「戸建賃貸とアパート・マンション賃貸ってどっちがいいの?」
「戸建賃貸に興味があるので、メリットやデメリットについて知りたい」
今回、こちらの記事ではこのような疑問に答えていきます。
いま所有している土地を活用して、戸建賃貸を始めようとしている方は、ぜひ参考にしてみてください。
戸建賃貸とは?
戸建賃貸とは、賃貸用の一戸建て住居を建設し、第三者に貸し出すことで賃料を得る土地活用の1つです。
元々は、土地活用の選択肢というよりも、戸建所有者が転勤を理由に一時的に貸し出したり、住み替え時に売却をせず、中古として貸し出したりするケースが一般的でした。
しかし、現在では空き地の有効な活用方法の1つとして、賃貸経営を前提に戸建を建てる人が増えていると言われています。
アパート・マンションと比べると初期費用を抑えやすく、長期的に住み続けてもらえる可能性が高いため、比較的ローリスクな活用方法と言えるでしょう。
戸建賃貸のメリット・デメリット
こちらでは、戸建賃貸のメリットとデメリットについて解説します。
戸建賃貸のメリット
まずはメリットについて、
- 利回りが良い
- 必ずしも好立地である必要がない
- 土地の形状に左右されにくい
- 居住期間が長い
- 家賃を高めに設定しやすい
- 節税効果を期待できる
の順番で解説します。
・利回りが良い
アパート・マンションの場合は、それぞれの部屋にトイレや台所、浴室を設置する必要があり、戸数が多いほど建設費用が増えます。
その点、戸建は1戸分の設備があれば十分なので、建設費用を抑えやすいと言えます。初期費用を抑えやすいため、立地や家賃次第では年利10%を超えるケースもあります。
・必ずしも好立地である必要がない
賃貸アパート・マンションの場合は、好立地であるほど入居者がつきやすいです。そのため、安定した賃貸経営を実現するためには、好立地であるほうが有利と言えます。
しかし、戸建の場合、立地条件はそこまで重要ではありません。なぜなら、戸建への入居を希望する人は、ファミリー層であることが多く、ファミリー層は立地以外のメリットに価値を感じやすいためです。
例えば、小さな子供の泣き声や走り回る音は、集合住宅では近隣住民とのトラブルにつながりかねませんが、戸建であればそのような心配はかなり軽減されます。あるいは、騒がしい街中や駅近の物件よりも、静かな住宅街で子育てをしたいというニーズもあるでしょう。
好立地であればあるほど、地価は高くなりますので、地価が安い郊外にある土地でも入居者がつきやすいのは、戸建賃貸の大きな利点と言えます。
・土地の形状に左右されにくい
極端に敷地面積が狭い狭小地や、敷地が三角形や台形の形をした変形地では、建築基準法上、アパート・マンションを建てられないことも少なくありません。
その点、戸建住宅であれば、狭小地や変形地でも建設できる可能性が高いです。「賃貸経営をしたいけど、集合住宅は建てられない」という方には、向いている活用方法と言えます。
・居住期間が長い
日本賃貸住宅管理協会が2020年におこなった調査によると、一般的なファミリー層の居住期間は、全体のうち6割が「4〜6年」だそうです(※1)。
次に長い「6年以上」の割合は、12.8%となっていて、全体的な傾向としてファミリー層の居住期間は長いと言えます。
アパート・マンションの場合は、間取りに限界があるので、子供が生まれた(あるいは増えた)タイミングで、引越しをせざるを得ないことがあります。
その点、戸建は部屋数も充実していて広いことが多いため、そういった理由で退去する可能性は低いと言えるでしょう。
・家賃を高めに設定しやすい
戸建住宅は、そもそも物件数が多くないので、売手市場になりやすい傾向があります。そのため、多少家賃を高めに設定したとしても、入居者がつく可能性が高いのです。
・節税効果を期待できる
小規模住宅用地の特例によれば、賃貸住宅がある土地は、更地と比べて固定資産税の評価額が6分の1になり、都市計画税の評価額は3分の1まで軽減されます(200㎡を超える部分に関しては、
固定資産税は3分の1、都市計画税は3分の2まで評価額が軽減されます)。
さらに、建設費用を減価償却によって経費計上し、他の所得と合算(損益通算)することで、所得税や住民税の節税対策をすることも可能です。
※1:「賃貸住宅市場景況感調査」(日本賃貸住宅管理協会)https://www.jpm.jp/marketdata/pdf/tankan24.pdf
戸建賃貸のデメリット
次にデメリットについて、
- 空室リスクが大きい
- 修繕費用が高額になりがち
- 戸数が制限される可能性がある
- 都心部には不向きである
