擁壁工事は規模によっても金額が異なりますが、数百万円〜数千万円の工事費用がかかるので、擁壁がない土地での建築にはかなりの費用がかかってきます。

擁壁を建てる際には隣地との境界を超えないように建てる必要があり、様々な種類の擁壁があります。逆T型の擁壁は、擁壁の形が逆T型になっており敷地の境界を気にしない場合に用いられます。
L型や逆L型の擁壁は隣接地との境界を超えないための擁壁です。その他にも重力式の擁壁やもたれ式の擁壁などがあります。

急傾斜地崩壊危険区域内やがけ条例の制限がないか

急傾斜地崩壊危険区域やがけ条例が適用される土地では、建物の建築や造成工事に様々な規制が設けられています。

こういった規制が適用される地域は、崖崩れや災害などのリスクが高まるため各自治体でも厳しい制限を設けています。

規制が定められているエリアで建物を建てた後であっても、崖崩れや災害などによって近隣の民家や住人に損害を与えた場合には責任を負わなければいけない場合もあります。
急傾斜地崩壊危険区域やがけ条例の規制内容は、各都道府県や市町村によって異なるので、事前の確認が必要です。

傾斜地の土地活用の事例

傾斜地の土地活用は高額な費用がかかる場合や難しいイメージが先行してしまいますが、実際には費用を抑えたり傾斜地の特性を上手く利用した土地活用の方法もあります。
建てる建物や敷地などの条件によっても活用方法は異なりますが、実際に傾斜地を上手く利用して活用した事例を紹介しますので参考にしてください。

傾斜地をウッドデッキにして庭を広くする

敷地内に高低差がある場合、全ての土地を平らにするためには擁壁や強固な基礎が必要になってきます。擁壁や基礎を広げるには高額な費用がかかってきますが、ウッドデッキを作成することにより費用を抑え、高低差のある土地でも庭に出られるようにした施工事例があります。

傾斜地では眺望が良い建物を建築しやすいのでウッドデッキを作ることによって、家の外でも見晴らしの良い景色を楽しむことができます。
建物を建てられない斜面部分にウッドデッキを作ることにより、傾斜地でもそのまま外に出れるようにした活用事例です。

傾斜地を地下室にして延床面積を増やす

傾斜地では平坦な場所に比べて建物を建てる面積を平らにするために、ある程度の高さの基礎が必要です。基礎を高くするだけでは費用が高額になってしまうだけですが、基礎の部分を地下室にすることにより延床面積を増やすことができます。

地下室とは「床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの3分の1以上のもの」と建築基準法では定義されています。傾斜地では擁壁や高低差の関係から地下室を上手く活用することにより、延床面積を増やし容積率を緩和することも可能です。

傾斜地の特性を活かすと地下街や半地下でも窓を設けることも可能で、延床面積を増やすことができるので、おすすめです。

傾斜を活かした集合住宅で造成費を抑える

傾斜地を全て平坦な土地にするためには高額な造成費用がかかり、採算が合わないため計画を断念していたケースでは、あえて傾斜地を上手く利用することにより造成費を抑えながらも独自性のある集合住宅を建築することができました。

傾斜地を建物が建てられる程度の造成工事に抑え、日照や眺望を確保しながら建物を建てることにより採算性のある事業を行うことができました。
傾斜地を上手く活用するポイントは全ての土地を造成工事などで平らにするのではなく、傾斜地の特性を活かしながら費用を抑えて活用することが重要です。

傾斜地の有効活用でお悩みの方はトチカツプロへご相談を

傾斜地での土地活用は地盤改良や造成工事などで多額の費用が発生するケースが多く、傾斜地での土地活用を断念される方も多いでしょう。
しかし場所によっては傾斜地の特性を上手く活かし建物を建てて収益を上げることも可能です。

しかし傾斜地の活用には地域や行政によって「がけ条例」や「急傾斜地崩壊危険区域」などの規制があったり、どの傾斜地でも活用できる方法が同じだとは限りません。
傾斜地の活用方法や売却に悩んでいる場合には、プロの専門家に相談することが解決への近道になります。

トチカツプロでは活用が難しいと思われる傾斜地の活用方法や売却のご相談も可能です。傾斜地の活用方法や売却に悩んでいる方は一度お問い合わせください。

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