「土地のみを相続する予定だが、具体的にどんな準備をすればいいのかわからない」
「土地を不要と判断した場合、相続を放棄することはできるのか?」
今回はこのような疑問に回答します。これから土地を相続する可能性がある方は、参考にしてください。
土地のみを相続するのはどういうケース?
まず、土地のみを相続する状況にはどういうケースがあるのか、2つ紹介します。
相続する遺産が土地のみだったケース
1つは、預金や有価証券などの遺産がほぼなく、相続する遺産が土地のみであるケースです。
被相続人の配偶者や子供など、法定相続人となる人物に、土地を相続する権利があります。相続人が1人しかおらず、相続を放棄しなかった場合は、自動的にその人物が土地を所有することになります。
遺産分割によって、土地のみを相続するケース
2つ目は、遺産分割によって土地のみを相続するケースです。
相続人が複数いる場合、相続する遺産を何らかの方法で分割する必要があります。分割方法には、換価分割、代償分割、現物分割、共有分割などがありますが、このうち代償分割や現物分割をした場合、土地のみを相続する可能性があるでしょう。
代償分割とは、特定の1人が特定の遺産を独占して相続する代わりに、他の相続人に代償となる財産を交付する方法です。
たとえば、被相続人の配偶者と息子が3,000万円の価値がある土地を相続する際、息子が代表して土地を相続するとします。両者の法定相続分は2分の1であるため、息子が1,500万円分の財産(現金など)を代償として配偶者に支払います。
一方、現物分割は現物ごとに分けて遺産を相続する方法です。たとえば、被相続人である配偶者が車や骨董品などを相続する代わりに、息子は土地のみを相続するなどです。
このように、土地以外の遺産がある場合でも、土地のみを相続するケースが考えられます。
土地の相続のみを行った場合の手続き方法
続いて、土地のみを相続した場合の手続きについて解説します。基本的には、土地のみを相続する場合も、土地以外の遺産を一緒に相続する場合も、おこなう手続きは変わりません。
- 相続人同士で話し合いをする
- 遺産分割協議書を作る
- 法務局で相続登記(名義変更)をする
- 相続税の申告をする
- 準確定申告をする
以上の5つのステップをおこなう必要があります。順番に解説します。
相続人同士で話し合いをする
複数の相続人がいる場合、不動産の登録名義を誰にするのか、話し合う必要があります。登記をして名義を変更しておかないと、何か問題が起きた際に責任の所在がわからず、もめる可能性があるためです。
といっても、必ず相続人全員が一堂に会する必要はありません。合意が取れるのであれば、電話やメールでも問題ないでしょう。ただし、後々のトラブルを予防するために、合意の旨を書面に残しておくことをオススメします。
所有者がスムーズに決まらない場合は、何らかの方法で遺産分割をする必要があります。
注意点として、共有名義にすることは極力避けましょう。土地の相続トラブルでとくに多いのが、共有名義を原因とするものだからです。
遺産分割協議書を作る
土地の登録名義を誰にするのか決めたら、遺産分割協議書を作成しましょう。遺産分割協議書とは、相続する遺産の分割に関して、相続人が全員合意したことを証明する書類です。
協議書が必要な理由は大きく2つあります。1つは、後々相続人同士で起こるトラブルを防止するためです。もう1つは、法務局や金融機関、税務署などで相続に関する手続きをおこなう際に、効率的に進めるのに役立つためです。
とくにフォーマットはありませんが、
- 相続人が全員で協議し合意したこと
- 登記事項証明書に記載されている内容
この2点を最低限記載しておくといいでしょう。
法務局で相続登記(名義変更)をする
次に、以下の3つのステップで、法務局で相続登記(名義変更)をします。
⑴書類を揃える
主に以下の書類の提出を求められます。
- 住民票、印鑑証明書(居住地の自治体窓口で取得)
- 戸籍謄本(本籍地の市区町村で取得)
- 登記簿謄本(法務局で取得可能)
- 固定資産納税通知書(自治体窓口、都税事務所などで取得)
- 被相続人の住民票除票(被相続人が最後に住んでいた地の自治体の窓口で取得)
- 固定資産評価証明書(自治体の税務課で取得)
- 不動産の全部事項証明書(法務局で取得可能)
ただし、遺言書の有無や戸籍の記載内容によって、必要な書類の内容は異なります。
⑵登記申請書を作成する
不動産登記の申請書様式は、登記内容の変更部分によって異なるため、詳しくは法務局のサイトを確認してください。
「不動産登記の申請書様式について」(法務局)
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
⑶法務局に提出する
⑴、⑵で用意した書類を法務局に提出して、登記作業は完了です。
