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工場は特殊建築物?特定建築物とは何が違う?定義や違いを解説

「特殊建築物という言葉はきいたことがあるけど、詳しくは理解できていない」
「工場は特殊建築物なの?そうであれば、何か申請や手続きは必要なの?」

今回の記事では、このような疑問に答えていきたいと思います。

今現在工場を所有していて、特殊建築物に関する理解を深めたい方、工場の用途変更をする前に特殊建築物についてもっと知っておきたいという方は、ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。

目次

特殊建築物とは何か?工場は特殊建築物なのか?

まずは特殊建築物の定義について解説します。

法的な解釈のみであれば、定義は非常にシンプルなのですが、具体的にどのような建物が特殊建築物に該当するのか、またオーナーにはどのような対応が求められるのかは、状況によって異なるので注意してください。

特殊建築物とは

特殊建築物とは

特殊建築物とは、建築基準法の2条1項二号に出てくる言葉で、主に用途が特殊な建築物のことを言います。以下がその一覧です。

学校、体育館、病院、劇場、集会場、観覧場、市場、百貨店、ダンスホール、展示場、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、倉庫、工場、自動車車庫、危険物の貯蔵場、火葬場、畜場、汚物処理場、その他これらに類する用途に供する建築物

つまり、特殊建築物とは、

  • 不特定多数の人、あるいは多数の人が利用する
  • 火災が発生する可能性が高く、火災発生時には甚大な被害が生じる可能性がある
  • 衛生環境を保全する必要がある

以上のような建物のことです。

さらに、とくに延べ床面積が200㎡以上であり、防火面や衛生面での対策が重視されている特殊建築物に関しては、建設前に各自治体への「確認申請」が必要となります。

確認申請では、建築物の構造や設備、立地条件について、きちんと規定を遵守しているか、防火基準を満たしているかなど、厳正なチェックを受けることになっているのです。

確認申請が必要な建物については、同法6条1項の別表1において以下の建物が明記されています(細かな該当条件については参考サイトを確認してください)。

劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場、病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、学校、体育館、百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、倉庫、自動車車庫、自動車修理工場

一般的には、上記のような確認申請が必要な建物を「特殊建築物」と言うことが多いです。

つまり、経済活性化と人命保護との両方の観点から、大規模かつ不特定多数の人間が利用する建物に関しては、「特殊建築物」として区分し、建築基準を定めているのです。

ちなみに、平成28年6月に建築基準法が改正されたことで、原則として特殊建築物を所有するオーナーには、安全面を配慮した定期的な調査・報告が求められています。(※1)(※2)

※1:「昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/common/000171870.pdf

※2:「建築基準法の一部を改正する法律」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000071.html

「工場=特殊建築物」なのか?

まず、一般的に工場は「特殊建築物ではない」という共通認識になっています(自動車修理工場は例外です)。

建築基準法2条1項二号では、「工場」も特殊建築物という扱いになっていますが、一方で、6条1項の別表1には「工場」の記載がありません。そのため、特殊建築物としての確認申請作業は原則として必要ないのです。

しかし、自治体によっては別表1以外の建物が特殊建築物扱いとなることもあります。たとえば三重県では、「工場も特殊建築物として扱う」ことが条例で定められています。

つまり、法的な見方では「工場=特殊建築物」という位置付けですが、確認申請や定期調査・報告の有無は自治体次第となります。

特殊建築物かどうかを知るには?

何が特殊建築物で、何が特殊建築物ではないのか、具体的な判別をするには以下の資料を活用すると便利です。

株式会社確認サービス「建築物の主要用途一覧」

しかし、工場に関しては自治体の条例によって扱いが異なるため、やはり各自治体に確認するのがいいでしょう。

特殊建築物と特定建築物との違い

特殊建築物を語る上で、「特定建築物」は避けて通れないテーマと言えるでしょう。

この2つは線引きが曖昧であり、間違いやすいポイントでもあるので、しっかりとおさえておきましょう。

特定建築物とは

特定建築物とは

「特定建築物」とは、火災被害の防止や衛生面の環境保全などを目的とし、延べ床面積が3000㎡以上の建物に対して建築上の規制を設けたり、定期的な調査・報告を求めたりする際に用いられる言葉です。

特定建築物について、明確に定義することが難しい理由が2点あります。

1点目は、適用される法律によって定義が微妙に異なるからです。

例えば、「建築基準法」「建築物衛生法」「バリアフリー法」「ビル管理法」など、各法律によって特定建築物の意味合いは微妙に変わってきます。

2点目は、特殊建築物との関係性を加味した時、定義がより複雑になるということです。

単純に法的な解釈のみであれば、「特殊建築物は建築基準法2条1項二号に掲げる建築物」、「特定建築物は建築基準法6条1項一号の建築物および令16条の建築物(令14条の2の建築物を含む)」という定義になります。

しかし、実際の分類はもう少し複雑です。わかりやすく図にまとめたので、参考にしてみてください。

特定建築物とは

特殊建築物と特定建築物との関係性を細かく分類すると、以下の5パターンとなります。

  • A:特殊建築物(建築基準法上の定義)かつ確認申請が必要ない建物
  • B:特殊建築物であり、確認申請が必要な建物
  • C:特殊建築物であり、確認申請が必要で、特定建築物でもある建物
  • D:特殊建築物であり、特定建築物
  • E:特定建築物であるが、特殊建築物ではない建物

図のように、「特殊建築物」のほうがより広範囲に及ぶ名称であり、状況によって臨機応変に用いられるのが「特定建築物」という名称となります。

Bの建物を立てる際は、事前に確認申請が必要であり、C、D、Eに関しては特定建築物のため、建物の高さや規模などの建築上の規制がより強いと言えるでしょう。

ちなみにEに関しては、「5階以上の建物であり、延べ面積が1000㎡を超えている建物は、
特定建築物である」と、建築基準法で定められています。

「特殊建築物」との明確な違いはあるのか?

