「土地活用に興味があるけど、何から始めたらいいのかわからない」
「相続した土地で事業をしたいが、進め方がわからない」
そんな方のために、こちらの記事では土地活用の基本的な知識や進め方について解説します。
他にも、初期費用を抑える活用方法や、土地の広さに応じた活用アイデアも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
土地活用の基本
こちらでは、土地活用の基本的な考え方について解説します。
土地活用は、目的や方法によってメリット・デメリットが異なるため、まだ活用の方向性が決まっていない場合はチェックしてみてください。
土地活用の基本的な知識
土地活用とは、使っていない土地や建物を活用することで、利益を生むことです。
たとえば、アパート・マンションや駐車場などの賃貸業、店舗経営やオフィスビル経営、モール施設の経営など、さまざまなスタイルがあります。
ただし、希望する土地活用の方法と、所有している土地との相性が必ずしも合うとは限りません。土地の性質、周辺地域の特性などを考慮して、適切な活用方法を選ばなければ、成功させるのはなかなか難しいでしょう。
また、土地活用は立派な事業ですので、経営者としての素養も大事になってきます。少なくとも、
- どの程度の初期投資をするのか
- 初期投資分をどれくらいの期間で回収するのか
- どういう出口戦略を組むのか
こういった事業計画を論理的に立てられる必要があるのです。
これから土地活用を始めるのならば、不動産や経営に関する知識はもちろん、関連する税制度への理解など、幅広い教養を身につけておくといいでしょう。
土地活用のメリットとデメリット
土地活用は事業ですので、メリットもデメリットも存在します。
ただし、目的や活用方法次第でメリットやデメリットは変わるため、大まかに4つの活用方法に分けて紹介していきます。
土地活用のメリット・デメリット一覧 | |||
目的 | 活用方法 | メリット | デメリット |
資金の獲得 | 売却 | ・目先の資金を獲得できる ・納税や修繕・管理費などの維持費がかからなくなる |
持っている土地を失う |
長期的な収益 | 等価交換(土地の提供と引き換えに不動産会社が建物の建築費を負担) | 建築費をかけずに建物の一部を取得できる | ・実質的に土地の所有権を失う ・自己負担で建てるより利回りが低くなる |
長期的な収益 節税対策 |
アパート・マンション経営 | ・家賃収入 ・所得税や相続税、固定資産税の節税対策 |
・建築費は自己負担 ・空室リスクを抱える |
長期的な収益 | 土地貸し | 賃料収入 | 収益性は低い傾向あり |
土地活用の流れと進め方
こちらでは、土地活用の大まかな流れと進め方について解説します。すでに土地を所有していて、何らかの建物を建築する場合を想定していますので、参考にしてみてください。
⑴目的を決め、業者へ相談する
まずは、土地活用をする目的を明確にします。その上で、馴染みの不動産会社や土地活用の専門業者に相談しましょう。
この時、できれば複数社に打診することをオススメします。相談先次第で提案内容が変わることもありますし、数社の提案を比較しないことには、価格の妥当性を判断しにくいためです。
⑵市場リサーチ
正式に依頼する業者が決まり、土地活用の方針が固まったら、次にその土地でどのような活用ができるのかを調査します。独自でおこなうのは負担が大きいため、依頼先の担当者か関連業者に協力してもらうといいでしょう。
立地上の長所や短所、周辺地域の競合、法的な規制などを徹底的にリサーチします。このリサーチの過程で、ある程度は活用方法が絞れてくるはずです。
⑶具体的な活用プランの構築
市場リサーチで得た情報をもとに、業者の協力を得ながら活用プランを構築します。ここまでくれば、建築費や電気・水道などの設備工事、各種税金の支払いなど、必要な費用を把握できるので、おおよその資金計画も立てられるでしょう。
金融機関からのローンを活用する場合は、いくらの融資を受けて、月々いくら返済していくのか、また月々の利益はどれくらい出るのかなど、収支のシミュレーションもおこなっていきます。
⑷施工会社との契約