なお、相続登記にかかる費用は、土地の価額や必要な書類の数によって変わります。書類の発行手数料は1枚500円前後であることが多いです。書類が多い場合でも、10,000円ほどの予算で集められるでしょう。
また、相続登記では「登録免許税」の支払いが発生します。納税額は「土地の価額 × 0.4%」の式で算出可能です。土地の価額は、固定資産評価証明書で確認できます。
ちなみに、これらの作業を相続人自身でおこなうのが困難である場合、専門家に代行を依頼できます。不動産の名義変更や所有権移転登記に関しては、司法書士の専門です。司法書士に依頼すれば、必要書類の収集や法務局への訪問を代行してもらえます。
相続税の申告
相続登記が完了しても、それで終わりではありません。一定の要件を満たす場合、10ヶ月以内に相続税を申告する必要があります。
一定の要件とは、相続した遺産の総額が基礎控除額を超えている場合です。基礎控除とは、相続する遺産のうち一定金額まで相続税が非課税となる制度です。
基礎控除額は、以下の式で算出されます。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
※法定相続人の数は、相続放棄した人がいる場合もカウントされます
たとえば、相続する遺産の総額が4,000万円で、法定相続人が2人だとします。基礎控除額は4,200万円なので、相続税は非課税です。
一方、相続する遺産の総額が5,000万円で、法定相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円なので、残りの800万円に対して課税されます。
これは、土地のみを相続する場合においても同様です。土地の価額が基礎控除額を超えると、超えた部分に対して課税されます。
なお、相続税の申告は義務であるため、申告を怠ると延滞税などの罰則を受けるので必ず申告しましょう。
準確定申告
最後は確定申告です。通常、土地を相続しただけだと確定申告をする必要はありません。相続によって得た財産は、所得とみなされないためです。
ただし、以下の3つの状況に該当する場合、所得税の確定申告が必要です。
⑴賃貸収入が発生している土地を相続した場合
土地貸しや駐車場など、賃貸収入が発生する土地を相続すると、確定申告が必要です。相続を開始してから発生した収入は、相続人の所得となるためです。
⑵相続した土地を売却した場合
土地を売却して発生した利益は所得とみなされるため、所得税の確定申告が必要です。売却額から取得費用や仲介手数料、控除額などを差し引いた利益に対して課税されます。
⑶土地を換価分割した場合
換価分割とは、相続した遺産を売却して得た利益を、相続人同士で分け合う方法です。土地を共有名義で所有したくない場合や、物理的に公平に分割するのが困難な場合に用いられます。この場合も、売却利益は所得とみなされるため、確定申告が必要です。
売れない土地なので相続放棄したい!手続きの方法や注意点
土地を売却したくても買い手がつかないケースもあるでしょう。そのような時は、相続を放棄する手段があります。そこで、こちらでは土地の相続を放棄する方法や注意点について解説します。
相続放棄に関する基礎知識
土地を相続したくない場合、相続発生時から3ヶ月以内であれば、家庭裁判所で手続きをして相続を放棄できます。期限を過ぎてしまうと、原則として相続人は土地を含むすべての遺産を相続する必要があります。
また、他の相続人の同意が得られないと放棄が成立しないと思われがちですが、実際は同意がなくとも放棄が可能です。
相続したい人は相続し、同時に、したくない人は放棄ができます。ただし、相続を一度放棄した人物は、土地を含む一切の相続権を失うので注意しましょう。
相続を放棄するために必要な資料
相続を放棄するためには、以下の資料を家庭裁判所に提出する必要があります。
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票除票
- 申述人の戸籍謄本
- 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本(申述人が配偶者や子、孫、親、祖父母の場合)
戸籍謄本は、本籍地がある自治体で取得する必要があり、遠出を要することがあります。提出期限は相続発生時から3ヶ月以内ですので、早めに着手しましょう。
相続放棄の手続きでかかる費用
相続放棄の手続きにかかる費用は、相続人自身が手続きをおこなう場合と、専門家に代行する場合とで異なります。
・相続人自身が手続きをおこなう場合
申述者1人につき800円の収入印紙代、400円程度の切手代のほか、戸籍謄本の発行に1通450円がかかります。戸籍謄本を発行するために遠出する場合は、別途交通費も発生します。
