「土地活用で賃貸経営をしようと思ってるけど、家賃保証会社って活用した方がいいのか」
「家賃保証とサブリースって何が違うの?サブリースは良くない噂も聞くし…」
このような悩みを抱えたまま、どのように土地活用をしたら良いかわからないという人も多いです。今回は、そういった土地活用で賃貸経営を検討している人のために、このような疑問に答えていきます。
よく聞く家賃保証って何?仕組みを解説
家賃保証という言葉は耳にしたことがあるけど、よく知らないという人もいるでしょう。
そこでまずは、
- 家賃保証とは何か
- 家賃保証の歴史
- サブリースとの違い
について1つずつ解説していきます。
家賃保証とは
家賃保証とは、入居者が賃貸契約をする際に、保証会社が連帯保証人の代わりをしてくれるサービスのことです。
具体的には、入居者は賃貸契約時に保証会社に対して、月額家賃の30〜100%に相当する金額を納めます。
その代わりに、保証会社は入居者の代理の保証人となり、入居者が何かしらの理由で家賃を滞納した時に、立替してくれるのです。また、入居者への督促業務も代理でおこなってくれます。
オーナーとしては滞納リスクを回避できる上、督促の労力がかからないため、保証会社との契約を入居の必須条件としているケースも多いです。
ちなみに、国土交通省の調べによると、保証会社の全国的な利用率は2010年時点で39%でしたが、2018年に日本賃貸住宅管理協会がおこなった調査によると、利用率は75%まで上昇しています。
とくに都市部においては、きちんと収入証明があり、連帯保証人がいても、保証会社との契約を必須とする不動産会社も多く存在します。(※1)
※1:「家賃債務保証の現状」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/common/001153371.pdf
家賃保証の歴史
こちらでは、家賃保証の歴史について、
- 家賃保証が生まれたきっかけ
- 家賃保証は、一般的な保証サービスとは異なる
- なぜ家賃保証という仕組みが一般化しているか
の3点に絞ってお伝えします。
・家賃保証が生まれたきっかけ
家賃保証会社は別名「賃貸保証会社」とも呼ばれており、元々は「連帯保証人がいない入居者へのサービス」でした。
例えば、身寄りの少ない外国人の方は、保証人になってくれる人物が身近にいないことが珍しくありません。あるいは、日本人だったとしても、家族や親族と不仲であり、保証人を立てられないということもあります。
このように、本来は保証人を立てられない人でも賃貸契約ができるように、サポートをするサービスが「家賃保証」です。
・家賃保証は、一般的な保証サービスとは異なる
本来、保証サービスとは保険のようなもので、万が一契約者が何かしらの損失を被る際に、契約者が得をするような設計になっています。
たとえば、携帯電話の契約時に、月額数百円の保証料を支払う代わりに、故障時は無料または格安で修理してくれる、といったケースです。
しかし、家賃保証の場合は少し様相が異なります。
家賃保証は、「オーナー」が万が一賃料を受け取れなかった時のために、「入居者」が契約時に保証料を払うというシステムなのです。
しかも、保証料とはつまるところ保証会社と契約するための「委託料」ですので、原則として払ったお金は返金されません。
もしも入居者が家賃を滞納してしまったら、保証会社が一時的に負担してくれますが、入居者はその後、保証会社から「遅延損害金」を請求されます。保証会社によっては、電話や郵送物による請求だけでなく、自宅に訪問して取り立てをすることもあるのです。
このように、基本的に得をするのはオーナーであり、保証料を支払う入居者自身ではありません。すべての保証会社は同様のサービス内容というわけではないですが、一般的にはこのような形が多いと言えます。
現在のように、家賃保証会社が一般化していなかった頃は、賃貸不動産会社がいまの保証会社のような集金代行業務を請け負っていました。
それをいわば外注化したのが「家賃保証会社」なのですが、その外注費用を入居者が支払うという不思議な仕組みなのです。
収入証明ができなかったり、連帯保証人を用意できなかったりする場合は必要なサービスですが、それらの条件を満たせる人物にとっては、ただ出費が増えるということになります。
・なぜ家賃保証という仕組みが一般化しているか
このような仕組みが成立している理由としては、入居者以外の関係者がローリスクで恩恵を受けられるためでしょう。
オーナーとしては、入居者が家賃を滞納しても、保証会社からの支払いがあるのでメリットがあります。
不動産仲介会社としても、入居者に保証契約を結んでもらえれば、保証会社からキックバック(謝礼金)をもらえることが少なくありません。
保証会社としても、委託料にくわえて、入居者が家賃を滞納すればするほど遅延損害金を請求できるので、やはりメリットがあります。
そもそも家賃を滞納する入居者に問題があるといえばそこまでですが、家賃保証という仕組み自体は、あまりフェアな仕組みとは言えないでしょう。
入居者が得をする「家賃保証」もある
前述のように、入居者にとってはメリットを感じにくい家賃保証ですが、中には入居者が得をするような家賃保証サービスも存在します。
