「相続した土地を現金化するにはどうすればいいの?」
「土地を現金化するメリットとデメリットを知りたい」
今回はこのような疑問に回答します。
これから土地を相続する方はぜひ参考にしてください。
相続する土地や不動産を現金化するメリット・デメリット
まず、相続した土地や不動産を現金化するメリット・デメリットを解説します。
現金化するメリット
こちらでは、土地や不動産を現金化するメリットを3つ紹介します。
メリット1 遺産の分割がスムーズにできる
土地や不動産は物理的に分割しにくいものです。そのため、相続する遺産の中に土地や不動産があり、かつ複数の相続人がいる場合、誰がそれらを所有するか議論されることがしばしばあります。
しかし、土地や不動産を現金に換えることで、1円単位での分割が可能です。平等かつスムーズな遺産分割が実現しやすいでしょう。
メリット2 まとまった現金が手に入る
土地や不動産を売却して得た現金は、さまざまな活用ができます。生活費はもちろん、株式や債券などの金融商品に充当したり、マイホームやマンション購入の頭金にするのもあるでしょう。
一般的に、給与以外でまとまった現金が手に入る機会はそう多くありません。家族で話し合ったり、ファイナンシャルプランナーに相談したりなど、慎重に使い道を検討することをおすすめします。
メリット3 相続税を支払う経済的余裕ができる
相続する遺産の総額によっては、相続税の支払いが発生するケースがあります。
土地や不動産のまま相続すると、相続人が自身の預貯金を切り崩して支払う必要がありますが、それらを現金化すれば、売却益の中から相続税を支払うことが可能です。
ただし、相続税の支払いは相続発生から10ヶ月以内と決められています。買い手が見つからなかったり、相続人同士のトラブル(調停・裁判など)が長引いたりすると、手持ちの資金から支払うことになるので注意が必要です。
現金化するデメリット
続いて、土地や不動産を現金化するデメリットを3つ紹介します。
デメリット1 相続税が高くなる
土地や不動産の状態で相続するのと、それらを現金化して相続するのとでは、基本的に後者の方が相続税が高くなります。
土地や不動産は、市場価格の約8割が相続税評価額となるのに対し、現金は額面がそのまま相続税評価額となるためです。
つまり、不動産と現金とを比較すると、現金で相続する方が評価額が高くなり、相続税の負担が高まります。そのため、相続税対策をするのであれば、相続前に現金化するのではなく、土地や不動産の相続後に現金化することをおすすめします。
逆に、少しでもスムーズに遺産分割をおこなえるなら、相続税が高くなってもいい人は、相続前に現金化するといいでしょう。
デメリット2 収益化の手段を手放すことになる
相続した土地や不動産で収益を得ていた場合、現金化によって収益化の手段を手放すことになります。
再び収益化を目指すなら、株式や債券、その他金融商品への充当か、あるいは新たに自分で不動産を購入する、新たに事業を始めるなどの手段が考えられるでしょう。
デメリット3 売却のタイミングを見誤ると大きく損をする
基本的に、土地や不動産の価格は経済的要因または社会的要因によって変動し続けています。そのため、売却のタイミングを見誤ると安売りする可能性があり、本来得られていたはずの利益を得られない恐れがあります。
たとえば、相続税を支払うために焦って売却しようとして、買い手に足元を見られ、安く買い叩かれてしまうケースもあるのです。余裕を持って売却するためにも、早めに不動産会社に相談しましょう。
相続する土地を売却して現金化しよう!換価分割の流れ
相続した遺産を売却し、現金化したあとに遺産を相続人同士で分配する方法を「換価分割」と言います。
こちらでは、相続した土地や不動産を換価分割によって現金化し、相続人に財産を分配する流れを7つのステップに分けて解説します。
必要書類の収集・作成
最初に、以下のような必要書類の収集および作成をおこないます。
<被相続人関連の書類>
- 住民票除票(各市町村役場で発行)
- 戸籍謄本(各市町村役場で発行)
- 固定資産税評価証明書(各市町村役場、各市税務署で発行)
- 登記事項証明書(法務局または出張所で発行)
<相続人関連の書類>
- 住民票(各市町村役場で発行)
- 戸籍謄本(各市町村役場で発行)
- 印鑑証明書(各市町村役場で発行)
<その他の書類>
- 登記申請書(法務局または出張所で発行)
- 遺産分割協議書(相続人が作成)
- 相続関係説明図(相続人が作成)
相続人の分類・確定
必要書類の収集・作成と同時に、相続人の分類・確定をおこないます。具体的には、代表となる相続人を選定したり、売却益の分割割合を決めたりします。
また、司法書士や税理士などの専門家への相談が必要か否かも、このタイミングで話し合うと良いでしょう。代表相続人や現金の分割割合が確定したら、各相続人の合意のもと、遺産分割協議書に確定事項を記載します。
相続登記
続いて、相続登記をおこないます。相続税の発生の有無にかかわらず、土地や不動産を相続した者は、相続開始日から3年以内に相続登記(名義変更)をおこなわなければなりません。