・弁護士や司法書士に代行を依頼する場合
弁護士や司法書士に手続き代行を依頼する場合、サービス料が発生します。料金は依頼先によって様々で、1件数万円で対応してくれるところもあれば、10万円ほどかかるところもあります。自分で対応するのが難しい方は、ぜひ利用を検討してみてください。
相続放棄をする際に注意したいこと
こちらでは、相続放棄をする際に注意したいことを4点紹介します。
⑴遺産の一部のみを相続放棄することはできない
先述のように、遺産を複数の相続人で分割して相続する場合、土地のみを相続することがあります。
しかし、逆に遺産の一部のみを放棄することはできません。相続放棄をする際は、土地を含むすべての遺産相続を放棄することになります。
より厳密に言うと、複数の土地を相続する場合も、特定の土地のみを相続放棄することはできません。一度相続を放棄すると、あとで覆すことができないため注意が必要です。
⑵相続放棄しても、土地の管理義務が残る
土地の相続を放棄した後も、土地の管理義務がなくなるわけではありません。具体的には民法940条1項において、以下のように定められています。
「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、
自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」
仮に相続人全員が土地の相続を放棄すると、土地を管理する人間が不在となります。そのような事態を防ぐため、家庭裁判所で相続財産管理人を選任してもらう必要があるのですが、
管理人がすぐに決まるわけではありません。
そのため、相続人が決まるまでは、最後に相続放棄をおこなった人物が土地を管理する決まりになっています。
管理人が決まるまでの間に、土地を巡って何かしらの問題が起きた時は、一時的に管理している相続人が責任を負わなければなりません。相続放棄をしたことで固定資産税の納税義務がなくなるなど、つい油断してしまいがちですので、押さえておきましょう。
⑶相続放棄後、親族に迷惑がかかる可能性がある
1人が相続を放棄したからといって、相続権が完全になくなるわけではありません。相続権は、国税庁の定める順序に従って自動的に移行します。順番としては以下です。
被相続人の配偶者 → 被相続人の子供 → 被相続人の直系尊属(父母や祖父母) → 被相続人の兄弟姉妹 (※1)
たとえば、法定相続人が子供1人の場合は、被相続人の直系尊属や兄弟姉妹は法定相続人とはなりません。
しかし、子供が相続を放棄したら、相続権は直系尊属に移るのです。さらに、相続権が移った直系尊属が相続を放棄したり、他界していたりする場合、相続権は被相続人の兄弟姉妹に移ります。
このように、該当する相続人がいる限り、相続権が転々と移り変わるわけです。仮に借金を含む遺産の相続が放棄され続けると、ほとんど親交のない縁遠い親族に借金を背負わせてしまう可能性があります。
そのため相続を放棄する際は、他に相続権が移行する人物がいないか事前に確認しましょう。
※1 「相続人の範囲と法定相続分」(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm
⑷期限内に相続放棄の申請をしても、無効となることがある
放棄の申請までに遺産の一部に何かしら手をつけてしまうと、相続放棄は無効となり、相続せざるを得なくなります。
たとえば、土地以外の財産の何かを売却していたり、過払いの税金や保険料などの還付金を受け取ったりなどです。
また、相続した遺産を用いて被相続人の借金の返済をする行為も該当します。ただし、相続人が私財を用いて被相続人の借金を返済する場合は例外です。いずれにしても、相続を放棄するつもりであれば、どのような形であれ遺産には手をつけないようにしましょう。
相続するのが土地のみの場合の注意点
最後に、土地のみを相続する場合の注意点について解説します。
土地のみの相続には複数の維持費がかかる
土地の相続が、他の遺産(現金や有価証券など)と大きく異なるのは維持費がかかる点です。どの遺産を相続した場合も相続税がかかるのは共通ですが、それにくわえて土地は固定資産税や都市計画税、管理費用などがかかります。
とくに、住宅が建っていない土地の固定資産税や都市計画税は、住宅がある場合と比べてかなり高いです。住宅が建っている土地は、「住宅用地の軽減措置特例」によって税負担が軽減されるためです。詳細は以下の表を確認してください。
住宅用地の軽減措置特例 | ||
敷地面積が200㎡まで |
敷地面積が200㎡を超える部分 |
|
固定資産税 |
6分の1に軽減 |
3分の1に軽減 |
都市計画税 |
3分の1に軽減 |
3分の1に軽減 |
