「このままだと土地を相続しなければいけない。でも相続したくない!」
今回はこのような方のために、土地の相続を放棄する方法や、放棄するメリット・デメリットについて解説します。
売れない土地を相続したくない!相続放棄の仕方
こちらではどうすれば土地の相続を放棄できるのか、必要な作業、費用、流れなどについて解説します。
どうすれば相続を放棄できるのか
土地の相続放棄は、家庭裁判所で手続きができます。また、相続放棄ができる期限は相続発生時から3ヶ月以内です。
期限を過ぎると、相続人は原則として土地を含むすべての財産を相続しなければいけません。
複数の相続人がいる場合、他の相続人の合意がないと放棄できないと思われがちですが、実際は合意が不要です。相続を放棄したい人は放棄できますし、同時に、相続したい人は相続ができます。
ただし、一度相続を放棄した人は、土地に限らず一切の相続権を失います。財産の一部を相続し、土地だけ相続を放棄することはできないので注意が必要です。
相続放棄をするために必要な書類
相続放棄をするには、複数の書類を家庭裁判所に提出する必要があります。相続時から3ヶ月以内に提出が必要ですので、早めの準備を心がけましょう。
具体的に必要となる書類は以下です。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票(あるいは戸籍の附票)
- 相続放棄をする者の戸籍謄本
なお、戸籍謄本は本籍地がある各自治体で取得する必要があります。遠方に足を運ぶケースもあるため、提出期限を考慮して早めに取り掛かりましょう。
相続放棄申述書の書き方
相続放棄の手続きにおいて、新たに作成が必要であるのが「相続放棄申述書」です。こちらは、家庭裁判所の窓口で入手するか、裁判所のホームページからダウロードすることもできます(※1)。
相続放棄申述書のページ数は全2ページであり、記入内容はそれほど多くありません。申述書の内容は以下の通りです。
⑴日付と申述人の記名押印
名前の横に、印鑑か認印による印が必要です。
⑵添付書類
戸籍謄本や住民票など、提出を指定された書類のチェック欄にチェックを入れます。
⑶申述人の個人情報
添付書類に記載されている情報にもとづき、申述人の本籍や住所などを記入します。
⑷法定代理人等
代理人が申述する場合は、住所や氏名などの必要な情報を記入します。
⑸被相続人の個人情報
被相続人の本籍や最後の住所、死亡当時の職業などを記入します。
⑹申述の趣旨
「相続を放棄する。」などの趣旨を記入します。
⑺申述の理由
相続開始日や相続放棄する理由、相続財産の概略を記入します。現金や有価証券のおおよその金額や、土地や建物のおおよその敷地面積が情報として必要です。
相続放棄にかかる費用はいくらか
相続放棄の手続きにかかる費用は、当事者自身が手続きする場合と専門家に依頼する場合とで異なります。
・当事者自身が手続きをおこなう場合
申述者1人につき800円の収入印紙代、切手代が400円程度、そして戸籍謄本を取得するのに1通450円がかかります。ただし、先述のように戸籍謄本を取得するために遠方へ行かざるを得ない場合は、別途交通費がかかります。
・弁護士や司法書士に手続きを依頼する場合
弁護士や司法書士に手続きを依頼する場合は、依頼料がかかります。相場は1件数万円から、高くて10万円程度と言えるでしょう。自分で手続きをするのが面倒な方は、ぜひ相見積もりを取った上で依頼してください。
土地だけを相続放棄できるか?/相続放棄するメリット・デメリット
相続放棄は、原則としてすべての財産を放棄することを意味します。そのため、土地のみの相続を放棄することはできません。
では、土地を含む財産の相続を放棄するメリットとデメリットにはどのようなものなのか、それぞれ紹介します。
相続放棄をするメリット
相続放棄における主なメリットを4つ紹介します。
⑴被相続人の借金を相続しなくて済む
相続を放棄するメリットの中で、とくに大きいのが借金から解放される点です。被相続人に借金がある状態で相続した場合、法定相続分に従って借金も相続します。
仮に借金返済が遅延していた場合は、遅延損害金まで引き継ぐことになります。相続した日から債権者として返済に追われてしまうのです。相続を放棄すれば、このような金銭トラブルを回避できます。
⑵固定資産税を支払わなくて済む
土地や建物を相続した場合、何も活用していなかったとしても、所有しているだけで毎年固定資産税を払わなければなりません。
ちなみに、更地の固定資産税は住宅が建っている場合と比べて、最大6倍も高くなります。