の順番で解説します。
・空室リスクが大きい
戸建賃貸は、居住期間が長いというメリットがある反面、長期間空室になってしまうというリスクがあります。
年明けから春先にかけて、賃貸需要が高まるタイミングを逃すと、中々入居希望者が現れない可能性が高いです。戸数の多いアパート・マンションのように、空室リスクを分散できないので注意が必要です。
・修繕費用が高額になりがち
アパート・マンション(区分)の場合、退去時の原状回復費用や修繕費用はそこまで高くなりません。部屋数や広さに限りがありますし、居住期間も比較的短く、大規模な修繕が必要ないためです。
その点、戸建の場合は部屋数も広さも規模が大きく、部屋の使用期間は長期にわたります。
壁や床・天井に染み付いた汚れ、傷や摩耗など、アパート・マンション(区分)と比べると損耗が激しく、修繕費用やリフォーム費用が高額となる可能性が高いでしょう。
・戸数が制限される可能性がある
アパート・マンションの場合、階数を増やすことで戸数を増やせますが、戸建の場合、戸数を増やせるかどうかは、土地の広さや形状次第と言えます。
アパート・マンションのように、戸数を増やして賃料収入を増やすことは、容易ではありません。
・都心部には不向きである
アパート・マンションは、階数(戸数)を増やして収益性を高められますが、戸建にはそれができません。つまり、戸建で、より収益性の高い賃貸経営を目指すなら、土地代を少しでも安く抑えることが肝要です。
そのため、都心部のような地価の高い土地は、戸建賃貸に不向きと言えるでしょう。
戸建賃貸がオススメの理由
こちらでは、戸建賃貸がオススメできる理由について解説していきます。
相続税対策がしやすい
まず、戸建賃貸は相続税対策に有効な活用方法と言えます。
相続税の計算は、国税庁の定める「財産評価基本通達」に従っておこなわれます。各資産ごとに相続税評価額が決められ、その額に応じて相続税の支払い額が決まるのです。
この時、預貯金はそのまま所有している金額が相続税評価額となりますが、不動産の場合、相続時の時価を基準に評価額が決まるわけではありません。
国税庁の定める評価方式によって、評価額が計算されるのです。ポイントはこの評価方式によって計算された評価額が、時価よりも低く設定される点です。
不動産本来の価値(時価)と評価額との間に乖離が生まれるため、現金で相続するよりも不動産(土地や建物)で相続するほうが、資産の評価額が下がります。
これが、相続税の節税効果を期待できる理由です。
さらに、賃貸不動産が建っている場合は「貸家建付地」とみなされ、土地や建物の評価額がもう1段階下がることになります。所有者が土地や建物を自由に利用できない状況が考慮されるためです。
土地と建物、それぞれの評価額の計算方法は以下となります。
・土地(貸家建付地)の評価額の計算方法
自用地の評価額×(1ー借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
自用地の評価額…路線価方式または倍率方式によって算出されます。
詳しくは国税庁のHPを参照してください(※2)。
借地権割合…路線価図で確認できます。
借家権割合…全国一律で30%です。
賃貸割合…賃貸物件の稼働状況により異なります。満室の場合は100%です。
・建物の評価額の計算方法
固定資産税評価額×70%
固定資産税評価額…固定資産税の課税明細書で確認可能です。明細書がない場合は、該当する不動産の管轄をしている市役所の窓口で取得することができます。
※2:「路線価図・評価倍率表」(国税庁)https://www.rosenka.nta.go.jp/
立地に関係なく入居が期待できる
アパート・マンションの賃貸経営では、立地が命と言っても過言ではありません。街中や駅近物件など、交通の便が良いほど入居してもらいやすいためです。
その点、戸建賃貸では、アパート・マンションほど立地条件は重要ではありません。駐車場付きの戸建であれば、車やバイクを駐車できるので、公共交通機関から離れた立地でも差し支えがないからです。
また、小さな子供がいる家庭では、「静かな住宅街で子育てをしたい」というニーズもあります。子供が家の中を走り回ったり、うるさくしても、アパート・マンションのように近隣住民から苦情がくる可能性も低いです。
このように、戸建住宅に住みたい人々にとっては、立地以外に価値を感じる方もいるため、立地条件が悪くても入居を期待できるでしょう。
一戸建てに住みたい人が多い
国土交通省が令和2年におこなった「土地問題に関する国民意識調査」によると、「今後の望ましい住宅形態」として、
