「地盤調査の結果、改良工事が必要と言われたが、本当に必要?」
「改良工事が必要か否かの基準って何?」
こちらの記事ではこのような疑問に回答します。これから地盤調査を依頼する方はぜひ参考にしてください。
地盤改良が必要な時の地盤調査の結果
地盤の改良工事が必要か否か、一般の方が判断するのは容易ではありません。そこで、こちらでは地盤調査の結果報告書の見方や、改良工事が必要な土地の傾向について解説します。
地盤調査の結果報告書の見方
地盤調査の結果報告書は、一般の方にとっては見慣れない専門用語が多く、非常にわかりにくいです。
報告資料を見ただけでは、改良工事の必要性を判断するのは難しいでしょう。しかし、専門業者でなくともそれを判断する1つの目安があります。それが「自沈層」です。
自沈層とは、「スクリューロッド」という地盤調査に用いる棒状の機器が、回転せずに重さだけで沈んでしまうような軟弱な地層を言います。具体的には、報告書に「ストン」という擬音の記載があれば、自沈層の可能性があるでしょう。
ただし、自沈層はあくまで指標の1つでしかありません。地下水位や盛り土(もりど)の有無が調査結果に影響するケースもありますので、実際に改良工事が必要か否かは、専門家のアドバイスのもとで判断しましょう。
地盤改良が必要な土地の傾向
改良工事が必要かどうかは、土地の傾向からも判断できることがあります。
たとえば、「地耐力」が低い場合です。地耐力とは、地盤が建物の荷重にどの程度耐えられるのか、また地盤沈下に対する抵抗力がどの程度あるのかを示す指標を言います。
具体的には、地耐力が20〜30KN/㎡(キロニュートン/圧力の単位)以下の場合、軟弱な地盤と判断されやすいです。
また、盛り土で造成された土地や埋立地、過去に陥没が発生した土地、不同沈下や液状化の可能性がある土地も、改良を必要とするケースが多いです。古くから田んぼや川、池、沼など、水場だったエリアはとくにその傾向が強いと言えます。
所有している土地の歴史を詳しく知りたい方は、国土地理院が発行する国土変遷アーカイブを確認してください(※1)。
※1:「国土変遷アーカイブ」(国土地理院)https://www.gsi.go.jp/tizu-kutyu.html
地盤改良工事とは
こちらでは、地盤改良工事の仕組みと工事の種類を解説します。
地盤改良工事の概要
建物を建てるには、地盤上に基礎をつくる必要があります。
基礎には「直接基礎」と「杭基礎(くいきそ)」の2つがあり、直接基礎をつくれないような軟弱な地盤の場合、改良工事が必要です。
直接基礎とは、支持層が浅い良好な地盤の上に基礎を直接つくり、荷重を広範囲に分散させる形式の基礎です。木造戸建住宅のように比較的自重の負担が軽い、低層の建物の建設に用いられます。
一方で杭基礎は、支持層が深いところにある地盤に杭を差し込み、建物を支える形式の基礎です。大きめのマンションやオフィスビルなど、自重の負担が重い建物の建設に用いられます。
大型の建物は、基本的にはじめから杭基礎で建てることが前提であるため、地盤改良工事はおこなわれません。
地盤改良工事の種類
続いて、代表的な改良工事の工法を3つ紹介します。
・表層改良工法
表層改良工法は、土を1〜2mほど掘った部分にセメント系固化剤を混ぜ合わせることで、
地盤を強化する工法です。工期は1〜2日程度と比較的短めです。
適用可能な地盤としては、原則として砂質土地盤となります。勾配が急な土地や、地下水位が地盤改良面より高い状態の土地、地下水が不安定な土地、地盤の下部に空洞が存在する土地は、適用外となる可能性があるでしょう。
費用相場は床面積20坪あたり約50万円と言われており、今回紹介する工法の中では安い部類に入ります。特徴として、地中に大きな石やコンクリートが混入している場合も、基本的に工事が可能です。
・柱状(ちゅうじょう)改良工法