何も知らずに建物を解体して更地にしてしまうと、固定資産税の支払い額が6倍になるので注意してください。
しかし、そもそも相続を放棄すれば、このような固定資産税の支払いを回避できます。
⑶近隣トラブルから解放される
空き地や空き家を相続するデメリットは、固定資産税の支払いだけではありません。立地次第では、管理せずに放置していると、近隣住民から苦情がくる可能性があります。
たとえば、不法投棄のせいで景観が損なわれたり、悪臭や土壌汚染が発生したりなどです。
老朽化によって建物が倒壊すれば、近隣の建物に損傷を与える可能性もあります。最悪の場合、損害賠償責任を背負うケースもあるでしょう。
相続を放棄すれば、これらのトラブルを回避できます。
⑷維持費の支払いや管理の手間から解放される
土地や建物を相続した場合、発生する維持費は固定資産税だけではありません。
不法投棄が起こらないように定期的に土地を見に行ったり、草木が生え放題にならないように草刈りをしたりする必要があります。自宅から離れた立地であれば、都度交通費がかかるでしょう。
それらの作業を自分でできない場合は、管理会社に委託する必要があるため、委託料がかかります。相続を放棄すれば、このような出費や管理の手間から解放されます。
相続放棄をするデメリット
相続放棄における主なデメリットを3つ紹介します。
⑴土地以外の財産も放棄することになる
相続放棄のとくに大きなデメリットは、土地以外のすべての財産を放棄しなければならない点です。
たとえば、被相続人である親の持ち家で同居していたのなら、相続放棄と同時に自宅の所有権がなくなるため、原則として退去する必要があります。特定のものだけ相続を放棄することはできないので、注意が必要です。
⑵一度相続を放棄すると撤回できない
原則として、一度相続放棄をすると、あとから撤回できない点も押さえておきましょう。
たとえば、これと言って目立った財産がないと判断して相続を放棄したものの、あとから財産があることが判明して引き継ぎたいと思っても、放棄は覆せません。
⑶相続順位が変動し、親族間でトラブルが発生する可能性がある
相続放棄が成立すると、相続の権利は次順の相続人に移ります。これは、被相続人に借金があった場合も同様です。
たとえば、相続人である1人息子が相続を放棄し、祖父母が生存していた場合、債務と一緒に相続の権利が祖父母に移行してしまうことがあるのです。借金の存在を知らずに承認してしまうと、思わぬ借金を負わせてしまう可能性があります。
そのため、相続を放棄する際は相続順位がどうなっているのか、事前に把握しておく必要があるでしょう。
相続放棄をする際の注意点
こちらでは、相続放棄をする際にとくに注意したい5つのポイントを紹介します。
すべての財産を放棄することになる
繰り返しになりますが、相続放棄は部分的におこなえるものではありません。相続は、法定相続分の財産をすべて相続するか、すべての財産を放棄するかの二択です。
同様に、複数の土地を相続する場合も、活用可能な特定の土地だけを相続し、使い道のない空き地だけを相続放棄するなどの選択もできません。
被相続人の借金を引き継がなくて済むのは大きなメリットですが、どのような財産が残っているのかきちんと精査した上で、放棄するか否かを判断しましょう。
相続放棄したあとの相続権の移行について知っておく
相続権があるのは、原則として「法定相続人」です。法定相続人とは、民法によって定められた、被相続人の財産を相続できる人間です。
基本的には被相続人の配偶者、並びに被相続人の血族が該当します。そして、押さえておきたいのは、法定相続人には順番が決められている点です。
国税庁の定義によれば、まず死亡した人の配偶者は常に相続人です(※2)。次いで、第1順位が死亡した人の子供、第2順位が死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)、第3順位が死亡した人の兄弟姉妹です。
たとえば、法定相続人が子供1人の場合、第2・第3順位の人間は法定相続人にはなれません。しかし、子供が相続放棄をすると、相続権は第2順位である直系尊属に移ります。
さらに、直系尊属が相続放棄をした場合、あるいは全員他界している場合は、相続権は第3順位である兄弟姉妹に移ります。被相続人に借金があった場合、借金の相続権まで移ってしまうのです。
そのため、最初に相続放棄をする人は、次に相続人となる人物がいるのであれば、あらかじめ話を通しておくことをオススメします。