たとえば、フォーシーズ株式会社が展開する「賃貸保証(家賃保証)」では、入居者が賃料を支払えない状況に陥った際、入居者に対して生活支援や居住支援、食料支援などをおこなっているのです(※2)。
その上、オーナーに対する保証内容として、毎月の賃料だけでなく、
- 原状回復費用
- 早期解約違約金
- 賃貸借契約更新料など
合計金額賃料2ヵ月分までを保証しています。
さらに、何らかの理由で入居者とトラブルが発生し、入居者との間で建物明け渡し訴訟がおこなわれることになれば、訴訟にかかる弁護費用や強制執行費用なども負担してくれるのです。
このように、中立的な立場で入居者とオーナーの両方が、メリットを享受できるような家賃保証サービスも存在します。
家賃保証は、サービスを運営する会社ごとに保証内容やリスクが異なりますので、保証会社を利用する際は、自分に合ったサービスをぜひ検討してみてください。
※2:「賃貸保証(家賃保証)とは」(フォーシーズ株式会社)https://www.4cs.co.jp/business/shikumi.html
家賃保証とサブリースとの違い
家賃保証と混同されがちなものに、「サブリース」があります。
一般的にサブリースとは、不動産管理会社がオーナーから物件を一括で借り上げ、その物件を入居者に又貸しすることを言います。
賃貸物件の経営は不動産管理会社によっておこなわれ、入居率の変動や家賃滞納に関係なく、オーナーは管理会社から毎月一定の賃料を受け取れるのです。
毎月の賃料が保証されているという点で、「サブリース=家賃保証」と表現されることもあります。
ただし、厳密に言えば、サブリース契約を結ぶのは「管理会社」と「入居者」であり、オーナーが管理会社と結ぶのは「マスターリース契約」と呼ばれるものです。
それらのやりとりを総称して「サブリース」と呼ばれることが多いのです。以下、家賃保証とサブリースの違いについてまとめたので、参考にしてみてください。
【家賃保証とサブリースとの違い】
家賃保証 | サブリース(総称) | ||
契約者 | 入居者と保証会社 | オーナーと管理会社 | 入居者と管理会社 |
契約内容 | 滞納時に保証会社が一時的に立替をし、入居者は遅延損害金を支払う | ・管理会社が一括で借り上げ、毎月一定の賃料をオーナーに支払う ・物件の経営を代行する |
入居者は毎月一定の賃料を管理会社に支払う |
家賃保証のメリットとデメリットは?
こちらでは、家賃保証のメリットとデメリットについて解説します。
家賃保証のメリット
オーナーにとって、家賃保証を活用するメリットは、
- 家賃の滞納リスクを回避できる
- 家賃の督促業務をしなくていい
この2点になります。
保証会社を利用していれば、入居者が家賃を滞納した際、わざわざオーナー自身が入居者に対して、督促業務をおこなう必要がないのです。
その上、入居者がまだ家賃未払いの状態でも、オーナーは保証会社から家賃を受けとることができます。
家賃保証のデメリット
オーナーにとって、家賃保証のデメリットはそこまで多くありません。
あるとすれば、1つは「機会損失」です。
仮に保証会社との契約を必須条件としている状況で、「保証料を払いたくない」という入居希望者が現れた場合、断らざるを得ないでしょう。
また、保証会社も企業である以上、「保証会社の倒産リスク」があります。
実際、過去に業界大手の保証会社が倒産して、多数の大家が巻き添えとなった事例もあるのです。連帯保証人をつけずに保証会社のみと契約していた場合、未払い分の家賃を回収するのは難しくなってしまうでしょう。
家賃保証におけるトラブル
こちらでは、「家賃保証」をめぐるトラブルについて、
- 家賃保証におけるトラブル
- 家賃保証に関する法律事情
- サブリースの「家賃保証」をめぐるトラブル
以上の3点を解説します。
家賃保証におけるトラブル
まず、「家賃保証」というサービスの歴史が比較的浅いため、法規制が十分に整備されていないという現状があります。そのため、借主と保証会社の間でトラブルが発生することもあるのです。
たとえば、
- 家賃滞納後、深夜や早朝に電話や訪問で取り立てをされる
- ドアや共用部分など、第三者の目に触れる場所で、家賃滞納の事実を公表される
- 家賃滞納後、借主に無断で鍵交換がおこなわれ、部屋を追い出される
- 連帯保証人でもない親族に対して、弁済を求められる
- 支払いの意思を示しているのに、督促行為が続く
- 家賃滞納中に、室内の私物を勝手に持ちだされ、処分される
などです。
もちろん、こういった強引な督促行為は少数ですが、明確に取り締まる法律が定まっていない以上、このようなトラブルが起こる可能性もゼロではありません。
実際、国土交通省の調査によると、家賃保証をめぐるトラブルについて、全国の消費生活センターなどに毎年数百件近くの相談が届いていることがわかっています(※3)。
(※3)「家賃債務保証をめぐる相談等の状況」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/common/001154373.pdf
家賃保証に関する法律事情
