こちらの記事では、売却以外で土地を処分する方法と、その注意点を解説します。
不要な土地を処分する9つの方法
こちらでは土地を売却せずに処分する9つの方法を紹介します。
個人へ無償譲渡
無償譲渡とは、使用していない不動産を無料で譲ることです。法律的な解釈では、譲渡ではなく「贈与」にあたります。
譲渡相手として有力な候補は、隣地の所有者でしょう。所有する土地の敷地面積が増えるので、了承してもらえる可能性はあります。ただし、個人から個人へ無償譲渡する場合、以下のデメリットがあるので押さえておきましょう。
・手続きが大変である
土地を売買する場合は不動産業者が仲介するのが一般的であるため、交渉ごとや引き渡しに至るまで、基本的に業者の手を借りることができます。
しかし、個人への無償譲渡は業者が介入しないため、全ての工程を自分でおこなう必要があります。具体的には、土地の調査や契約書の作成、登記作業、必要書類の準備などです。
身近にサポートしてくれる人がいない場合、これらの作業を自分で調べてやらざるを得ません。不動産取引に馴染みの薄い一般の方には、それなりの負担となるでしょう。
・譲渡された側に税金の負担が発生する
個人への無償譲渡の場合、金銭のやりとりがなくとも、譲渡された側に複数の税金が課せられる可能性があります。
まず、無償譲渡は法的には「贈与」に該当するため、譲渡された財産の額が基礎控除額である110万円を超えると、贈与税が発生します。
また、土地に空き家が建っている場合は、不動産取得税が課せられる可能性もあるでしょう。同様に、空き家を譲渡する際は所有権の移転登記が必要であり、その際に登録免許税が発生します。さらに、譲渡された空き家を解体せずに所有し続ける限り、毎年固定資産税の支払いも必要です。
このように、土地の譲渡自体は無償でできますが、譲渡された側にはコストが発生することがあります。譲渡される側に発生するコストを事前に調べた上で、譲渡する相手に伝えるようにしましょう。
法人へ寄付
法人へ寄付するのも有効な手段の1つです。そこそこ広めの土地であれば、法人からの需要を見込めます。
ただし、一般的な企業に寄付することは中々難しいでしょう。一般的な企業が収益化できるような土地であれば、そもそも寄付ではなく売却できるはずだからです。保養所を建てたい社団法人や学校、NPO法人なら、引き取ってくれる可能性がまだあるでしょう。
自治体へ寄付
「寄付採納申請」をおこなうことで、自治体に寄付をする手段もあります。手順は以下の通りです。
⑴自治体の担当者に相談する
⑵自治体に土地を調査してもらう
⑶自治体が審査をおこなう
以上の手順を踏み、審査を通過すれば土地を寄付できます。
ただし、自治体も全ての土地を引き取っているわけではありません。土地を引き取れば本来その土地から得られるはずの固定資産税を得られなくなるので、失う収入源以上のリターンが見込めない限り、引き取ってもらうことは難しいでしょう。
分筆する
所有している土地が売れないという理由で処分しようとしているのであれば、土地を「分筆」することで売れやすくなる可能性があります。分筆とは、土地を分割して登記し直すことです。
広すぎる土地は個人だと持て余す上に、固定資産税もかさみます。そこで分筆をして使いやすい面積にすれば、固定資産税の負担が減り、土地の購入代も安くなります。「立地は悪くないのに土地が売れない」という方は、ぜひ分筆を検討してみて下さい。
空き家バンクを利用する
空き家バンクとは、自治体が運営する空き家のマッチングサービスです。空き家を売りたいまたは貸したい人と、買いたいまたは借りたい人をマッチングしてくれます。
なお、空き家バンクのサイトには無料で物件情報の登録が可能です。売買はもちろん、無償譲渡する相手を探す手段としても有効でしょう。
農地の斡旋サービスを利用する
農地を処分するには、そもそも農業委員会による許可が必要です。そのため、農地を手放したいのであれば、まずは農業委員会に相談することをオススメします。
自治体によっては農地の斡旋サービスをおこなっていることがあるので、スムーズに引き取ってもらえる可能性があります。
相続放棄をする
土地を相続する前の段階で処分に悩んでいる場合は、土地の相続を放棄する手があります。
ただし、土地のみを相続放棄することはできません。相続放棄は、土地を含むすべての財産の相続を放棄することを意味します。
なお、相続放棄には注意点が2つあります。1つは、相続を知った日から3ヶ月以内に放棄の手続きをしなければならない点です。期限を過ぎると相続を放棄できなくなり、土地を含む全ての財産を相続しなければなりません。
もう1つは、相続放棄をした場合、相続権が自動的に親族に移転する点です。被相続人の子供が全員、相続を放棄すると、相続権は両親に移り、両親も放棄した場合は被相続人の兄弟へと移ります。
親族に相談もなく勝手に相続放棄をすると、親族と思わぬトラブルになる可能性があるので注意しましょう。
土地信託を始める
土地信託とは、信託会社や信託銀行などに土地の運用を信託することです。自分の代わりに土地を運用してもらい、収益が発生したらその一部を配当として受け取ることができます。