相続放棄しても土地の管理義務は消えない
相続人全員が相続放棄をした場合、財産を管理する人間がいなくなります。そのため、代わりに財産を管理する相続財産管理人を家庭裁判所で選任してもらう必要があります。
注意したいのは、相続財産管理人が決まるまでの間、放棄した財産(土地や建物など)を放置してはいけない点です。
民法940条1項では、相続放棄に関して、
「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、
自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」
と定められています。
仮に管理人が選ばれる前に、土地や建物の管理不行き届きによって、第三者に何かしらの損害を負わせた場合、その責任は法定相続人が負わなければいけません。この場合の法定相続人とは、最後に相続放棄をおこなった人間です。
土地や建物の相続を放棄した場合、固定資産税などの支払い義務はなくなりますが、一部の管理義務は残るので注意が必要です。
期限以内に申請しても、相続放棄ができないこともある
原則として、相続した日から3ヶ月以内であれば、家庭裁判所の手続きによって相続を放棄できます。しかし、相続財産の一部に何かしら手をつけてしまった場合は例外です。
たとえば、財産の一部を売却したり、借金の一部を返済したりなどです。相続後にそのような行為をおこなうと、その人物は相続放棄をおこなうことができません。
繰り返しになりますが、相続はすべて相続するかすべて放棄するかの二択です。相続放棄をおこなうか否かを決断するまでは、手をつけないように配慮しましょう。
相続放棄をするか否かの判断基準を押さえておく
誤った判断をして損失を被らないためには、相続放棄をするか否かの判断基準をある程度押さえておく必要があります。
基本的には、財産の総額と借金の総額を把握できる状態にしておくことが肝要です。当たり前の話ですが、財産を大きく上回るほどの借金があれば、相続するメリットはゼロに近いと言えます。
あるいは、多少の借金があったとしても、それを上回る財産があるのであれば、その財産を活用して返済することができるでしょう。
土地や建物などは、立地次第で価値が上がっている可能性もあるので、売却によってまとまった現金を得られるケースもあります。物置に長年眠っていた骨董品や美術品、家宝を売却することで、同じく現金化できるケースもあるでしょう。
いずれにしても、きちんと残された財産を把握した上で、財産の総額と借金の総額を比較し、放棄するか否か判断することをオススメします。
ちょっと待った!田舎の売れない土地でも相続をオススメする理由
「売れない土地を相続しても仕方ない。相続を放棄しよう」
もしそう思っているのなら、もう少しだけ検討してみるといいでしょう。買い手が中々つかないような土地でも、活用次第で収益を生める可能性があります。
そこで、こちらでは田舎の売れない土地でも実現できそうな活用方法を7つ紹介します。
太陽光発電
田舎の土地に適している活用方法の1つが「太陽光発電」です。空き地に太陽光の発電システムを導入し、発電した電気を事業者へ売却して収益を得る活用方法です。
田舎の土地が太陽光発電に適している理由はいくつかあります。
まず、他の多くの活用方法と違って集客をする必要がないため、人が行きにくい不便な立地であっても大きな問題がありません。また、太陽光を遮るような大きな建物が建ちにくいのも強みです。
さらに、そもそも田舎の土地は地価が安い傾向にあり、太陽光発電に適した広い土地を確保しやすい特徴があります。日当たりが良く、地盤が強固であり、周囲に高い建物がないエリアは、とくに適性があると言えるでしょう。
・メリット
ビジネスモデル上、長期的に収益が安定しやすいメリットがあります。安定しやすい主な理由は、売電価格が20年間固定であることです。
太陽光発電の売電価格は、事業開始から20年間固定であることが経済産業省によって定められています。また、発電システムの主要部分である太陽光パネルの平均寿命は25年〜30年ほどです(※3)。
よほどの気候変動が起きない限りは、長期的に安定して収益を得られるでしょう。
また、維持費や管理の負担が軽い点もメリットです。草むしりや簡単な清掃、点検作業などが必要ですが、基本的には専門業者に委託できます。
初期費用に関して、決して安くはないですが、アパート・マンションの建設費用と比べれば負担は軽いです。一般的に導入事例が多い10〜50kw未満の容量であれば、安くて数百万円、高くても1千万円台で始めることができるでしょう。