・「一戸建て」を選択した人の割合は、54.9%
・「マンション」を選択した人の割合は14.3%
・「戸建・マンションどちらでもよい」と回答した人は21.3%
です(※3)。
いまだに一戸建てが根強く支持されていることが見て取れます。
※3:「土地問題に関する国民の意識調査」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001408334.pdf
賃料の増減があまりない
戸建賃貸において、賃料の増減が少ない原因として、「需要に供給が追いついていない点」があげられます。
令和2年に国土交通省が調査した「建築着工統計調査報告」によると、全国の着工新設住宅戸数が815,340戸であるのに対し、貸家の一戸建ては130,753戸でした(※4)。
新設された住宅戸数のうち、一戸建て(貸家)の割合はわずか16%です。
国民の過半数が望ましい住宅形態として一戸建てを選択する中、新たに建築されている一戸建ては全体の2割にも満たないということです。
このように、供給よりも需要のほうが上回っていると、物件同士の競争が生まれにくく、家賃の増減も起きにくくなります。賃料の増減が少ないと、長期的な収支計画も立てやすくなるので、安定性を重視する方には、戸建賃貸はオススメと言えるでしょう。
※4 「建築着工統計調査」(政府統計の総合窓口)https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000032048027&fileKind=2
戸建賃貸の相場について解説!
続いて、戸建賃貸の賃料相場について解説します。賃料設定の際に参考にしてみてください。
地域によってさまざま
戸建賃貸の賃料相場は、地域によって異なるため、各地域の賃貸仲介サイトで確認することをオススメします。
なお、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県に関しては、国土交通省が調査をおこなっています。
平成15年〜24年の間、東京都の賃料相場は15万円〜20万円の間を上下しており、それに続く埼玉県、千葉県、神奈川県の賃料相場は、東京都より5〜7万円ほど低いです。
詳しくは「賃貸住宅市場の実態について」(国土交通省)を確認してみてください(※5)。
※5:「賃貸住宅市場の実態について」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/common/001011169.pdf
周辺のマンションより10〜20%ほど上乗せした料金設定をする
戸建賃貸の賃料を決める際のコツは、周辺にあるマンションの相場賃料より、10〜20%ほど上乗せした料金にするということです。
先述のように、戸建は需要が供給を上回っている傾向があり、アパート・マンションと比べて供給が不足しています。賃料を高めに設定しても、入居が決まる可能性が高いと言えます。
戸建はそもそもマンションほどの戸数を増やして収益性を高めるといったことができません。。しかし、戸建ての場合駐車場や庭のある家が多いので10〜20%ほど賃料を上乗せして、少しでも収益性を高めましょう。
戸建賃貸で収益を得るには難しい?収益を得る方法
最後に、戸建賃貸を収益を得るための具体的な施策について、
- 間取りにこだわる
- 建物の延べ床面積を大きくし過ぎない
- 事前に収支のイメージをしておく
- 定期的なメンテナンス
- 専門家に頼る
の順で解説します。
間取りにこだわる
アパート・マンションでも南向きの部屋が人気であるように、戸建に関してもリビングは南向きのほうが好まれる傾向にあります。
リビングは最も長い時間を過ごす場所ですから、真南もしくは南東や南西に配置することで、明るくて暖かい空間にすることを心がけましょう。
できれば、庭も南向きの場所にあると理想的です。リビングから庭を眺めることができますし、植物も育てやすくなります。
また、2階のバルコニーに関しても、洗濯物が乾きやすいように南側に造ることをオススメします。
このように、実際に生活しやすい造りになっているかどうかが、入居を決める際の重要なポイントとなるでしょう。
建物の延べ床面積を大きくし過ぎない
賃貸用の戸建住宅を建てる場合は、延べ床面積を大きくし過ぎないように注意しましょう。1階と2階を合わせて、80平米台になるくらいが適正な広さだと言われています。
一般的に、賃料はその物件の延床面積に比例するため、面積が大き過ぎると賃料が高くなり、入居が決まりにくくなるからです。