つまり、更地は住宅が建っている場合と比べて、最大6倍の固定資産税と、3倍の都市計画税がかかります。毎年発生する税金なので、土地の規模によっては相応の負担となるでしょう。
また、土地を放置し続けると草木が荒れ放題となる可能性があるので、土地の管理が必要なことがあります。管理を管理会社に委託するのであれば、別途委託料がかかります。
このように、所有しているだけで維持費がかかるので、どの程度の出費となるのか事前に把握しておく必要があるでしょう。
土地のみを相続する場合、共有を極力避ける
土地の相続トラブルの中で、とくに多いと言われているのが「共有名義」が原因となるものです。共有名義とは、1つの不動産について2名以上が名義を持っていることを意味します。
共有名義に関する具体的な規制は、民法で定められています。内容の一部が以下です。
・各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない(民法251条)
変更行為とは、売却や贈与、増改築や大規模修繕、解体や建て替え、分筆や長期賃貸借などのことです。共有者全員の合意なくして、土地や建物の性質を変えるような行為や、法律的に処分する行為を禁じています。
・共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる(民法第252条)
管理行為とは、使用方法の決定や、賃貸借契約の締結、賃料減額、賃貸借契約の解除などです。つまり、土地や不動産の性質を変えない範囲での利用行為です。
共有名義にすると、上記のような法律を守って土地を管理・運営する必要があります。そのため、売却したいのに他の共有者の合意が得られず話が進まなかったり、重要な意思決定をするたびに全員の同意が得られず苦労したりしがちです。
最終的に意見がまとまらずに衝突し、親族同士で裁判に至るケースも珍しくありません。
さらに、土地の管理費用で揉める可能性もあります。固定資産税や都市計画税、土地の手入れにかかる費用などを、誰がどのように負担するか話し合う必要があるでしょう。
このようなトラブルを未然に防ぐには、被相続人による生前対策が肝要です。被相続人が冷静な判断ができる健康状態のうちに、遺言書を通して遺産の分割方法を決めてもらうなど、
早めに準備をしておくことをオススメします。
相続登記を怠ると、後々面倒になる
長い間、土地を相続しても登記(名義変更)は義務ではないとされてきました。しかし、そのために所有者不明の土地が増加し、社会問題となったのです。
所有者不明土地問題研究会の調査によれば、2016年時点での所有者不明土地の面積は約410万haもあったそうです(※2)。九州の土地面積が約367万haですので、九州の面積以上の土地が所有者不明となっています。
このまま所有者不明土地が増え続けると、課税漏れや国土荒廃、土地利用の停滞などの温床となります。
そこで、2021年4月、民事基本法制の見直しがおこなわれ、2024年4月1日から相続登記が義務化される見通しとなりました(※3)。
今後は、登記を怠ると罰金が科される可能性があるので注意しましょう。具体的な改正内容にかんしては、法務省のサイトを確認してください。
※2「所有者不明土地問題研究会」(国土計画協会)
https://www.kok.or.jp/project/fumei.html
※3「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」(法務省)https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
相続した土地を活用するならトチカツプロにご相談ください
これまで土地活用に触れた経験がない方にとって、土地の相続は大きなライフイベントと言えます。活用して収益化したくても、何からどう始めればいいのかわからない方がほとんどでしょう。
実際、土地活用をおこなうには不動産や建築、マーケティングや経営など、幅広い知識やスキルが必要です。中途半端な知識で土地活用に手を出し、失敗してしまう可能性もあります。
たとえば、ハウスメーカーの言われるがままにアパートを建てたものの、空室続きでローンを返済できなくなり、自己破産するなどです。
土地には、それぞれ活用方法に適性があります。しっかりと市場調査をし、長期的にニーズがある事業を立てないと、思わぬ失敗をしてしまうでしょう。
その点、弊社は昭和63年の創業以降、全国各地で土地活用に取り組んできました。賃貸用住居や駐車場はもちろん、医療モールやガソリンスタンド、コンビニ、オフィスビルや宿泊施設など、多様な土地活用を成功させてきた実績があります。
これから土地活用に本格的に取り組むのであれば、きっと多くの場面でお役に立てるでしょう。土地活用に関して何かお困りのことがあれば、ぜひお気軽に近畿住宅流通までお問い合わせください。