なお、太陽光発電の専門業者に土地貸しをおこない、地代を得る形式であれば、初期費用ゼロで始めることも可能です。ただし、その際は収益源が「売電」ではなく「地代」となるため、収益性はぐっと下がる可能性があります。
※3「2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題」(経済産業省)
・デメリット
まず、天候の影響をダイレクトに受けるのがデメリットです。晴天で日が出ている時間帯は問題ないですが、雨天や曇天の日、夜間などは発電量が落ちます。
また、太陽光パネル上に雪が積もると発電効率が下がるため、雪国との相性も悪いです。晴天の日でさえ、発電量が落ちる可能性があります。
もう1つのデメリットは、売電価格が年々減少している点です。2012年は1kWh当たり40円(10kW以上の価格)でしたが、2020年は13円まで下がっています(※4)。一方で、初期投資の費用相場は下がっていないので、単純に利回りが下がり続けていると言えます。
売電価格は毎年変動しますが、今後価格が上がる保証はありません。利回りをしっかりシミュレーションし、参入するタイミングを見極めましょう。
戸建て賃貸
戸建て賃貸も田舎の土地に向いている活用方法の1つです。
都心は地価が高いため、何かしらの工夫をして投資効率を上げる必要があります。たとえば、階数や戸数を増やして賃料収入を増やすなどです。
その点、田舎はそもそも地価が安いため、都心ほど投資効率を考える必要がありません。
むしろ、人口の少ない田舎では、巨額のローンを組んでアパート・マンションを建てるほうがリスクが高いでしょう。
そういう意味で、田舎の土地と戸建賃貸の相性は比較的良いと言えます。アパート・マンションのように高い収益性は見込めませんが、ファミリー層からのニーズがあるエリアであれば、長期的に住み続けてもらえる可能性があります。
・メリット
土地活用において、立地の優先度が高くないのは大きなメリットです。というのも、戸建住宅はファミリー層からのニーズが強い傾向にあります。
落ち着いた環境で子育てをしたい人々にとって、騒がしい街中や駅近の集合住宅より、郊外や田舎の土地にある戸建住宅のほうが何かと都合が良いのです。
また、一般的に戸建は室内が広いので、子供の数が増えたタイミングで引っ越す必要がありません。敷地内に駐車スペースがあれば車を利用できるので、移動に苦労することもないでしょう。ファミリー層にとっては使い勝手が良いため、長く住み続けてもらいやすいのです。
さらに、初期費用を抑えやすいのも戸建住宅の特徴です。建物の規模が小さいため、アパート・マンションと比べて建設費用をかなり抑えられます。
「住宅用地の特例」によって、固定資産税や都市計画税の節税効果を期待できるのもポイントです。極力ローリスクで土地活用をしつつ、きちんと節税もしたい方にオススメです。
・デメリット
居住期間が長いことはメリットですが、逆に居住期間が長いことで発生するデメリットもあります。それは、修繕費用が高くなりがちな点です。
アパート・マンションの場合、居住期間が最短2年であり、室内の劣化や損耗は最小限となります。そのため、修繕費用はそこまで高額になりません。
一方、戸建賃貸は居住期間が長いため、劣化や損耗が激しくなりがちです。さらに、アパート・マンションと比べて延べ床面積が広いため、原状回復には相応のコストがかかります。
いざという時に資金繰りに困らないよう、収益の一部を修繕積立金にまわしておくなどの工夫が必要です。
また、地価が高い土地との相性が悪い点もデメリットです。
戸建賃貸では、アパート・マンションほどの収益性を得ることが難しいです。つまり、土地の取得費用(初期投資額)が低いからこそ成立する活用とも言えます。
そのため、都心部などの地価が高いエリアでは土地の取得費用が高くなり、戸建賃貸では採算が取れない可能性が高いでしょう。
資材置き場
田舎は広い土地が多い傾向がありますが、その強みを活かして「資材置き場」として貸し出すのも手です。
建築会社や解体会社は、資材や機材の保管場所を探していることが少なくありません。建物を建てずに場所を貸すだけなので、法規制を受けることがほとんどなく、初期費用をかけずに気軽に始められます。
ただ、あまりに地盤が弱い場合は、多少の造成工事が必要ですので注意しましょう。
・メリット
まず、立地や日当たりの良し悪しに関係なく始められるメリットがあります。重機や重い資材を置いても問題ない土地であれば、すぐにでも貸し出しができます。