信託期間は10年〜30年と長めで、信託期間が終了すると土地が返還されるのはもちろん、
信託会社によって建てられた建物の所有権も、土地の所有者に移ります。「しばらく土地を手放す気はないが、自分で運用する気はない」という方にオススメの方法です。
土地信託は、長期間運用を代行してもらうタイプの他に、売却してもらうタイプのものもあります。建物を建てるなどの方法で価値を上げ、土地に建物の価値を上乗せした状態で売却するものです。信託会社の運用がうまくいっていれば、高値で売却できる可能性も十分にあります。
ただし、どのような土地でも土地信託を実現できるわけではありません。信託先が「収益を上げられる見込みがない」と判断すれば、信託契約を断られる可能性もあります。
また、信託先が運用に失敗した際のリスクにも注意が必要です。運用に失敗して負債が発生した場合、その負債は元の所有者が抱えることになるからです。
同様に、運用がうまくいかなければ配当金が出ない可能性もあります。相手が土地活用のプロだからと言って、必ずしもメリットばかりではないので注意しましょう。
なお、以下が土地信託の流れとなりますので、参考にして下さい。
【土地信託をおこなう流れ】
⑴信託先を探す
信託会社やメガバンクが運営する信託銀行など、土地の運用を信託する先を探します。当然ですが、信託先の実力次第で運用が成功するかどうかが決まると言っても過言ではありません。過去の実績を含め、窓口に相談をした上で慎重に信託先を選びましょう。
⑵信託契約を結ぶ
信託先を選び、信託先の承諾を得られたら、信託契約を結びます。信託契約を結ぶと、土地の所有権が信託先に移り、その代わりに地主は信託受益権を得ます。
信託受益権とは、不動産の運用を委託した会社が運用によって経済的利益を得た際、配当を受け取れる権利のことです。なお、信託受益権は担保に設定することができるため、こちらを担保にして資金調達をすることもできます。
⑶信託先による運用の開始
契約締結後、信託先が土地の運用を開始します。建物を建てるのに借入が必要な場合は、信託先が借入をおこなうため、地主が金銭的な負担をすることは原則としてありません。
⑷地主への配当
信託先が運用に成功し、経済的利益が発生した場合、地主は配当金を受け取れます。ただし、収益から借入金の返済や委託料、各種税金などが引かれた残りが配当金に割り当てられるので、収益自体が少なければ配当金が出ないこともあります。
⑸信託期間が終了
信託期間が終了すると、土地や建物が地主に返還されます。ただし、借入の負債が残っている場合は、その負債も一緒に抱えることになるので注意が必要です。負債があれば、土地と建物を売却して返済するのが現実的な手段と言えるでしょう。
信託先の腕が良ければ、信託期間中に借入の返済が終了した状態で、収益性のある事業を引き継ぐことができます。
相続土地国庫帰属制度を使う
最後に紹介するのは「相続土地国庫帰属制度」です。こちらは2023年4月から始まる新しい制度です。相続によって不動産の所有権を得た者が、その所有権を国に返すことができます。
所有者不明の土地が大量に発生している社会問題を受け、今後そのような土地の発生を抑制するために創設されました。国が設けた審査に通過し、20万円の負担金を国に納めることで、相続した土地を手放すことができます。
買主を探す手間がない上、手放した後は国有地として管理されるので、近隣所有者とのトラブルの心配もありません。ただし、審査に通過するためには更地の状態でなければいけないので、建物がある場合は解体する必要があります。
不要な土地を処分する際の注意点
こちらでは、不要な土地を処分する際の注意点を5つ紹介します。
隣地との境界を確定しておく
隣地所有者に譲渡する場合は別ですが、第三者に土地を引き渡す場合、隣地との境界を明確にしておく必要があります。理由は大きく2つです。
1つは、土地の資産価値をはかる上で重要な指標の1つが境界線だからです。境界線が明確になっていないと、敷地面積がわからず正確な資産価値を算出できません。境界が不明な場合は、土地測量士に頼んで境界線を確定させる作業が必要です。
もう1つは、隣地所有者とのトラブルを防ぐためです。境界が曖昧なまま第三者に土地を引き渡してしまうと、土地を利用する際に隣地所有者と利用範囲を巡ってトラブルになる可能性があります。
売却するにしても、譲渡するにしても、きちんと境界を確定させた状態で処分するようにしましょう。
農地は農家にしか売れない
農地を売れる相手は、農林水産省が定める農地制度によって「就農者だけ」と決められています。就農者とは、法人に雇用されることで農業に従事している者を指します。
住宅地に転用(宅地化)して就農者以外に売却できる場合もありますが、原則として売却のためだけに転用することは認められていません。転用が認められるのは、立地基準や一般基準を満たし、適切な事業計画がある場合のみです。
詳しくは農林水産省の資料を参照して下さい(※1)。
寄付にも税金や経費がかかる
