土地売却に伴う税金や社会保険に関する心配はつきものですが、特に注目したいのは配偶者控除への影響です。そこでこちらの記事では、土地売却に伴う配偶者控除や社会保険への影響について解説します。
何も知らずに売却すれば、数十万円単位で損をする可能性もありますので、土地売却の予定がある夫婦の方はぜひ参考にしてください。
土地売却で配偶者控除が外れることがある
土地売却は多くの資金が手に入る人生でも数少ないチャンスと言えますが、良いことばかりではありません。入ってくるお金もあれば出ていくお金もあります。特に税制度や社会保険制度に関してはしっかり把握しておかないと、高額な税負担という思わぬ落とし穴に落ちる可能性があるでしょう。
今回はその中から「配偶者控除」について紹介します。土地売却によって配偶者控除が外れ、税負担が増える可能性があるので、妻名義の土地売却を検討している方は参考にしてください。
配偶者控除とは
そもそも配偶者控除とは、夫婦がそれぞれ所得を得ている場合に、条件を満たす場合に限り、所得税や住民税の負担を軽減できる制度です。
配偶者控除を受けられる条件
配偶者控除を受けるためには、「民法の規定による配偶者であること」「納税者と生計を一にしていること」「年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること」など、いくつかの条件を満たす必要があります(※1)。
逆に言えば、これらの条件を満たさない場合、配偶者控除が外れる可能性は誰にでもあるのです。土地売却においては、妻の名義で土地を売って譲渡所得が発生した際、年間所得が増えて条件を満たさなくなることがあります。
土地売却しても社会保険には影響はない
土地売却をして利益が出たとしても、原則として社会保険には影響がありません。社会保険料は個々人の収入に基づいて計算されますが、土地の売却益(譲渡所得)は収入に含まれないとされているからです。
ただし注意点として、譲渡所得を投資資金として運用し、それによって収益が発生した場合は、収益に対して所得税が課せられます。その所得税の額次第では、社会保険料の金額に影響が出る可能性はあるでしょう。
このように、土地売却をしても基本的に社会保険に影響はないですが、配偶者控除が外れる場合はあります。譲渡所得が発生したことにより、配偶者控除を受ける条件に当てはまらなくなることがあるからです。
例えば、条件の1つに「配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下であること」があります。このとき、配偶者の所得が土地売却によって48万円を超えると、妻が扶養から外れ、配偶者控除を受けられなくなるのです。
そのため、配偶者である妻が土地売却をする際は、現在の収入と譲渡所得の合計が48万円を超えるかどうかに注目する必要があります。
土地売却で発生する所得とは
土地売却で利益が出た場合、それは所得と見なされます。では土地売却における所得は通常の所得とどう違うのか、名称や計算方法などを紹介します。
譲渡所得とは
土地の売却によって発生した所得は「譲渡所得」と呼ばれます。具体的には、土地の売却価格から取得費用(購入時の価格)や売却にかかった費用を差し引いた金額が、譲渡所得の金額です。
なお、売却にかかった費用とは仲介業者への手数料、建物の解体費用、測量費用、登記費用などです。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は、以下の式によって計算されます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費用 + 売買費用 )
譲渡所得が発生した場合、土地を所有していた期間に応じて所得税や住民税が課されます。所有期間ごとの税率は以下の通りです。
所有期間 | 所得の名称 | 税率 |
5年以下 | 短期譲渡所得 | 税率39%(所得税30%・住民税9%) |
5年超 | 長期譲渡所得 | 税率20%(所得税15%・住民税5%) |
譲渡所得が発生することは多くない
「利益が出過ぎると税金が大変なのでは?」と心配する方がいますが、譲渡所得がプラスになることは一般的に少ないです。理由は、経年劣化によって建物の価値が大幅に下落していることが大半だからです。
また、マイホームが建っている土地を売却する場合は、所有期間にかかわらず最高3000万円まで譲渡所得を控除できる特例もあります。これらの理由によって、譲渡所得が発生して別途課税されることはあまり多くありません。
参考:「No.3302 マイホームを売ったときの特例」(国税庁)
土地売却で配偶者控除が外れた時の税金
土地売却によって配偶者控除が外れた場合、税金の支払いにどのような変化が起きるのか、夫と妻とに分けて解説します。
夫の税金支払い
まず、夫の控除額は合計所得金額によって大きく変わります。詳しくは以下の通りです。
夫の合計所得金額 | 控除額 |
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1000万円以下 | 13万円 |
つまり、夫の年間合計所得金額が1000万円以下であるなら、妻の所得が48万円を超えた時点で上記の配偶者控除を受けられなくなり、夫の所得税の負担が増えます。
参考:「No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか」(国税庁)
妻の税金支払い
誤解されやすいこととして、仮に妻の所得が48万円を超えなかったとしても、妻名義の土地を売却して譲渡所得が発生していれば、妻には別途所得税や住民税が課されます。所有期間ごとの税率は以下の通りです。
所有期間 | 所得の名称 | 税率 |
5年以下 | 短期譲渡所得 | 税率39%(所得税30%・住民税9%) |
5年超 | 長期譲渡所得 | 税率20%(所得税15%・住民税5%) |
土地売却をしても配偶者控除が外れないためには
妻の名義で土地を売却する場合に、配偶者控除が外れないようにするためには、いくつか方法があります。こちらでは3つの方法を紹介します。
総所得を調整する
3つの方法の中で最も負担が少ない方法は、総所得を調整し、妻の総所得が48万円を超えないようにすることです。アルバイトやパートを辞めて、それ以上所得が増えないようにしたり、極力経費を多めに使ったりなどです。そのようにして妻の総所得が48万円を超えないようにすれば、配偶者控除から外れなくなります。
分割売却をする
2つ目の方法は分割売却です。分割売却とは、複数年に分けて土地を売却することです。分けて売れば年間所得を抑えることができるので、規模が大きな土地を扱う際に有効となります。たとえば、マンションを一棟で売るよりも、部屋ごとに分けて売れば、売却益を一定に抑えることができます。
土地売却をした翌年はまた配偶者控除を受けられる
土地の売却に伴って配偶者控除が外れたとしても、そこまで絶望的に感じる必要はありません。なぜなら、土地を売却した翌年からは再び配偶者控除を受けられるからです。妻の年収が元々の少額の状態に戻れば、配偶者控除はまた適用されます。
土地売却のご相談は近畿住宅流通へ
配偶者控除が外れるケースがあるように、土地売却では知識不足のままおこなうと損をすることが多々あります。実際、土地売却では配偶者控除以外にも複数の控除や特例が存在するのも事実です。
だからこそ、土地売却で失敗しないためには専門家によるアドバイスやサポートが必要と言えます。近畿住宅流通はこれまで全国で100件以上の土地買取をおこなってきた買取のプロフェッショナルです。土地売却でお困りの際はお気軽に近畿住宅流通までご相談ください。