また、更地の状態で貸し出せるため、資材置き場として活用した後に、すぐに用途変更しやすいのもメリットです。
さらに、管理の負担が軽くなるのもメリットでしょう。定期的に業者が出入りするので、人の目もあり、不法投棄が発生する可能性が下がります。
・デメリット
デメリットは、近隣住民とのトラブルが起こる可能性がある点です。トラブルの原因としては、「騒音」と「粉塵」が考えられます。近隣に住宅がある場合は、それらが原因でクレームがくる可能性があるので注意しましょう。
また、収益性が低いというデメリットもあります。資材置き場の賃料相場は低く、固定資産税を払えるくらいの利益がでれば御の字です。次の活用方法が決まるまでの、暫定的な活用として有効な手段と言えます。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅とは、厚生労働省や国土交通省が所管する「高齢者住まい法」に基づいた、バリアフリー構造を有するシニア向けの住宅です。省略して、「サ高住(さこうじゅう)」と呼ばれることもあります。
国土交通省の調査によれば、サ高住が建てられているエリアのうち、約3分の1は市街化調整区域や都市計画区域外です(※5)。つまり、立地が良くない郊外の土地や田舎の土地でも、ある程度のニーズがあると言えるでしょう。
超高齢化社会と言われる日本において、サ高住のニーズはますます高まることが予想されます。なお、経営方式は主に以下の3つです。
<オーナーが自ら運営>
この方式が最も収益性が高いですが、同時に最もハードルが高いと言えます。
前提として、介護業界では多くの施設で人材不足が起きています。そのため、これから新規参入で有能な人材を確保するのは中々難しいでしょう。
さらに、介護業界で生き残るために、競合との差別化やマーケティング、スタッフのマネジメントなども必要です。実業家としての資質を求められる経営方式と言えるでしょう。
<一括借り上げ>
一括借り上げ方式は、オーナーが建てた施設をまるごと専門業者に貸し出し、賃料を得るものです。施設の経営は専門業者がおこなうため、オーナーが経営に関わることは基本的にありません。
空室リスクを心配せずに経営できるのはメリットですが、事業者に対して手数料を払う必要があるため、収益性は低めとなります。
<テナント>
介護サービスのみを専門業者に委託する方式です。オーナーの収益源は、入居者からの賃料と業者からのテナント料です。
なお、入居者の募集や契約・解約などの管理業務はオーナーがおこないます。ただし、中にはそれらの業務を請け負ってくれる業者もあります。
一括借り上げと比べると収益性は高くなりますが、空室リスクを抱えることになるので、より優れた経営能力が求められるでしょう。
・メリット
サ高住の大きなメリットは、補助金や税制上の優遇措置を活用しやすい点です。具体的なサポート内容は自治体によって異なります。
たとえば、東京都で2021年におこなわれた事業者募集では、「新築にかかる建設費の10分の1を補助する」としていました。
固定資産税や不動産取得税に関しても、優遇制度があるようです。具体的な内容は国土交通省のサイトを確認してください(※6)。
※5「サービス付き高齢者向け住宅に関する現状」(国土交通省)
※6「サービス付き高齢者向け住宅における税制優遇の概要」(国土交通省)
・デメリット
デメリットは初期投資の負担が大きい点です。
サ高住は、床面積や各戸の設備に関して要件が定められており、一般的なアパート・マンションよりも建設費用がかさみがちです。目安として、定員20名前後のサ高住を建てるのに2〜3億円程度かかると思っていいでしょう。
また、建物はバリアフリーをはじめとする特殊な構造になるため、将来的に他の用途に転用が難しい点もデメリットです。
さらに、サ高住を建てるには、通常のアパート・マンションと比べて広めの土地が必要となります。最低限、200〜300坪程度の広さが必要でしょう。
トランクルーム
貨物用のコンテナやトランクルームを敷地内に設置し、貨物の保管場所として貸し出して賃料を得るのが、トランクルーム経営です。
利用目的が「居住」ではなく「貨物の保管」ですので、立地や日当たりの良し悪しに左右されずに活用ができます。
経営方式は、主に「業務委託」と「一括借上げ」の2つです。
まず業務委託は、利用者の新規募集や契約などの管理業務を外部に委託するスタイルです。
建物を自分で建てる必要があるため、初期投資はかかりますが、収益性の高さを優先するならこちらの方式がオススメでしょう。