かつては、「定期調査や報告の義務がある」という点が、特定建築物のわかりやすい特徴でした。

特定建築物とされている建物は、建築士(一級・二級)などの専門家により建物の安全面を調査し、自治体へ定期的に報告しなければならないという制度です。

しかし、2016年に建築基準法が改正され、定期報告の対象が底上げされたことで、現在では特殊建築物であっても、原則として定期報告は必要となっています。

つまり、現時点で明確な違いはありません。

強いて言えば、特殊建築物は建築前の確認申請すら必要ないケースもありますが、特定建築物は原則として確認申請は必須で、建築時の規制が強いことがあげられるでしょう。

工場を特殊建築物に用途変更する際に気をつけること

ここまでお伝えしたように、特殊建築物と定義されている建物の中には、事前に確認申請が必要なものが多くあります。

建築基準法を見る限り、工場自体は確認申請の必要はありませんが、今ある工場を何かしらの特殊建築物に用途変更する場合は、具体的にどういった手続きが必要なのでしょうか?詳しく解説していきます。

工場を特殊建築物に用途変更するために、確認申請は必要か?

変更するために、確認申請は必要か?

工場を特殊建築物に用途変更する場合は、建物としての役割や性質が変わってしまうため、原則として確認申請が必要となります。

2021年時点では、用途変更をする延べ床面積が200㎡を超えるなら、確認申請が必要であると建築基準法で定められています。

例えば、今ある工場を倉庫や飲食店、遊技場やスポーツ施設に用途変更するといった場合です。

実際に用途変更をするのなら、先に確認してほしいのが、工場自体が既存不適格建築物かどうかということです。

既存不適格建築物とは、「建設時は建築基準法を満たしていたが、後々の法改正により、現在では基準を満たしていない建物」のことをいいます。

そういった建物の用途を変更するのなら、まずは既存の法律の基準を満たせるように改築する必要があるのです。

改築の必要があれば、改築プランを作成し、その資料をもって各自治体の窓口に行きましょう。建設課や建設審査課で資料が受理されれば、現行の建築基準法を満たしているか調査をしてくれます。

申請が通過したらそれで終わりではありません。通過後も、改築工事中と工事完了時にそれぞれ検査を受け、問題がなければ「検査済証」を発行してもらえます。検査済証を受け取った段階で、用途変更は完了です。

ちなみに、工場の所在地によっては、既存不適格建築物か否かにかかわらず、目的とする特殊建築物に用途変更できないケースもあります。

「用途地域」といって、異なる用途の混在を防ぐために、「都市計画法」によって地域ごとに用途が制限されていることがあるからです。

たとえば、「第1種住居地域」と呼ばれる地域では、床面積が50㎡以下の危険性が少ない工場は建設可能ですが、その工場を改築して階数が3階以上の自動車倉庫に変更することはできません。

工場の構造上、倉庫へ用途変更するケースは少なくないですが、用途地域によっては希望する用途へ変更できないこともあるのでぜひ覚えておいてください。

確認申請を怠ると、ペナルティが科せられる可能性がある

もしも、独断で工場を特殊建築物に改築し、のちに確認申請をしていないことが発覚すれば、各自治体から改善命令が出されます。

命令に応じなければ、建築基準法99条に基づき「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」のペナルティを科せられるのです。

仮に運良く罰則を免れたとしても、万が一建物内で人的被害が発生すれば、訴訟を起こされる可能性は十分にあります。

また、工場を第三者に貸している状態で借主が勝手に改築をして用途を変更していた場合も、違反に伴う全責任は貸主であるオーナーが背負うことになります。もちろん罰則を受けるのもオーナーですので、十分に注意しましょう。

特殊建築物の建物は専門家に相談しよう  

まとめると、工場は建築基準法において、特殊建築物の1つとして定義されているものの、同法6条1項の別表1(建設時に確認申請が必要な建物一覧)には明記されていません。

つまり、「実質的には特殊建築物扱いではない」という解釈になります(自動車修理工場以外)。とはいえ、各自治体の条例次第では特殊建築物として扱われるケースもあるので、一概には言えません。

また、工場は一般住宅やアパート・マンションーと違い、建物の性質上、様々な用途に変更しやすいという特徴があります。

今所有している工場を、将来的に別の建物に用途変更するつもりであれば、少なくとも今回の記事に書いてある内容くらいは知っておく必要があるでしょう。

とくに、

・変更後の用途や建物の規模によっては、特殊建築物として確認申請が必要ということ、
・自治体への定期報告義務が発生しうるということ

この2点はぜひ押さえておいてください。

いずれにしても、特殊建築物を扱うのであれば、建築基準法をはじめとする関連法への理解は最低条件と言えますので、しっかり予備知識をつけておくことをオススメします。

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