建物を建てる施工会社を選び、契約をします。大手メーカーと契約する場合は、関連業社を紹介してもらえることもあります。
⑸建築工事
工事が始まれば、とくに現場でオーナーがおこなう作業はないため、早めに入居者の募集をしておきましょう。
⑹建物の完成
建物の完成後、引き渡しがなされます。その後の建物の管理に関しては、オーナー自身がおこなってもいいですし、管理会社に管理業務を委託するのも手です。
以上が、大まかな土地活用の流れとなります。
オススメの土地活用のアイデア
続いて、土地活用のアイデアについて解説します。
- 「初期費用をなるべく抑えたい」
- 「狭い土地でもできる活用方法はないか?」
- 「広い土地だと、どんな活用がオススメ?」
このような疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。
初期費用が少なく始められる土地活用アイデア
極力初期費用をかけずに土地活用をはじめたい方向けに、今回は3つの活用方法を紹介します。
⑴土地貸し
土地貸しは、空き地を貸すことで賃料を得るシンプルな活用方法です。用途は借主次第ですが、基本的には土地を貸すだけですので、建物を建てる場合は借主負担で建てることになります。
原則として、オーナー側が何か初期費用を負担することはありません。ただし、借主を不動産会社に仲介してもらった場合は、仲介料が発生する可能性があるので注意してください。貸し方は大きく2つで、「普通借地」と「定期借地」とがあります。違いとしては、貸し出し期間が明確に決められているか否かです。
普通借地は期間が決められておらず、借主が解約を申し出ない限り、半永久的に貸し続けることになります。長い間土地を自由にできない上、いつ土地が返還されるかもわからないため、リスクは少々高めの契約形式と言えるでしょう。
その点、定期借地の場合は契約時に貸し出し期間を決めることになります。期間満了時には、更地の状態で、確実に土地が返還されるのです。
そのため、一般的には定期借地の形をとるオーナーが多い傾向にあります。
⑵土地信託
続いては「土地信託」です。
土地信託とは、土地を信託銀行や信託会社に預けて(信託して)、信託先がオーナーの代わりに事業を行うという方法になります。
信託先の企業が事業によって得た利益から、信託報酬や諸々の利益が差し引かれ、その残りが信託配当金としてオーナーに支払われる仕組みです。土地を信託する期間も契約時に設定するため、土地は確実に返還されます。
初期費用の負担もない上、事業計画を立てたり、施工業者とのやりとりも不要だったりするので、土地活用の方法の中ではかなりハードルが低いと言えるでしょう。ただし、自分自身で事業活動を行うよりも、収益性は下がってしまいます。
⑶自動販売機
最後に紹介するのは「自動販売機」です。
「狭い土地でも有効活用できる」という点が注目されがちですが、実は自動販売機の運営は、初期費用をかけずに始められるのも魅力なのです。
基本的には、販売機の設置スペースを飲料メーカーに貸すだけなので、オーナー側の負担としては販売機の電気代くらいで、管理作業も基本的に発生しません。電気代は1代につき月2,000円〜3,000円程度です。
一般的な販売機なら、横幅が87~118.1cm、奥行きが67~74.6cmほどあれば設置できます。報酬の支払い形態は、主に以下の3種類です。
・固定タイプ
毎月固定の金額が報酬として支払われます。
・売上連動タイプ
売上全体に対して報酬割合が決められるため、月々の売上に応じて報酬額が変わります。
・混合タイプ
こちらは固定タイプと売上連動タイプとの混合タイプです。月々固定の報酬にくわえて、売上に応じた報酬がプラスされます。
注意点としては、メーカー側が必ずしも契約に応じてくれるわけではないという点です。すでに近隣に同様のメーカーの自販機があったり、あまり収益が見込めないと判断されたりすると、契約に至らないこともあります。(※1)
※1:「自動販売機の設置から運営まで」(株式会社伊藤園)https://www.itoen.co.jp/company/vender/installation/
土地の大きさで変わる土地活用のアイデア
土地活用は、土地の大きさによって向き不向きがあります。