2024年4月1日から相続登記の義務化がスタートするため、以降、正当な理由がなく登記申請を怠った場合は過料の対象となるようです。詳しくは法務省が発表している資料を参照してください(※1)。
なお、相続登記の代行業務は司法書士の独占業務のため、外部に委託する場合は司法書士に相談しましょう。
※1「令和3年民法・不動産登記法改正、〜のポイント」(法務省)https://www.moj.go.jp/content/001360808.pdf
業者の選定・買い手探し
相続登記が完了したら、次は土地や不動産を売却するために必要な業者を選定します。
買い手を探してくれる不動産会社の他、遺品整理業者や測量会社、取壊業者が必要な場合はそれらの選定もおこないましょう。不動産会社が決まったら、担当者とともに販売価格を決定し、買い手を探してもらいます。
売買契約
買い手が決定したら、不動産会社を介して売買契約を締結します。契約書を作成する際は、後々のトラブルを防ぐために、瑕疵担保や売主の義務等について念入りに記載しておきましょう。
その後、建物の取壊しや遺品整理、測量など、売主の義務とされている作業を引き渡しまでに完了させます。
引き渡し・決済
売主の義務の履行が完了したら、引き渡しと決済に移ります。具体的には、売り手から買い手へ所有権移転登記の手続きがおこなわれ、買い手から売り手へ売買代金の残代金が支払われます。
なお、決済時に必要となる書類や持ち物は以下のとおりです。
- 実印
- 発行後3ヶ月以内の印鑑証明書
- 写真付きの身分証明書
- 固定資産評価証明書
- 権利証(登記済証)
- 建物の鍵
- 通帳やオンライン端末等、着金を確認可能なもの
- 司法書士への依頼料
- 不動産会社への仲介手数料
さらに引き渡す土地や不動産に抵当権が設定されていた場合、売主は抵当権を抹消した上で、抹消の書類を用意する必要があります。
抵当権の抹消は、ローンを契約した金融機関で申請できますが、一般的には抵当権抹消の書類が用意できるまで、最低2週間以上かかります。決済日が決まり次第、迅速に手続きを進めましょう。
相続人へ支払い
決済が完了したら、相続人全員にその旨を報告します。そして、事前に遺産分割協議で決めた分割割合に従い、現金を分配しましょう。
一般的には法定相続分に応じて分配することが多いですが、各相続人が合意すれば、法定相続分とは異なる割合でも問題はありません。
相続した土地や不動産を現金化する際に生じる税金
こちらでは、相続した土地を現金化する際に発生する税金の紹介をします。
売却するからと言って、必ずしも入ってくるお金だけではありません。現金化に伴う税金の支払いは、土地や不動産の規模によってはそれなりの負担となるため注意が必要です。
- 登録免許税
- 印紙税
- 所得税、住民税
の順番で解説します。
登録免許税
登録免許税とは、土地や不動産の登記手続きをする際に国に納める税金です。相続に伴い、名義変更をする場合は基本的に登録免許税が発生します
一般的な登録免許税の計算方法は、以下の通りです。
登録免許税= 固定資産税評価額 × 0.4%
また、登録免許税には特例として免税措置が適用されることがあります。免税措置に関する詳しい情報は国税庁の資料を参照してください(※2)。
他にも「住宅用家屋」に関しては、一定の要件を満たす場合、軽減税率が適用となります。
こちらについても、詳しくは国税庁のサイトを参照してください(※3)。
※2「登録免許税の免税措置について」(国税庁)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018003-081-01.pdf
※3「登録免許税の税額表」(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
印紙税
土地や不動産の売買契約書は「課税文書」と呼ばれており、印紙を貼付する必要があります。必要な印紙の金額は、契約書に記載されている売買代金によって変わります。
以下が、売買代金ごとの印紙税の金額一覧です。
売買代金 | 印紙税額 |
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1千円 |
100万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
なお、平成9年4月1日から令和6年3月31日までの間に交わされた売買契約書のうち、売買代金が一定額を超えるものに関しては税率の軽減措置があります。詳しくは国税庁のサイトを参照してください(※4)。
※4「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
所得税・住民税
最後に紹介するのが「所得税」と「住民税」です。
土地や不動産を売却して得られる利益は「譲渡所得」とみなされ、通常の所得と同様に所得税と住民税が課せられます。つまり、きちんと確定申告をする必要があるのです。
譲渡所得を求める計算式は以下となります。
