物流を効率化させたり輸送費を軽減させたりするには、倉庫の活用が便利です。
とはいえ、事業用の倉庫を自社で所有するには、土地代や建設費など費用面で大きな負担がかかります。そんな時に便利なのが貸倉庫ですが、貸倉庫の利用経験が豊富な人はそう多くないでしょう。
そこで今回の記事では、実際に貸倉庫を借りる際の相場はいくらなのか、初期費用はどの程度かかるのか、賃貸契約時には何に注意すればいいのかについて、それぞれ解説していきます。現在、貸倉庫の利用を検討しているという人は、ぜひ参考にしてみてください。
貸倉庫の賃貸契約にかかる初期費用って?
初期費用の項目は、居住用賃貸の場合とほぼ違いはありません。金額こそ居住用と比べると高くなりますが、主に敷金、礼金、仲介料、保証金などの支払いが発生します。
貸倉庫の賃貸契約にかかる費用一覧
①礼金
礼金の相場は「賃料の1ヶ月分」と言われています。こちらは敷金や保証金とは違い、原則として借主に返還されません。また、人気物件の場合は2ヶ月分以上の礼金が必要なケースもあります。
②敷金・保証金
居住用賃貸と比べて大きな負担となるのが「敷金・保証金」です。こちらは賃料のおよそ3~6ヶ月分であることが多いです。借主が家賃を滞納した時のための保険にあたるものなので、そもそもの賃料が高い場合、敷金・保証金の金額も比例して高くなります。
また、6ヶ月分以上の金額を請求される場合は、滞納時の保険プラス原状回復の費用が含まれている可能性が高いです。
③仲介手数料
こちらは物件を仲介してくれた不動産会社に支払う手数料です。金額は「賃料の1ヶ月分」と、法律で定められています。まれに居住用賃貸のように減額、もしくは無料になる場合もありますが、基本的には発生するものと認識しておきましょう。
以上のことから、初期費用としては家賃の5ヶ月分〜8ヶ月分の間を想定しておくと良いでしょう。
貸倉庫の相場の目安
貸倉庫の賃料は、立地条件や築年数、建物の状態の良し悪し、容積(建物の体積)、周辺環境、物件の固定資産税など、さまざまな条件によって異なります。
また募集時期によっても賃料が変動するため、一概に相場を決められません。そこで今回は「坪単価」を活用して、おおまかに相場を把握する方法をお伝えします。
貸倉庫の相場の目安
「坪単価」とは、建築物を建てる際の1坪当たりの建築費のことを指します。
倉庫の賃料は、基本的に「坪単価×建物の面積」で計算されるので、同じ広さの倉庫でも坪単価によって賃料は変わってくるのです。
例えば、広さは同じ200坪の倉庫でも坪単価が異なる場合、賃料はそれぞれ以下のようになります。
坪単価 | 広さ | 月額賃料 |
¥5,000 | 200坪 | ¥100万 |
¥7,000 | 200坪 | ¥140万 |
このように、広さが同じ倉庫でも坪単価が違えば、月額賃料が数十万円単位で変わってしまうのです。
不動産屋の賃貸相場の調べ方
実際に貸倉庫の物件検索サイトを利用してみると、ほとんどの物件の月額賃料は「坪単価×建物の面積」の計算によって設定されていることがわかります。
しかし、中にはその計算式で算出した値より設定賃料が高い場合もあるのです。実際弊社が貸倉庫を調べている時も、そういった物件に出会うことはあります。
では、相場よりも賃料が高い倉庫にはどういった特徴があるのか?過去の弊社の事例からいくつか紹介します。
・都心の倉庫
物流の多くは都心部に流通しているため、都心に近づくほど賃料は高くなる傾向にあります。
東京であれば、品川区・大田区・港区・江東区・中央区にある貸倉庫は平均募集賃料が高く、1坪あたり6,200円〜7,800円が相場となっています。
・準工業地域、工業地域、工業専用地域にある倉庫
都市計画法(都市の健全な発展を目的とする法律)によって定められている地域の中で、倉庫と関連性が強い地域があります。以下の3つです。
⑴工業専用地域・・・工業の業務の利便の増進を図る地域。住宅の建設は不可。
⑵工業地域・・・主に工業の業務の利便の増進を図る地域。住宅の建設は可能。
⑶準工業地域・・・主に環境悪化の恐れのない工場の利便を図る地域。住宅も商業施設も建設可能。
以上の三つの地域は工場のみならず、倉庫の利用場所としても人気が高く、賃料は高くなる傾向にあります。
特に、過去に我々が調べてきた経験から判断すると、街中の準工業地域にある500坪以上の貸倉庫は人気があり、賃料が多少高くても借り手がつきやすい印象です。
・災害マップで該当エリアに含まれていない倉庫
昨今の災害事情を鑑みると、災害の少ない地域の方が倉庫としてはリスクが低く適性があります。
そのため、災害マップで該当エリアに含まれていない倉庫は人気があり、中でもアクセスしやすくて前面道路が広い倉庫は、賃料が高くなる傾向があります。
このように、物流に有利な都心地域、都市計画法によって倉庫の建設や運営があらかじめ許容されている地域、地形上のメリットが大きい地域では、相場よりも賃料が高くなる可能性があるのです。
貸倉庫の相場を調べる時は、こういった背景も頭の片隅に置きながら調べてみると良いかもしれません。
貸倉庫のエリア別の相場
こちらでは先述の「坪単価」を用いて、関東と関西における貸倉庫の相場を紹介します。
貸倉庫のエリア別の相場
以下は調査時点で募集中だった貸倉庫の平均賃料であり、数字はすべて坪単価(円/坪)で表されています。