そこで、こちらでは狭い土地と広い土地とに分けて、それぞれオススメの活用アイデアを解説していきます。
⑴狭い土地の活用アイデア 〜看板の設置による広告業〜
敷地が狭くても、一目につく交通量の多い立地であれば、看板を設置することで「広告業」を始めることが可能です。
自身で看板を設置して広告主を募ったり、看板を設置したい企業を募集したりして、広告費を得るというビジネスモデルです。看板のサイズにもよりますが、初期投資は数万円程度からはじめられます。ただし、この活用方法は、看板の宣伝効果があってはじめて成立する方法ですので、ハードルは少し高めかもしれません。
⑵狭い土地の活用アイデア 〜移動販売用の販売スペース〜
「看板の設置」と同様に、ある程度人通りが多いスペースであれば、「移動販売車用の販売スペース」として貸し出すことが可能です。
とくに、オフィス街に位置する土地や大学近郊の土地であれば、ランチの需要も見込めるため、集客力をアピールしやすいでしょう。
⑶狭い土地の活用アイデア 〜レンタルサイクル〜
「レンタルサイクル」とは、シェア用のレンタル自転車を貸し出すサービスで、ここ数年シェアを伸ばし続けています。
サービスを運営している会社があり、オーナーはそういった会社と提携して土地を貸し出して賃料を得るのです。原則として工事や設置作業は不要で、自転車や看板を設置するだけで始められます。オーナー側は初期費用がかからず、24時間365日対応してくれるコールセンターを設けているところもあり、管理面での負担もありません。
たとえば、東京や京都でサービスを展開する「PiPPA(ピッパ)」では、月々の売上ごとに、決まった比率で収益が分配される仕組みになっています。詳しくはサイトを確認してみてください。
参考:「PiPPA オーナー募集」(株式会社オーシャンブルースマート)
https://pippa.co.jp/owner/
⑷広い土地の活用アイデア 〜駐車場〜
広い土地を活かした活用であれば、賃貸アパート・マンションが主流ですが、初期費用を抑えるなら、「駐車場経営」がオススメでしょう。
駐車場経営には、主に月極駐車場とコインパーキングの二種類があります。どちらが向いているかは、立地によって変わってきます。
たとえば、オフィスビルや飲食店の周辺に土地があり、駐車場が不足している状況なら、コインパーキングが向いているでしょう。不定期で車移動する人々のニーズに、応えられる可能性があるからです。
また、駐車場を設けていない賃貸住宅が多い地域では、月極駐車場が向いていると言えます。車通勤をする人にとっては、コインパーキングのような時間貸しよりも、月極のほうが使い勝手がよく、安く利用できて懐にも優しいでしょう。月極駐車場の場合、よほど土地の状態が悪くなければ整備の必要もないため、すぐに始められます。ただし、自力で集客するには地道な営業活動が必要です。
コインパーキングの場合は、精算機やバーゲートなどの機材のレンタル費用や設置費用、また管理会社への管理費用など、月極駐車場より初期費用は多くなります。しかし、時間貸しのシステムなので、回転率が高まるほど売上は伸びます。集客次第では月極駐車場より大きな収益を狙えるでしょう。
⑸広い土地の活用アイデア 〜トランクルーム〜
都会ではない場所に広い土地をもっているのなら、「トランクルーム経営」を検討してみてもいいでしょう。都会のように土地価格の高いところでは利回りが低くなりがちですが、郊外や田舎のように比較的土地価格の低いところなであれば、まだ見込みがあります。
具体的には、貨物の保管用としてコンテナを貸し出し、その利用料を得るというビジネスモデルです。アパート・マンション経営の場合は、数千万円から数億円の初期投資が必要ですが、トランクルーム経営は数百万円から事業をスタートできます。
管理面で発生する業務は簡単な清掃作業くらいなので、オーナーの負担はそこまで大きいものではありません。しかし、自営の場合は集客や防犯対策が課題となるでしょう。自身で集客や防犯対策をするのが難しい場合は、利益率は下がりますが、不動産会社へ集客を依頼したり、セキュリティ会社に警備の依頼したりなどの対策が必要です。
⑹広い土地の活用アイデア 〜太陽光発電〜