譲渡所得=土地や不動産を売った金額-取得費-譲渡費用
取得費は、土地や不動産を購入した当時の費用や、購入の際に仲介業者に支払った手数料、その後の改良・設備投資費用などを合わせた金額のことです。
譲渡費用は、土地や不動産を売却するために支出した費用全般のことです。印紙税や仲介手数料、測量費、取壊し費などが該当します。
また譲渡所得の場合、所得税や住民税の税率は、土地や不動産を所有していた期間によって異なります。以下が所有期間ごとの税率の一覧表です。
所得の種類 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% |
納税額は、譲渡所得に税率を乗じて求められるので、たとえば譲渡所得が1,000万円で所有期間が5年以下だとすれば、税額はそれぞれ、
所得税額=1,000万円 × 30% = 300万円
住民税額=1,000万円 × 9% = 90万円
このように、所有期間が5年以下の場合は税率が極端に高くなります。ただし、こうした所有期間による税率の制約は、あくまで不動産の転売乱立を抑止するためのものです。
そのため、取得した土地や不動産が「相続したもの」である場合、例外として「被相続人の所有期間を引き継ぐ」ことができます。
つまり、被相続人の所有期間が5年を超えていれば、相続後すぐに売却したとしても「短期譲渡所得」とはみなされません。「長期譲渡所得」とみなされるため、所得税率は15%、住民税率は5%で済みます。
土地や不動産を現金化する上での注意点
最後に土地や不動産を現金化する際の注意点を、
- 相続開始から3年を過ぎると、3,000万円の特別控除を受けられなくなる
- 不動産の現金化は時間がかかる
- 土地を現金化する過程で、足並みを乱す相続人が現れる可能性がある
の順番で解説します。
相続開始から3年を過ぎると、3,000万円の特別控除を受けられなくなる
被相続人が居住していた家を売却する際、特定の要件を満たすことで譲渡所得が最高3,000万円まで控除される特例があります。
それが「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。
通常、相続した住宅を売って利益が生じた場合、譲渡所得とみなされるため所得税や住民税がかかります。譲渡所得額は「土地や不動産を売った金額-取得費-譲渡費用」で求められますが、相続税額の一部を取得費に加えられる点がこの特例の特徴です。
取得費が増えれば譲渡所得額が減るので、結果的に所得税や住民税の節税効果があります。
要件は「売却代金が1億円以下であること」「相続開始から3年以内に売却すること」のほか、かなり細かく決められています。詳細は国税庁のサイトを参照してください(※5)。
※5「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
不動産の現金化は時間がかかる
ここまで紹介してきたように、土地や不動産は相続が発生してから売却するまでに、いくつかの手順を踏む必要があります。
まずは相続登記をして名義変更をする必要があるため、相続人が複数いる場合は早めに遺産分割協議を開き、代表相続人を決めた方がいいでしょう。
相続登記が完了したら、不動産会社に売買の仲介を依頼します。売却したい土地や不動産の調査、販売価格の決定、買主の募集、契約前の交渉、契約・引き渡しなど、トータルで要する時間は決して短くありません。
あくまで目安ですが、不動産会社に依頼してから売却が完了するまで、少なくとも3ヶ月〜半年ほどはかかると思っておいた方がいいでしょう。相続後、すぐに現金化できるわけではないので注意が必要です。
土地を現金化する過程で、足並みを乱す相続人が現れる可能性がある
相続人が複数いる場合、土地や不動産を現金化する過程で、売却に意義を唱える者が現れるケースがあります。このような人物に対する対応は、遺産分割協議で合意を得ているか否かによって変わります。
まず遺産分割協議で合意を得る前に反対する者が現れた場合、基本的に売却はできません。民法251条で、法定相続人全員の合意がないと売却できないとされているためです。
どうしても売却したい場合は、なんとかして反対する相続人の合意を得るしかありません。
反対する理由、抱えている問題などを聞き、「売却しない」以外の解決策を提示する必要があるでしょう。いずれにしても売却するには、遺産分割協議に参加してもらい、合意を得る必要があります。
一方で、遺産分割協議後に売却に反対する者が現れた場合、すでに土地や不動産の名義変更が完了しているのなら、気にせずに売却作業を進めることが可能です。
新しい名義の所有者に売却をする権利があり、反対者も一度は合意しているため、法的に何の問題もありません。
ポイントは、足並みを乱す相続人が現れる可能性を、はじめから念頭に置いておくことです。遺産分割協議で相続人全員の合意を取り、きちんと書面に残しておきさえすれば、基本的にはスムーズに売却を進められるでしょう。
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