家賃保証をめぐるトラブルが社会的に問題視されたことで、2006年、家賃保証会社の業界団体である「日本賃貸住宅管理境界」で動きがありました。
「家賃債務保証事業者協議会」を発足し、「業務適正化に係る自主ルールの遵守と確認」を掲げたのです。
保証会社を明確に取り締まる法律はないものの、「年利14.6%を超える遅延損害金・損害賠償・違約金等を請求すること」などを禁じており、最低限、消費者契約法に反するような行為は防止しようという姿勢が見てとれます(※4)。
さらに、2010年の民主党政権時代には、家賃保証会社を規制する法律について審議がなされたこともあります。しかし、賛成派と反対派で意見がわかれ、最終的には廃案となりました。
反対派の意見として、「保証会社を法的に取り締まることは、悪質な滞納を助長することにつながる」といった指摘があったのです。そのため、家賃保証会社を取り締まる法律はいまだに存在していません。
※4:「業務適正化に係る自主ルール」(家賃債務保証事業者協議会) https://www.jpm.jp/hoshou/council/rule.html
サブリースの「家賃保証」をめぐるトラブル
家賃保証会社に関する規制がいまだ確立されていない一方で、ここ数年さらに問題視され始めているのが「サブリース契約における家賃保証」をめぐるトラブルです。
たとえば、
- 勧誘時は「●●年一括借り上げ」という話を聞いて安心していたのに、実は契約書に「●年おきに賃料の見直しが可能」などの記載があった
- 契約時には明確な説明がなかったのに、契約書には小さな文字で、「築●年以内に、大規模修繕工事をおこなう」などの但し書きがあった
- サブリース契約を結んだ不動産管理会社が倒産してしまった
などです。
2018年に起きた「かぼちゃの馬車事件」は、まさにその典型でした。
「かぼちゃの馬車」とは、女性専用のシェアハウスブランドの名称で、不動産会社スマートデイズが建設から、販売、管理までを一貫しておこなっていたのです。
「頭金なし。30年間の家賃保証。利回りは8%」などの謳い文句で出資者を募り、自社の不動産商品を販売していました。
問題だったのは、肝心の不動産商品の価格です。同社は建築会社からのキックバック(謝礼金)を得るために、実に相場の2倍ほどの建築費用を出資者に払わせていました。
当然の話ですが、建築費用が高くなれば、その分賃料を高くせざるを得ません。賃料が相場より高ければ、入居者が集まりにくくなります。やがて空室が増え、賃貸経営が立ち行かなくなるのです。
結局、同社は資金繰りに失敗し、保証していたサブリース賃料を支払えなくなり、破産することとなりました。
それと同時に、計200名以上の出資者(オーナー)がローン返済に行き詰まり、路頭に迷うこととなったのです(最終的には被害者である出資者団が、渦中の金融機関を相手に訴訟を起こし、借金帳消しを勝ち取っています)。
このような状況を鑑み、2020年12月には「サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置」が施行されました(※5)。
サブリース契約による被害を防止するため、借家借家法の内容が見直され、「誇大広告等の禁止」「不当な勧誘等の禁止」「重要事項説明」などの項目が新たに盛り込まれたのです。
法律が整備されたとはいえ、今でも「保証」を謳い文句として宣伝している企業は数多くいます。
契約内容に不利な条件は含まれていないか、提案されたシミュレーションは現実的なものかなど、契約内容の精査は引き続きオーナー自身がきちんと判断する必要があるでしょう。
※5:「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001368270.pdf
土地の活用を成功させるには家賃保証についてよく知っておこう
賃貸経営において、空室リスクは永遠の課題と言えます。
戸数の多いアパートやマンションを、空室ゼロで運用し続けることはほぼ不可能と言ってもいいかもしれません。そのため、「家賃保証」という言葉につい飛びついてしまう人がいても、不思議ではないでしょう。
しかし、保証してくれる相手が企業である以上、「絶対的な保証」はないことを肝に銘じておく必要があります。
とくに、「サブリース契約」には注意が必要です。
家賃を保証してもらいながら、経営も管理会社に委託することになるため、財政的リスクと経営的リスクを1社に集中させることになります。
あらゆる負担や経済的リスクから一時的に解放されることと引き換えに、事業そのものはコントロールしにくいものになるということを、再認識する必要があるのです。
少なくとも、今後土地活用において家賃保証を活用していくのであれば、最低限、この記事に書かれた内容は押さえておいた方が良いでしょう。
土地活用のことで悩んだらまずプロに相談を
最後に、土地活用をおこなうには、非常に幅広い知識が必要となります。「家賃保証」はそのうちの1つの要素でしかありません。
法的なリスク、業者リスクなど、様々なリスクと向き合い続けることになります。1人では適切な判断を下すのが難しい局面に立つこともあるでしょう。
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