表層改良工法をおこなうのが困難な場合、もちいられるのが柱状改良工法です。対象となる土地の特徴は、地下2〜8mほどの深さまでは地盤が軟弱で、その下に硬い地盤があるような土地です。
手順としては、地盤に円柱状の穴を開け、セメント系固化剤を攪拌(かくはん)しながら改良杭を形成します。穴の深さは2m〜8mほどで、戸建住宅の場合は4mほどの深さが必要と言われています。地震の際は、複数の柱と土とが摩擦を起こし、柱と土が一体化して揺れを防ぐ仕組みです。
柱状改良工法は、戸建住宅だけでなく、マンションやビルなどの大きめの建物にも多く用いられます。大型の建物の場合、柱を支持層まで打ち込み、より強固な地盤を形成します。
例として、床面積が20坪ほどの土地に戸建住宅を建てる場合、一般的に柱は50本以上必要です。打ち込む柱の本数によって工期は異なりますが、短くても2〜3日はかかるでしょう。
戸建住宅の場合の費用相場は100万円ほどですが、柱を打ち込む深さによってはさらに金額が高くなります。表層改良工法よりはコストがかかりますが、3つの工法の中では比較的リーズナブルな部類に入るため、多くの現場で採用されています。
また、地盤が軟弱な土地でも対応できる点はメリットと言えるでしょう。ただし、産業廃棄物などの有機質で形成された土地は、セメントが固まりにくいため不向きです。
一度施工をすると、地盤の現状復帰が困難である点もリスクと言えます。将来的に土地を売る場合、地価が下落する可能性があるでしょう。
・小口径鋼管杭工法(しょうこうけいこうかんぐいこうほう)
小口径鋼管杭工法は、軟弱な地盤が分厚いために柱状改良工法が施せない場合に、用いられる工法です。
手順は、基本的に柱状改良工法と似ています。異なるのは、柱の材料がセメント系固化剤ではなく「鋼管」である点です。
3つの工法の中では最も地盤強度が高く、3階建以上の階数がある建物に向いています。小さい重機で効率的に作業ができるため、工期は基本的に1〜2日程度しかかかりません。
ただし、この工法をおこなうには地盤に「支持層」という頑丈な土があるのが条件です。また注意点として、施工は激しい騒音や振動を伴うため、事前に近隣住民の方へ挨拶をしておく必要があるでしょう。
費用相場は、戸建住宅で150万円ほどかかると言われています。材料である鋼管はセメントよりコストが高くつくため、3つの工法の中では費用が高いでしょう。
・その他の工法
補足として、いくつか工法を紹介します。
・サクラコラム工法
セメント系固化剤を液状にして吐出しつつ、地盤を掘削攪拌し、柱状の改良体をつくる工法です。任意の深さのポイントで、軸部より直径の大きな核径部を製造できます。
・IGウォール工法
土とセメント系固化剤を混ぜた改良体を基礎の下に井状に配置し、地盤の支持力を高める工法です。表層改良工法と比べ、残土を低減できると言われています。
・DM(ダブルメタル)工法
鋼管の先端に、鋼管径の3倍ほどの螺旋翼(らせんよく)をつけることで、鋼管を補強する工法です。螺旋翼は国土交通省の認定を受けた工場で製造されており、品質管理責任者が常駐していているため、高い品質を期待できます。
・GRRシート工法
基礎の下に砕石転圧層をつくり、層の中に特殊なシートを敷くことで、剛性を補強し、支持力を高める効果があります。将来的な撤去が容易であり、環境への負荷が少ないと言われています。
地盤改良のメリットデメリット
こちらでは、先述の3つの工法のメリットとデメリットを紹介します。
地盤改良のメリット
<表層改良工法>
- 軟弱地盤が浅い場合、コストを抑えやすい
- 狭小地でも対応可能
- コンクリートや大きな石が混じった地盤でも施工できる
- 小型の重機で効率的に施工できる
- 地すべり防止に有効
- 液状化対策として有効
- 作業効率が高めで工期が短い
<柱状改良工法>
- 柱を打ち込むため、地盤強度を長期間維持しやすい