広くて太陽光を遮断するようなものが周りにない土地であれば、「太陽光発電」を始めることも可能です。
発電システムを設置することで、備蓄した電力を売却し、利益を得るのです。
「FIT制度」という国が定めた制度があり、太陽光発電などの再生可能なエネルギーで蓄えた電気を、一定期間、電力会社が固定価格で買い取ってくれます。また、産業用の太陽光発電は電力10kw以上が基準なので、100㎡~150㎡以上の設置スペースがあれば設置ができます。
ただし、個人か企業かにかかわらず、設備の定期点検をすることが法律で義務付けられているので注意してください(詳しくは参考サイトをご確認ください)。
初期費用は発電する電力の規模によって変わります。以下がその一覧です。(※2.3)
小規模産業用太陽光発電 | 産業用太陽光発電 | 大規模産業用太陽光発電 | |
電力 | 10kW~20kW程度 | 20kW~40kW程度 | 50kW以上 |
設置費用 | 450万円前後 | 750万円前後 | 1600万円前後 |
※2:「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」(経済産業省)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/legal/guideline_sun.pdf
※3:「産業用太陽光発電の費用は?できるだけ安く設置する方法を解説」(タイナビNEXT)
https://www.tainavi-next.com/library/387/
オススメの土地活用の相談先
最後に、これから土地活用をおこなう上でオススメの相談先を紹介します。状況別に解説しますので、参考にしてみてください。
活用について何も決まっていない状況
活用方法についてまだ何も決まっていないなら、まずは土地活用自体が必要かどうかを検討してみましょう。
すでに土地活用をおこなっている人に経験談を聞いたり、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談したりして、本当に土地活用をしたほうがいいのか吟味してみてください。FPであれば、現在の収支や資産状況、今後のライフプランニングなどを考慮した助言をしてくれるはずです。
専門家に相談した上で、それでも土地活用をするということであれば、金融機関を訪問し、融資について相談してみてください。融資の可能枠や見込みの回収期間などを把握するだけでも、活用方法の選択肢を多少は絞れるでしょう。
活用方法の方向性が決まっている状況
すでに活用方法の方向性が定まっているのなら、不動産業者や建築業者、土地活用のコンサルタント業者に相談してみましょう。どのような建物を建てたほうがいいのか、どれくらいの建築費用がかかるのかなど、より現実的な情報をもとに事業計画を立てることができます。
土地活用の専門業者は、得意分野ごとに細分化している傾向があるため、あらかじめホームページを確認するなどして、適性をチェックしてから相談してください。
建物の具体的なイメージがある状況
すでに事業計画をしっかり立てていて、収支のシミュレーションも十分にしており、「こういう建物を建てたい」というイメージがあるのなら、工務店や設計事務所に直接相談してみてもいいでしょう。
イメージしている建物の建築が実現可能かどうかを含め、大まかな費用感を把握できるはずです。
まとめ
一言に土地活用といっても、どのような活用方法を選択するかによって、進め方は微妙に異なってきます。メリットやデメリットはもちろん、相談先も変わってくるでしょう。土地活用はリターンが大きい分、抱えるリスクも大きくなります。そのリスクを背負ってでも、それ以上のリターンを得られるような事業計画を立て、長期間にわたって土地を運用し続ける必要があるのです。
近畿住宅流通は30年以上にわたり、全国各地で土地活用に取り組んできた土地活用のプロフェッショナルです。もし今回の記事を読んで、「もっと詳しく話を聞いたみたい」「土地活用について本格的に相談したい」方は、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。