適正金額よりも賃料を下げれば、入居が決まる可能性は上がりますが、面積あたりの賃料単価が下がるので、投資効率が悪くなってしまいます。
予算によっては、もう少し狭くしたいというケースもあるかもしれませんが、戸建には階段があったり、上下階の両方にトイレがあったりするので、同じ平米数のマンションと比べると、体感的には狭く感じるものです。
そうなると、「広々とした戸建でゆったり暮らしたい」という、戸建ならではのニーズを満たせなくなる可能性があります。狭過ぎず、かと言って広過ぎない、80平米台の広さを基準にしてみてください。
事前に収益と支出のイメージをしておく
土地活用において、事前に収支計画を立てるのは不可欠と言えますが、こと戸建賃貸に関しては、アパート・マンションとの違いを理解しておくことが重要です。
まず、初期費用やランニングコストにかんしては、戸建のほうが圧倒的に負担が少ないと言えます。
戸数の多いマンションを建てる場合、初期費用が億単位になることはざらにあります。一方、戸建住宅は、土地代と建築費用を合わせた金額の平均が4,615万円です(※6)。
ランニングコストに関しても、戸建賃貸は居住期間が長い傾向があるので、アパート・マンションのように頻繁に原状回復や修繕をする必要がありません。
入居者を募集するために、頻繁に仲介会社に広告料を支払う必要もなく、アパート・マンションと比べ、ランニングコストの負担は小さいと言えます。
しかし、複数の部屋に賃料が分散されているマンションと比べて、空室のリスクは戸建のほうが大きいことを心得ておきましょう。
入居者がつかない間、家賃収入がゼロになるというだけでありません。居住期間が長いということは、その分老朽化や損耗も激しくなりがちなので、空室時に発生する修繕費用やリフォーム代の負担も大きくなります。
アパート・マンションのように毎月多額の賃料収入を得られるわけではないので、いざという時のために、余裕を持って資金を備蓄しておきましょう。
戸建賃貸とアパート・マンション賃貸の収支の違いを以下にまとめたので、参考にしてみてください。
戸建賃貸 | アパート・マンション賃貸 | |
初期費用 | 負担が小さい | 負担が大きい |
ランニングコスト | 負担が小さい | 負担が大きい |
空室になるリスク | 低い | 高い |
1戸の空室時のダメージ | 大きい | 小さい |
投資リターン | 大きくない | 大きい |
このように、戸建とアパート・マンションとでは収支のバランスやリスクの種類が異なるため、それらを十分に理解した上で、収支のシミュレーションをする必要があります。
※6:「令和元年度住宅市場動向調査」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001348002.pdf
賃貸なので、入居後も定期的にメンテナンスをおこなう
少しでも収益を増やすために、退去時のコストを抑える努力も重要です。
戸建はアパート・マンションと違い、建物内の清掃や庭の手入れなどもある程度は入居者がおこなってくれます。
戸建賃貸は一般的に居住期間が長いため、知らない間に損耗や破損が悪化してしまい、退去時の修繕やリフォームのコストが高くなる可能性があります。
退去時のコストを抑えるために、定期的に点検をし、必要に応じてメンテナンスをおこないましょう。コストを抑えるリスクヘッジにつながるだけでなく、入居者からの信頼にもつながるはずです。
専門家に頼る
戸建賃貸にかかわらず、土地活用には不動産、法律、各自治体の条例などの幅広い知識が求められます。
また、きちんと投資分を回収して利益を出すためのビジネスセンスも必要です。
- 本当にこの土地で戸建賃貸を始めて入居が決まるのか
- 建設会社はどこに依頼すればいいのか
- 入居者の募集はどこに頼めばいいの
- 賃料設定はいくらにするのか
- 空室時にはどのような施策をすればいいのか
など、経営者として向き合う課題は山のようにあります。そんな時は、その道の専門家に相談しましょう。
以下、相談先をリストアップしたので、参考にしてみてください。
相談内容 | 相談先 |
土地活用の必要性 | ファイナンシャルプランナー |
融資について | 金融機関の事業融資担当 |
建築について | 工務店、ハウスメーカー |
節税について | 不動産に強い税理士 |
土地活用全般 | 専門業者、コンサルタント |
近畿住宅流通は、創業以来30年以上、北は北海道から南は沖縄まで、全国各地の土地を活用してきた土地活用のプロフェッショナルです。
もし土地活用に関してお悩みや相談がありましたら、お気軽にこちらまでお問い合わせください。