- 不同沈下の対策ができる
- 鋼管杭工法と比べ、施工時の騒音が控えめである
- 基礎地盤の支持力向上につながる
<小口径鋼管杭工法>
- 短期間で工事が完了する
- 小型の重機で効率的に施工できる
- 自重の負担が重い建物でもしっかり支えられる
- 地盤の強度が高い
- 土地の資産価値が下がりにくい
- 排土がほとんど発生しないため、残土処分をしなくて済む
- 非セメント系の工法であり、六価クロム(発がん性物資)が発生する心配がない
地盤改良のデメリット
<表層改良工法>
- 高い専門技術を必要とするため、業者の能力次第で仕上がりに差が出やすい
- 地下水位が地盤改良面より高いと、施工ができない
- 勾配が急な地盤だと、施工が困難
- 六価クロム(発がん性物資)が発生する可能性がある
<柱状改良工法>
- 一度施工をすると、将来的な原状復帰が困難
- 5%以上の有機質を含む土地では施工が困難
- 六価クロム(発がん性物資)が発生する可能性がある
<小口径鋼管杭工法>
- 支持層がない場合、施工が不可能
- 他の工法と比べ、コストが高めである
- 施工時に騒音や振動が発生しやすい
地盤改良を進める際の注意点
最後に、地盤改良を進める上で押さえておきたい注意点を3つ紹介します。
過剰な工事内容を提案される可能性がある
地盤調査をおこなう業者の中には、本来は改良工事が必要ないにもかかわらず、必要であると判断する業者もあります。
原因として考えられるのは主に2つです。1つめは、慎重を期して安全性の確保をしたいからという理由です。調査方法の中には、解析基準がいまだに確立されていないものもあり、安全確保のために過剰な工事内容を提案することがあります。
もう1つは、利益の享受が目的であるケースです。自社で工事を請け負ったり、改良工事業者からの紹介料を受け取ったりするために、工事を提案する可能性もゼロではありません。
もし、調査会社からの提案に疑問を覚えた場合は、セカンドオピニオンを活用するといいでしょう。たとえば、地盤調査を専門とするビイック株式会社では、地盤調査結果に関するセカンドオピニオンサービスがおこなわれています(※2)。
こういったサービスを利用し、改良工事が不要となるケースもあるようです。
※2「地盤調査のセカンドオピニオン」(ビイック株式会社)
地盤改良業者を選ぶポイント
まず押さえたいのは、地盤改良工事をおこなう業者選びのポイントです。以下の5つのポイントを参考にしてください。
・採用する工法のメリットとデメリットを説明しているか
ここまで見たきたように、改良工事の工法にはそれぞれメリットもデメリットもあります。
とくにデメリットは、強度面、費用面、騒音面など、何かしらのリスクがあるはずですので、しっかり説明してくれる業者を選びましょう。
・費用の内訳を正確に開示しているか
費用の見積もりは、合計金額を鵜呑みにせず、きちんと内訳を把握しましょう。中には「営業経費」などの一式表示形式で説明する業者もいます。材料費や人件費、重機の費用など、細かな内訳を説明してくれる業者が理想と言えるでしょう。
ちなみにハウスメーカーの中には、住宅の建設費用を値引きした分、改良工事費用に利益を上乗せして補填する業者もあるようです。明らかに費用が高いと思われる場合は、他の業者と相見積もりをとりましょう。
・地盤保証はついているか
地盤保証とは、改良工事をおこなう施工業者が加入する保証制度です。施工業者が地盤保証に加入していると、地盤の瑕疵があった場合、施主は10年間無償で補修対応を受けられます。
たとえば、不同沈下によって発生した建物の補修工事、仮住宅の宿泊費用、身体などにかかる賠償費用などです。保証内容や費用は保証機関によって違うため、施工業者がどこの保証機関に登録しているか、またどのような保証内容なのかを事前に確認しておきましょう。
・六価クロムへの発生や対策を説明しているか