先述のように、金銭のやり取りが発生しない「寄付」であったとしても、税金や経費が発生することがあります。最低でも所有権の移転登記をするのに「登録免許税」と「司法書士への依頼料」がかかります。
また他にも、個人に寄付する場合は「贈与税」が、建物が建っている場合は「不動産取得税」が、一般企業に寄付する場合は「所得税」が課せられる可能性があるでしょう。
勝手に処分していけない区域がある
土地の中には、個人が勝手に処分してはいけない区域があるので注意が必要です。
先述した農地は、勝手に売買されたり処分されたりすると、日本の食料自給率に影響が出るため、国によって規制がかけられています。一方で、都市部の土地の中にも同様に規制がかけられている場合があります。それが「都市計画区域」と呼ばれるものです。
都市計画区域とは、都市計画法によって指定された「市街化区域」や「市街化調整区域」のことをいいます。
まず市街化区域は、優先的に住宅や店舗などを建てる区域のことです。市街化区域はエリアごとにさらに細かな用途が決められていて、10年以内に市街化することを目的としています。次に市街化調整区域は、自然環境の保全を目的としているエリアのことです。市街化を防ぐために建物の建築に対して様々な制限が設けられています。
このように、農地以外にも勝手に処分してはいけない場合があるので注意が必要です。
なお、所有している土地が都市計画区域かどうかはインターネットで調べることができます。「土地を管轄する市町村の名前 用途地域」の複合キーワードで検索をすれば、各自治体の地図情報サービスが表示されるはずです。あるいは、土地を管轄する市町村の建築指導部に電話で問い合わせることもできます。
土地だけを相続放棄はできない
土地を活用するつもりがなく、持て余すことがわかっているのであれば、相続を放棄する手段があります。しかし、注意点として土地だけを相続放棄することはできません。
相続放棄をする時は、現金や預金、有価証券や負債など、土地以外のすべての財産の相続を放棄する必要があります。土地の有用性だけを見て判断するのではなく、その他の資産も加味した上で総合的に判断するようにしましょう。
相続放棄後に管理義務が残る
土地の相続を放棄すれば、その後は土地に一切の関与をしなくていいわけではありません。
固定資産税などの維持コストの負担はなくなりますが、相続放棄後も土地の管理義務が残る可能性があります。なぜなら、土地の名義が被相続人のままだからです。相続を放棄した後も、新たな土地の所有者が見つかるまでは管理する義務があるので注意して下さい。
売れない土地を早めに処分した方が良い理由
最後に、売れない土地を早めに処分した方が良い理由を3つ紹介します。
特定空き家に認定される可能性がある
家が建っている土地を管理せずに放置していると、空き家対策特別措置法によって、自治体から「特定空き家」とみなされる可能性があります。
特定空き家とみなされてしまうと、固定資産税が最大6分の1に軽減される「住宅用地の特例」の適用外となり、固定資産税の負担が一気に6倍になるので注意が必要です。
なお、土地が以下のような状態にある場合、特定空き家とみなされる傾向にあります。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切である
詳しくは国土交通省のサイトを参照して下さい(※2)。
※2「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」(国土交通省)
人的被害が発生して損害賠償を請求される可能性がある
まともな管理をせずに土地を放置していると、雑草や害虫が発生したり、不法投棄によって悪臭や放火の危険性が高まったりします。また、建物が古い場合は倒壊の危険性もあるでしょう。
もしもそのような状態悪化によって何らかの人的被害が発生した場合、被害者側から損害賠償を請求される可能性があります。不要なトラブルや出費を避けるためにも、処分が完了するまで最低限の管理はおこなうようにしましょう。
土地の価値が下がる可能性がある
都市部を中心に、土地の価値は全国的に上昇傾向であることは確かでしょう。しかし、地方では高齢化や人口減少などの影響で地価が下落しているエリアも少なくありません。
現に2021年の公示地価は、6年ぶりに全国平均が下落しました。特に下落率が高かったのが、神奈川県三浦市、神奈川県大井町、東京都新島などです。長期的に見て地価が下落傾向にある土地は、今後ますます売れにくくなることが予想されるでしょう。
公示地価に関する詳しい情報は、国土交通省のサイトを参照して下さい(※3)。
土地売却のご相談はトチカツプロの近畿住宅流通へ
日常的に不動産に馴染みのない方にとって、土地の処分は頭を抱えることが多いでしょう。
中には「自分で活用するのはハードルが高いし、維持費もかかるから、タダでもいいので手放したい」と考える地主の方も多いはずです。
しかし、一般の地主の方が持て余すような土地でも、それなりにポテンシャルのある土地であれば、土地活用の業者の手によって有効活用できる可能性も十分にあります。
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