次に一括借上げは、土地のみを貸すパターンと、建物ごと貸すパターンがあります。
土地のみを貸すパターンでは、オーナーが建物を建てる必要がありません。土地を借りる専門業者が、建築費用を負担します。専門業者がそこでトランクルーム経営をおこない、オーナーは業者から地代を得るスタイルです。
オーナーの金銭的な負担は小さいですが、その分収益性はぐっと下がります。
建物ごと貸すパターンは、いわゆる「転貸」と同様です。まずオーナーが建物を建て、建物ごと専門業者に貸し出し、賃料を得るスタイルです。
一括借上げの場合、どちらのパターンにも共通しているのは、トランクルームの売上に増減に関係なく、一定の賃料を得られる点です。
経営リスクはあるが、収益性を重視したい人には「業務委託」、経営リスクを背負わず、安定性を重視したい人には「一括借上げ」をオススメします。
・メリット
アパート・マンションと比べて初期投資の負担が小さい点がメリットです。とくに一括借上げであれば、ほとんど金銭的なリスクを負わずに活用ができます。
・デメリット
トランクルームのビジネスモデルは、限られたスペースを月極で貸し出すのが一般的です。
そのため、売上の天井が最初からある程度決まっています。その上、住宅の賃料と比べて賃料相場が低いため、高い収益を狙いにくいのがデメリットです。
投資効率を考えると、地価の高いエリアでは不向きな活用方法と言えるでしょう。
また、オーナー自身が建物を建てる場合、金融機関からの融資を受けられない可能性が高いです。住宅と比較すると、トランクルームの担保価値が低いためです。自分で建物を建てる場合は、相応の資金力が求められるでしょう。
貸し農園
田舎の農地を「貸し農園」として活用する手段があります。貸し農園とは、普段農業をおこなう環境がない人々に対して、農業体験の場を提供するものです。
非営利目的でおこなわれることが多く、基本的に高い収益は見込めません。
具体的な経営スタイルはオーナーによってさまざまです。最低限の環境として、広い敷地や良質な土、農具などが必要でしょう。
農業未経験の利用者を受け入れるのであれば、ある程度サポートができる人間が必要なため、農業経験者の方や、本業で農業をしている方に向いています。
・メリット
空いている農地や農具があり、オーナー自身に農業経験があるならば、すぐにでも始められるという点がメリットです。
土地を整備したり、新たに建物を建てる必要がないため、初期投資がほぼかからないのも魅力です。
・デメリット
農園の賃料相場が低いため、高い収益が見込めません。また、節税効果が期待できない点もデメリットです。住宅地ではないので、原則として固定資産税や都市計画税の軽減措置がありません。
ただし、例外として利用者のための休憩所や、スタッフ用の事務所がある場合は、軽減措置の対象となるケースもあります。
空き家バンク
最後に紹介するのは、「空き家バンク」です。空き家の賃貸・売却を望む者と、空き家を借りたい・買いたい者とを仲介する、国土交通省が立ち上げた制度です(※7)。
主に、定住を目的として空き家を探している者に紹介することが多いようです。移住者を呼び込むために、市町村や農業委員会、宅建事業者との連携をとっており、「農地付き空き家」を提供している例もあります。
住宅を相続したものの、利用する予定がない方は検討してみるといいでしょう。詳しくは国土交通省のサイトを確認してみてください。
相続で土地について悩んでいる方はトチカツプロを運用している近畿住宅流通へ
土地の相続に関して悩むポイントは人それぞれだと思いますが、重要なのは、悩みのジャンルに応じてその道の専門家を頼ることです。
たとえば、相続人同士のトラブルに関しては、弁護士や司法書士を頼るといいでしょう。
あるいは、土地を相続したほうがいいのかどうか悩んでいる方は、ファイナンシャルプランナーに相談する手もあります。
同様に、土地活用に関する悩みは、弊社のような土地活用の専門家に頼ることをオススメします。
実際、所有している土地にどのような活用が向いているのかを判断し、事業計画を立てて収益化までこぎつけるのは、土地活用の見識がない一般の方にとって少々ハードルが高いです。
その点、弊社は昭和63年の創業以来、全国各地で土地活用に取り組んできました。土地のもつポテンシャルを見極め、適切な活用をおこなうことにおいて、第一線で活躍してきた自負があります。
もし、今後相続する土地についてお悩みがありましたら、どうぞお気軽に近畿住宅流通までお問い合わせください。