六価クロムとは、表層改良工法や柱状改良工法で、セメント系固化剤を使用する際に発生する可能性がある発がん性物質です。公共工事では、そのような材料を使用する際、六価クロムの発生状況を調査する法的な義務があります。
しかし、民間の地盤改良工事では義務ではないため、基本的に調査はおこなわれないことが多いです。そのため、六価クロムの発生リスクや対策をきちんと説明してくれる業者は、信頼性をはかる1つの指標と言えるでしょう。
・液状化への対策や補強をおこなっているか
砂質地盤のエリアでは、液状化が発生する可能性があります。液状化とは、地震が起きた際、振動によって地盤が液体状になることです。
液状化が起こると、建物が埋もれたり、倒れたりする可能性があり非常に危険です。そのため、きちんと液状化対策や補強をおこなっている業者を選びましょう。
地盤改良工事で将来的に地価が下がる可能性がある
地盤改良工事の大きなデメリットとして、地価が大幅に下がる可能性があります。
「地盤を強化したのだから、良い評価を受けるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、杭や鋼管などの埋没物は産業廃棄物とみなされるため、そのままの状態だとネガティブな評価を受けます。
放置した状態では圧倒的に売却に不利となります。
つまり、将来的に土地を売却するのであれば、きちんと埋没物を撤去する必要があるのです。また、セメント系固化剤によって土壌が汚染されていた場合、さらに浄化費用が発生する可能性もあります。
撤去費用は少なく見積もっても数百万円はかかりますので、地盤改良工事の工法を選ぶ際は、くれぐれも慎重におこないましょう。
必ず地盤改良工事の報告書をもらう
改良工事が完了したら、必ず施工報告書を発行してもらいましょう。施工報告書には工事内容が記録されているため、後々瑕疵が発生した際、適切な改良工事がおこなわれたかを確認できます。
ただし、改良工事の報告書は、一般の方が理解するには少々難解な内容です。可能であれば、建築事務所や設計士など、専門知識がある人に解説してもらいましょう。
地盤改良しないと売れない土地もある?
土地を売買する際、売主には「契約不適合責任」があります。
契約不適合責任とは、かつて「瑕疵担保責任」と呼ばれていたもので、売買成立後に契約内容と一致しない引き渡しであったことが発覚した際、その責任を売主が負うものです。
これまで、瑕疵がある土地の売却に伴う地盤調査や改良工事の費用は、買主が負担することが一般的でした。
しかし、近年は「買主ではなく売主が費用を負担するべき」という判例も出ており、少しずつ売主と買主との関係性が変わってきています。
そのため、事前に説明した範囲を超える瑕疵が見つかった場合、結局売主が責任を問われ、地盤改良をしなければならなくなる可能性もあります。
瑕疵の可能性がある土地を売却する際は、できれば調査だけでもしておいた方がいいでしょう。
土地活用でお悩みの方は近畿住宅流通へ
建物への負荷は、自重による荷重だけではありません。地震や強風による負荷も、基礎を通して地盤に伝わります。
建物、基礎、地盤、これらの3つは安全に土地活用をおこなう上で、切っても切れない関係と言えるでしょう。だからこそ、地盤調査はもとより、必要に応じて改良工事をきちんとおこなうことが肝要です。
ただし、今回紹介したように、地盤改良工事には相応のコストがかかります。そもそも地盤が強硬であれば、改良工事をおこなう必要はないですし、余計なコストも発生しません。そういう意味では、土地選びの段階ですでに勝負は始まっていると言えるでしょう。
「土地活用を始めてみたいが、どこの土地がいいのか?」
「いま所有している土地を、どのように活用するのがベストなのか?」
土地活用に関してこのようなお悩みがありましたら、お気軽に近畿住宅流通までお問い合わせください。