関東4都県
埼玉県 | ¥4,180 |
千葉県 | ¥3,990 |
東京都 | ¥6,560 |
神奈川県 | ¥5,830 |
関西2府1県
京都府 | ¥6,680 |
大阪府 | ¥6,000 |
兵庫県 | ¥6,460 |
関東ではやはり流通量が多い東京都の相場が高めで、関西は東京と同等かそれに近い相場となっています。ただし、あくまで上記のデータは調査時のものであり、貸倉庫の募集賃料は数ヶ月単位で変わるものです。
現時点での平均賃料を知りたい場合は、実際に物件検索サイトで各物件を調べることをおすすめします。
貸倉庫の賃貸契約時に気をつけること
ここまでは貸倉庫の相場について解説してきましたが、こちらでは実際に賃貸契約をする際の留意事項について解説します。
居住用の賃貸契約と違い、倉庫の賃貸には特殊な使用条件や細かな制約が多々あります。契約後に貸主とのトラブルを避けるためにも、事前に入念にチェックしておきましょう。
賃料が安い倉庫について
賃料も初期費用も安いに越したことはありません。しかし、極端に安い場合は安くなっている理由を明確にしておきましょう。
前提として、その倉庫の需要が十分にあるなら、相場より安い賃料に設定する必要がありません。安い賃料で募集しているにはそれなりの理由があるはずです。
例えば、設備に修繕が必要だったり、築年数が古くて建物が所々傷んでいたり、レイアウトが悪くて使い勝手が良くなかったり、搬出入に使う駐車場のスペースが十分に確保されていなかったり、何かしらの不備がある可能性もあります。
ですので、相場と比較して極端に賃料が安いと判断した場合は、そういった不備がないか事前に確認しておきましょう。
建築基準について
貸倉庫を内見する際は、設備の動作確認や配線のチェック、残置物の確認をするのはもちろん、どこまで改修工事が可能なのかも確認しておきましょう。なぜなら、仮にも法的に問題のない工事だったとしても、貸主がNGを出す可能性があるからです。
またそれと同時に、現時点で違法建築があるかどうかも確認を取っておくことをおすすめします。「検査済証(けんさずみしょう)」を確認すると良いでしょう。
検査済証とは、建物が建築基準関係規定に適合していることを証明する公的文書です。建築工事完了後に検査をし、すべて問題なく適法だと判断された場合は必ずその証明書が発行されているはずです。
検査済証があれば、仮に現在その建物が法律に沿わないものだったとしても、建築当時は適法だったことを示す証拠となります。
倉庫の適性について
内見の際は、その倉庫が利用する目的に沿っているかどうか、必ず適性をしっかりチェックしましょう。
単純に荷物を保管することが目的なら、そこまで神経質になる必要はないですが、高温や湿気に弱い食品・薬品などを保管する場合は、空調管理が必要になってきます。
また、重い物を保管するのなら、床の耐荷重を調べておくのを忘れないでください。面積が広くても保管できる総重量が少ないのでは、せっかくのコストが無駄になってしまいます。
他にも、搬出入の際に導線の邪魔となるような障害物がないか、床の段差や天井の梁にも注意しましょう。
こういった細かな部分を事前に把握しておかないと、契約後にトラブルに発展しかねません。希望する条件をしっかり満たしているかどうか、隅々までチェックしてみてください。
補償の範囲について
居住用賃貸と違い、貸倉庫の賃貸では設備の修繕費用を借主が払うのが通常です。
例えばエアコンの修理が必要な場合は修理費用が発生しますし、そういった残置物が不用な場合は撤去費用が別途必要になります。
その際、借主がどこまで負担しなければならないのか、補償の範囲について貸主とすり合わせをしておきましょう。他にも警備費や損害保険、保守点検費用などの諸経費に関しても同様のことがいえます。
買取希望の倉庫を借りたい場合
借りたい倉庫が見つかっても、オーナーが買取を希望していて借りられないことがあります。
そのような状況で頼れるのが、弊社のような土地活用の専門業者です。
実際に、弊社でもそのようなお悩みを持つ企業様からのご相談を定期的にいただきます。
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まとめ
ここまでご覧いただいたように、貸倉庫の相場は地域ごとにさまざまです。また、募集時期によって数ヶ月単位で賃料が変動するので、居住用賃貸と比べて相場はかなり流動的と言えるでしょう。
その上、必ずしも理想の倉庫に巡り会えるわけでは限りません。理想を高くすればするほど、倉庫を借りることはできず、迷っているうちに競合他社にその倉庫を奪われてしまう可能性もあるでしょう。
だからこそ、候補となる物件が現れた時にいつでも問い合わせや内見ができるよう、倉庫に求める条件を詳細まで明確にしておく必要があります。
賃料、初期費用、面積、設備、セキュリティ、耐荷重、アクセス、駐車場、補償などのさまざまな条件の中から、妥協できる部分とそうでない部分を事前に決めておくと良いでしょう。
特に、使用条件や補償の範囲は貸主の裁量による部分が大きいので注意が必要です。貸倉庫を利用する際は、希望する条件を明確にした上で必ず現地調査を行い、契約内容にも細部までしっかりと目を光らせましょう。